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重騎士グレン


 深夜のグリモア城の一室。

 城上層の部屋の小さなランプの光が漏れている。

 部屋の窓の側に置かれた木の椅子と机で、アガレスが報告書に目を通していた。 

 あまり大きくないこの部屋は、かつてマスティマ軍の衛兵が寝泊まりしていた場所だった。

 アガレスはこの城に来ると、この質素な部屋で過ごしていた。


 椅子に座るアガレスは普段着で、ワインレッドの渋みの有る赤いシャツに黒いズボンの軽装。

 少し長めの金髪をかっちりとオールバックに流している。

 つねに背筋を伸ばし、まっすぐ前を向く姿が堅くも誠実な心を映しているようだ。

 ダークナイトの鎧を脱いだアガレスは、十分な柔らかさを持ち、人を受け入れる愛情の深さと、厳しさを併せ持つ、一人の大人の男に見えた。

 軽装でリラックスを見せるアガレスは、独り言を少し大きめで始めた。


「レべリオンのリーダーは大陸制覇より、己の封印を外すつもりらしい。ドライグには封印の遺跡ががあるからな……ところで」


 アガレスは見ていた書類から目を離し、さっきから部屋の中央で黙って立っている男をチラリを見た。男は重装な鎧を着ていた。


「そこに立っているのは勝手だが、鎧は脱いだらどうだ? 見ている俺の方が肩が凝りそうだ」

「いえ、慣れていますから」


 アガレスの言葉に短く答えた鎧の男。

「不満なのか? グレン。オレの裁定が?」

 アガレスが書類に目を通しながら聞いた。

「はい、アガレス閣下。その通りです」


 アガレスを真似て金髪をかっちりとオールバックにしていることから、三十代後半に見えるが、実際はまだ二十八歳、威風堂々とした風貌のグレンが答えた。

 グレンはアガレスの側近中の側近であり、アガレスの隊の副長、一番の信頼と、それに応える力と実績を持っており、重力級の装備から重騎士グレンと呼ばれていた。


「閣下に逆らった者どもは殺すべきです!」


「まったく……糞真面目な奴だなお前は。獣王アスタルトが少年の処罰を任せろと言っているのだ。それでは駄目なのか?」

 身体の中央で剣を床につき、直立不動に立つグレンは首だけを少し動かした。

「少年は看守にたてつき、アスタルトは公然にそれを助けた、閣下の威光に敵意を向けた者は子供だとしても、許すわけには参りません」

「アスタルトは少年を処刑し、責任をとって所長も辞任すると言っている」

「信じられません」

「少年の首実検でもしろと?」

「そうです」


 顔色を変えずに、グレンは、バアルの処刑後に首を持ち込み確認すると言った。


「ふぅぅ」


 書類を机に置いて肘をつき、グレンを見たアガレス。

「グレン、そこまで言うなら、お前の好きにしていい」

「はい、有難うございます!」

 グレンが剣を右側に移し、足を揃え敬礼した。

「ただし、気をつけろ」

 アガレスの言葉にグレンが首を振る。

「俺は手加減ができません」

 アガレスは肘をついた手の甲に顎を乗せ、違うという風に二、三度首を横にする。

「少年はどうでもいい。おまえの好きなようにしろ。俺が言いたいのは、おまえの本音のことだよ。アスタルトへのちょっかいには気をつけろ。命をかけることになる」


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