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メタルソリッドな俺


「なんでこんなところから行くんだよ」

 アガレスに会いに行くといった獣王に、俺はついてきたが、窓の外をつたいながら進む隠密行動に不平を言う。


「しっ! 静かにしろバアル。外からこっそり行かないと、知りたいことが聞けないだろ!」

 え、獣王の言っている意味が分からずに俺は聞いた。

「出発の挨拶じゃないのかよ。それに友達だろう? 直接疑問はアスタルトが聞けばいいじゃん」


 しっ! 人差し指を立てたアスタルト。

「あいつは馬鹿がつくほどの真面目なんだ。もし俺が面向かって聞けば、軍の規律どおりに答えるだろう。人の上に立つものは部下の前では本音はけっしてもらさない」


「そんなもんなの?」俺は大人の世界は知らないので半信半疑。

「でもさアスタルト。こっそり窓際にメタルギアしていたら、気が付かれずに何にも聞けないじゃん」


 クク、いつもの豪快な笑いはなし、隠密中なので小さく笑った獣王。

「俺一人なら気づかれないかもしれんが、バアルを連れて行けば確実にアガレスは気配を感じるだろ」

「俺はエサかい! で俺たちが聞いているのに気が付いたら、アガレスは喋らないだろ?」

 獣王は首を縦に振った。


「そうだな。軍の機密や自分の本心はアガレスは決して人には教えまい」

「だったら……」言いかけた俺に話を続けるアスタルト。

「そうだな俺だったら……たまには独り言を言いたくなる。外に何者かが潜んでいても気づかなかったらしょうがないだろうな」


 うーーん、考え込む俺。

「つまり、公では話せない事を独り言で言うわけ? 俺たちがいるのに?」

 さっぱりわからないが、アスタルトは頷いた。

「そうだ。大人の事情ってやつだ」


 大人は面倒くさいな、口に出る。

「ほんと、大人になんかなりたくないな。それってひねくれてない?」

 俺の言葉にアスタルトは頷き肯定の意思を見せる。

「ほんとにそうだ。まして人の上に立つとは、特に面倒くさいな」


 獣人族の王の言葉には、重みが……ぜんぜん無い!?

 俺と獣王は他には気取られないよう、アガレスの執務室のベランダにたどり着き気配を消した。


 部屋の窓の側に置かれた木の倚子と机で、アガレスが報告書に目を通している。

 あまり大きくないこの部屋は、かつてマスティマ軍の衛兵が寝泊まりしていた場所。


 アガレスは城を訪れると、部下に勧められてもこの質素な部屋で過ごしていた。

 倚子に座るアガレスは普段着で、ワインレッドの渋みの有る赤いシャツに黒いズボンの軽装。


 だが少し離れて立つ男は重装な鎧を着こみ、直立不動の姿勢をつた貫いていた。

 元ゴースの中心のグリモア城の執政室で、アガレスが大陸の地図を見ていた。


「閣下! レべリオンの本体は南の竜の国へ進軍を開始しました!」

 重装備の男の報告に少し驚いた表情のアガレス。

 レべリオンのナンバー2のアガレスも聞き及ばなかった今回の進軍。

 大陸南ドライグドラゴニュート(竜人)の国でドラゴンの末裔が住む強国である。


「そうかドライグへ出陣したか……」

 アガレスはレべリオンのリーダーの意図を汲もうと考えを走らせる。



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