無敵の機神
蒸発を始めたラシャプの騎乗する古代の機神に「勝った!」アナトが飛びあがって喜び、イルは安堵の色を見せ、疲れた表情のアイネと静かに剣を納める、バアルとグレン。
何度も飛び上がりながら、アナトが全員に言った。
「やったね! そしてありがとう……みんな!」
父親の仇をとった、アナトを中心にパーティが集まった。
ラグナロク、最終決戦を制した、喜びと安堵の表情を浮かべていた。
「これでお父さんも」アナトの想い。
「これで母さん、大魔王は家に入れてくれるかな」バアルの想い。
「しばらくのんびり愚痴りたいなあ」イルの想い。
「父さんまだまだ未熟だけど頑張ったよ」グレンの想い。
「すべての力を使い果たしました」震える手を見ながらのアイネの想い。
完全に破壊されて、動かない筈のブルーノヴァの右手が光った。
疲労で反応できずに、撃ち抜かれるアイネ。
倒れるアイネの身体をアナトが受け止める。
「アイネ! 大丈夫?」
アナトが名を呼ぶと、アイネは抱かれながら顔を見た。
「どうしましたアナト……つものあなたらしくないです」
アナトの怒りの表情に、髪を撫で微かに笑うアイネ。
「あなたでも。そんな声を出す時があるのですか?」
抱いているアナトの手がアイネの血で染まる。
「ラシャプ……絶対に許さない!」
バアルにアイネを任せ、倒れた機神を目指して歩き出すアナト。
「もう絶対にラシャプ。あたしはあなたを許さない! 殺してやる!」
アナトは縮地で飛び,カチカチと音を出している、壊れた機神ブルーノヴァの前に立つ。
「いい加減にしなさい! ふざけるなラシャプ! もう決着はついたのに悪あがきは止めろ! あたしの大事な仲間を傷つけるな!」
アナトの怒りに闇の王が答えた。
「おやおや、父親の時と同じで、まったく成長してないな。怒りで現状を把握できていないようだね。君たちは確かに凄いよ。異世界転生の力は特にね。だから僕は身に受けたんだ「君たちの最高の技と魔法」をあえてね」
ラシャプの声と共に立ち上がった機神ブルーノヴァは、自己修復を終えていた。
「全システム再起動完了。エナジィパワー現在95%。更に上昇中」
OSラバーズがラシャプに、戦闘が可能となったことを通知すると、ラシャプは笑みを浮かべた。
「さて、みなさん。このブルーノヴァが機神と呼ばれる理由を話そう。この神の鎧は敵の攻撃から生き延びる度に、相手のスキルを覚えるラーニングシステムを搭載しているのさ。どうも制作者が古いゲームからヒントを得たようだが、その名の通り学習機能だね」
ラシャプが話し始めると同時に、ブルーノヴァの機体の全部位に魔法陣が廻り始めた。
「惜しいねえ。いい所まで来ていた。あともう5%、エナジィを削れば僕は消滅した。さて、全員のリーサルスキルはラーニングさせてもらったよ。おまえたちの要であったアイネはもう動けない。ジャンプで逃げる事は出来ない……クク、ハハ」
ラシャプが嬉しそうに自分の勝ちをに誇った。
「言っておくけど、ラーニングした攻撃はブルーノヴァには効かないよ。長所は勿論、弱点も解析出来るからね。じゃあ、この世界の最高の攻撃を君達自身で味わってくれたまえ……ラバーズ全パワーを放出だ!」
ラシャプがラバーズへ全力での攻撃を指示した。
「了解! スキル発動! シャイン、フリーズバイト、ソニックブレード、ヘキサグラムフォース……ラーニングしたスキルを全て発動します。エナジィパワーを最大出力へ移行します」
ラシャプが機神に攻撃指示を出す。
「よし。いけ」
直後にブルーノヴァの装甲が回転し、現れた主砲にエネルギーが集まる。
『超破壊兵器 シャイニングブラスト発動』
ブルーノヴァが真っ白に輝いた。
空中から光の弾丸が降り注ぐ。
床に命中した光の弾丸は爆発を繰り返していく。
バアルたちのパーティの必殺の魔法と、剣技を同時の発動が全員を吹き飛ばした。
「全弾命中。敵パーティの戦闘力低下。生命力低下中」
ラバーズからの報告を受け、ラシャプは冷静に命令する。
「ウェポン収納。防御シールドを回復せよ」
「了解。エネルギーを機体修復に回しながら、防御シールドを降ろします」
ラシャプがブルーノヴァの中で呟く。
「焦る事は無いさ。友情パワーとか食うのはごめんだよ。あとは一人一人、止めを刺すだけだ。どんな声で叫ぶのかな……楽しみだ」
倒れている五人に近づいたラシャプは、まずアナトの右手を踏み砕く。
「うぐ、きゃああああ!」
「おや? これは、申し訳ない。両手はセットですよね……姫君」
今度はアナトの左手を踏み砕く。
「うう……」
両手を砕かれた激痛で、意識が遠のくアナト。
「おや? もう意識が無いのですか。これは残念」
ニヤリと笑うラシャプ。
「じゃあ綺麗な顔を潰しましょうか。熟れたトマトのようにね……」
ブルーノヴァが、アナトの顔に足を乗せた。