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あたしの事情


「ガツガツガツ、ゴクゴクゴクバクバクバク、ゴキュゴキュ、ズズズズズ」


 うは~~。自分でも思う程の凄いあたしの食いっぷり。女子度ゼロ。

 なんせ丸一日以上、何にも食べてないし水すら飲んでいない。

 あたしと事情を知らないので、人間離れしたあたしの食べっぷりに驚く赤髪の男。


「その食いっぷりは……おまえ人間じゃなくてオウガの子供か?」


 オウガは強靭な肉体を持ち、凶暴で残忍な性格で人の肉を食べると言われるモンスター。これはあたしのファンタジー物からの知識だけど。

 目の前の男の表情を見ていると、この世界にはオウガは存在していて大食らいなモンスターらしい。


「バクバクバク、ゴキュゴキュ、ズズズズズ……ゴホゴホ」

 一気に流し込んだ食べ物と水に、むせ返すあたしを見て、赤髪の男が驚きを通り越して呆れはじめた。


「ちっちゃな身体で良く食べるな……やっぱりおまえオウガの子供?」

「違う! ズズズズズ」

 ちゃんと否定したい、あたしは普通の女の子。


 いつもなら内向的でこんな醜態は見せないと。

 でもお腹が空いているので食べ続ける。

 暗闇に広がるたき火の光の中で、しばらくあたしの食べる音だけが響いた。


「はぁあ~~落ち着いた」

 お腹が落ち着いたあたしが、人間らしい言葉を発した。

「ガッツリお腹が膨れて、人に戻って来た感じがするね」


 男の分まで食べきった肉。サラマンダーの、ものらしいが美味しかった。

「この世界に来てからあたし、行動も話し方も乱暴になっている気がする。気をつけねば誤解され……」

 しかし、目の前の男の目は、誤解を通り越しているようだ。


「まあ。どうでもいいか」

 南国へ旅行に行くと細かいことは気にしない、アバウトな考えになると聞いた事がある。

 異世界でもそんな感じで。


 だが赤い髪の男は、突然現れたあたしの凶暴な行動によそよそしい。

 それを感じてムカッとしたあたしが、珍しく気持ちをストレートに出す。


「あのね! あたしは普段はもっと女の子らしいの。クラスでも結構人気ある。と思う」

 男がやっと口を開いて、あたしに疑問を投げかける。

「おまえの言ってる事はさっぱりだ。ところでおまえはどこから来た? この森はおまえのような、世間知らずの女が来れる所じゃないぞ!」


 粗暴で大食そんなキャラになっているあたしは、そのイメージ通りに大きな声で話す。


「あたしだって来たくなかったわよ! こんなとこに! 紫の渦の中の男の子が悪いの!」

 ガバッと立ち上がったあたしに、目を白黒させながら男が言った。


「じゃあ、来なけりゃいいじゃんかよ!」

「あんたね! 人には色んな事情があるのよ! なんでこんな所に飛ばされたのかさっぱり分らないし、可愛い美少女をこんがり焼いて食おうなんて、あなたいったいどうゆうつもり?」


 男はまたそれかといったふうで首を振った。

「ちょっと待て。だから焼いて食おうは冗談だって何回言えば……それにおまえの言うことがいまいち分らん。もっとわかりやすく頼む」


 現代とあたしの事情を混ぜた込んだ言葉に、赤髪の大きな男は混乱していた。


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