大宴会始まる
エール公国で一番大きな来賓用大ホールは、豪華な飾り付けがされていた。
悠久のエールの王宮。ホールの中央に立つ、赤髪の男の強靱な筋力は、今は。なみなみと注がれたグラスを持つ為に使われていた。
「おーーみんな! 長い戦いをよくぞ勝ち抜いたな。今日は俺の奢りで目一杯食って、飲んでくれよ! じゃあ乾杯だ!」
ホールに入りきれない程の人々、兵士も民も神官も巫女も獣人も、全員が声を合わせた。
「乾杯~~! やった! ダゴン最高!」
ダゴンの乾杯の音頭で大宴会が始まった。
「えーっと、ちなみに支払いは……エール王にお願いすると言うことで!」
隣に座るエール王は、調子のいいダゴンの言葉にも、にこやかに答える。
「構わんよ、ダゴン。これくらいでは足りないくらいの働きだった。久しく感じられなかった戦いへの意思を見せてくれた……とってもワクワクしたぞ!」
エール王のお許しを得たダゴンは大いに喜び、賛辞と宴会へかける意気込みを語った。
「さすが、悠久のエールの国王だな。では遠慮せずにいかせてもらおう! グビリ、く~~エールの酒って旨いぜ!……って、獣王。それ俺が食いたかった、火食鳥のもも肉のロースト!」
なみなみと注がれたグラスの酒を一気に飲み干したダゴンが、ドッシリと一番大きな料理が並ぶテーブルの前に座り込んだアスタルトに文句を言った。
「うん? こういうのは早い者勝ちだと古より決まっているだろ、シルバーナイトよ」
直系三メートルはある大きなテーブルには、肉料理専門のコックがついて、巨大牛モーモのステーキ、巨大魚ピラニャの塩焼き、そしてメインの貴重で珍味な、火食鳥のモモのローストがこんがりと焼かれていた。
一メートルはある鳥のモモ肉を、むんずと両手で掴み、食べている獣王アスタルトにダゴンが文句を言った。
「なんで、そこでシルバーナイトの名前を出すかな~~。まあいいや、俺はこっちのデカイ、サラマンダーの肉を……って、アナト。なんでおまえ俺の隣でそれを食ってるわけ?」
サラマンダーの胸肉を甘辛くソテーした南蛮焼きを、パクついているアナトが顔を上げた。
「もごもご、いいじゃない。こんなに……もごもご……あるんだから!」
「あのさ、一応、女の子だろおまえ? イルと一緒にオードブルとか、甘い物のテーブルへ行けばいいだろ?」
アナトが口一杯に焼きたての、ブルーベリーのソースがかけられた、大羊のソテーを詰め込みながら、ダゴンをジロリと見た。「
「あたしは肉料理が好きなの。あ! 甘いのも好きだよ。後でイルに合流するよ……それに、忘れたの?」
「そういえばおまえ、大食らいだったな。うん? 忘れたって何をだ?」
ダゴンの答えにガッカリしたアナトが呟く。
「勝ってもどって来いって……そしたら、好きな物を食おうって……俺と一緒に……って、言った……」
アナトの言葉に腕組みをしたダゴン。
「そんな事言ったっけ? それに後ろの方、ハッキリ言わないと分からないぞ!」
「……!? ハッキリ言えるわけないでしょ!? ダゴンのばか!」
アナトの言葉にニンマリするダゴンは、隣のアナトをこづいたは、
「もう、なにすんのよ! もごもご、いっぱいあるんだから、いいでしょ」
「あのさ、アナト。食ってから文句を言えよ。それになんでいつも、俺のご馳走を奪うわけ?」
大羊のブルーベリーソースがけを飲み込んだアナト。
「ごっくん。ふぅう。美味しい~~! ここのコックの味付けもいいよ。そういえばゴースに初めて来た時も、ダゴンのご飯を食べちゃったっけ?」
給仕から酒を注がれながらダゴンが答えた。
「ああ。俺も大概に食う方だけど、おまえはその華奢な身体で、どこに入っているんだ?」
次の獲物に手を伸ばしながらアナトが答える。
「うん? 女子高生はエネルギーが弾けてるからね。特に、わたしは勇者だし」
「ぜんぜん関連が無いように聞こえるが……まあ、最後の戦いではもう少しで、闇の王の鎧をぶっ壊すまでいったからな。まあ、いいところは大魔王に持っていかれた……が、さすがにエナジィを使ったから、腹が減っても仕方ないか……って、もう半分食った? アナト、俺と話してるとき以外は、ずっと食ってるだろう!?」
「もごもご。失礼な。もごもご、ダゴンと話している時にも、ちゃん食べているわよ。もごもご」