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囚われの勇者


 俺がゴースにロケットで飛ばされて半年が経っていた。


「さっさっと働かんか!」

  獰猛な怒鳴り声が牢獄に響く。半獣の体を持つ看守達が投獄されている人々にムチを打つ。


 ゴース公国がレべリオン(反乱軍)の軍団に敗れた後、城は牢獄となりレべリオンの獣人により統括され、反抗するものには容赦ない責め苦が待っていた。


 動けなくなった老人に楽しそうにムチを打ち続ける獣人の看守。


「クソが! 人間ふぜいが! 化け物と蔑んできた俺たちに支配される気持ちはどうだ!? アハハ」


 獣人……神話の世界、六頭竜と天の神との戦いの最中に、猛獣と人間を合成する高度な魔法技術で造り出された屈強な兵士だと、神話では語られている。


 獣人のベースは人間であるが、ライオン、ヒョウ、オオカミなど合成の元になった猛獣の特徴を有している。人々が恐れる獣人の闘争心は猛獣が持っていたものだが、人から受けた差別と、いつも戦いに身を置いてきた事も大いに影響している。


 マスティマ女王が大陸を平定した後、力と知恵と公平さによって、獣人の暴力的な性質は抑えられてきたが、レべリオンの時代になり、本来の獰猛な資質を取り戻た。

 古に戦う為だけに造られた冷酷で強力な兵士としての本来の性質を発揮し、任務を果たしていた。


「やめろ!」

 大柄な看守の前に俺は立った……勇者なんだから。

「大丈夫? 爺ちゃん」

 俺はムチで打ち据えられた老人を後ろに逃がし、看守を睨み付ける。

 周りの囚人が心配する、俺が獰猛な獣人に太刀打ちできるとは思えない。


「このガキが! 勝手な事を……おれに指図する気か?」

 俺を威嚇する看守は、人間の身体に虎の頭が付いており、腕や胸など露出した部分からは固い獣毛が見えている。


 ビッシシシ、二メートルを越える巨体の看守が、素早い動作で俺に向けてムチを放つ。頬を切り、血がこぼれ落ちるが、俺の瞳はじっと看守を見たまま動かない。


「このくそガキ……本当にムカツイテキタ! 腕でもねじるか!」

 看守が俺に近づくと、戦いのエナジィ(闘気)が揺らぎ始めた。

「なにガキが!? エナジィだと!」

 看守は獣人の本能から危険を察知し、後ろへ避ける。

「このガキ……腕一本では済まないようだな、クク」

 看守が再び戦闘態勢をとった時、後ろから声が飛ぶ。


「やめろ!」

 振り返ると、看守が子供に見えるくらいに大きな獣人が立っていた。制止の声にかまわず、ムチを構える看守に、巨大なライオンの顔をした獣人が言った。


「やめろと言っている! おれの言葉が分からないのか?」


 ライオンの顔をした獣人の今度の言葉には、強い威嚇が入っていた。

 看守は仕方なくムチを降ろす。


「しかし、獣王……このガキは……」

 バシィィーン、獣王と呼ばれたライオンが大きな右手を払い、看守は数メートル弾き飛ばされ床に転がった。


「その呼び方はやめろ……ここでは所長と呼べ」

 注意を施した獣王アスタルトが威風堂々に立っていた。


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