意思ある神の鎧
勇者のパーティーの力により破壊された神の鎧。
パチパチ…… 破壊されたヘルダイバαから火花が飛ぶ。
巨大な機械の胸の装甲が開いて、闇の王ラシャプが姿を現した。
「まいったな、こんなにも簡単に壊されるとは……探しだして起動するまで、結構大変だったんだけど」
「な、な、なによ。あんた、何を言ってるの? もう、古の機兵は倒したんだからね! 降参しなさいよね!」
ドキドキ震えながらも、おしゃべりで口の悪いイルが、闇の王ラシャプに降伏を促した。イルの言葉には応えずに、独り言のように話し始めた闇の王。
「システムは複雑化すると、設計した者にも理解できない結果を生む。本来この世界は、光と闇から新しい色を生む為に設計、ログラムされていた」
「六龍王がこの世界を変化させ、転生勇者と召喚勇者が龍を押さえ、新しい世界を維持するストーリー。しかし異世界の勇者と家族のあまりに大きな力によって、計画は狂った」
「天の神の計画に狂いが生じた時に、プログラムの初期化が発生する。神の力で封じられた僕が、解放されることにより、天の神子のカギが開けられ初期化は始まった……まずはノーチラス、そしてこの機械の巨人」
「ええ、なんであんたが闇の王が、解放されると世界の初期化が始まる?」
ラシャプの言葉に驚くイル。闇の王の話は続いた。
「かつて光の艦隊の戦艦ノーチラスに乗り、この世界を滅ぼしたか天の神子。この地に降りた時に、その巨大な力を封印した。修復できないほど世界が乱れた時に、世界をリセットする為に目覚める、最終兵器として保存された」
アナトが一歩ずつラシャプに近づく。
「御託はいいから、そこから降りてきなよ。あたしはあなたに、まだまだ十分なお礼をしていない」
父親を害された、蒼きエナジィをまとうアナトが迫る中、ラシャプの声が巨大な空間に響き渡る。
「フフ、麗しの勇者はまたカオスドラゴンでも、持ち出して暴走する気かな?」
縮地を使い一気にラシャプの前に出たアナトが剣を抜いた。
「言う事はそれだけ? 今度こそ殺してあげる!」
大剣をラシャプに振り下ろすアナトの前に、一人の男の影が浮かんだ。
「だれ? ……お父さん!?」
アナトの振り下ろした剣が止まる。
ラシャプの声が短く命じた。
『撃ち抜け ゲイ・ボルグ』
「うっ」機神からの閃光に胸を撃ち抜かれたアナト、ラシャプに抱かれるように崩れ落ちる。
「クク、また古い手に引っ掛かるものだ。ちょっと父上の画像を表示しただけなのに、動揺するなんて可愛いね。憎い僕に抱かれながら死ぬ気持ちはどうなの? 父親を殺した僕に殺される気持はどうなの? ハハ」
笑い続けるラシャプに剣を抜いたバアルが迫る。
「ラシャプ! 貴様!」
バアルが走り込んでラシャプへ剣を払った。
闇の王は後ろに飛び、アナトをアガペに放り投げた、急いで落下地点に飛び、アナトを胸に抱きかかえたバアル。
「大丈夫か、アナト?」
アガペの問いに目を開けるアナト。
「うん、ごめんバアル。また乗せられちゃったみたい」
ゆっくり後ずさるラシャプが笑みを見せる。
「勇者は返してあげる、すぐに回復すればいい」
暗黒騎士グレンが闇の王ラシャプを追う。
「ラシャプ、もう逃げられないぞ!」
「逃げる? クク、……勇者諸君。この世界で身の程を越える力を持つ者ども。正真正銘のこの世界の上位者である月の神子と遊ぼうよ!」
蒼い光がラシャプの身体を包み、その光は徐々に形を造っていく。その姿はヘルダイバαに似ていたが、ヘルダイバαとは比べものにならない巨大なエナジィを露出していた。
身長16メートルの蒼き機体が、ラシャプと融合して、真の天の神子も遺産が発現した。
「これこそが本物。名前はブルーノヴァ。かつて世界を滅ぼした意思のある鎧。さっきまで僕が騎乗していた玩具のヘルダイバーαとは、まったくの別物と理解して戦ってくれよ。そうじゃないと、君達はあっさり死ぬ事になるから」
「……じゃあ続けよう。二回戦を……ここからは死にゲーだよ。少しでも戦いを間違えば、そくゲームオーバーさ。さて感じてもらおうかボスへの絶望を」