アイネの覚悟
向こうの壁が見えないくらい巨大な、地下のホールにラシャプの声が響く。
「さて君達はどんどんやってくれよ。遠慮はいらない。必殺技でも魔法でも、使ってくれて結構だ。こちらは無限コンティニュー。何度でも再生するからさ」
完璧に決まった全員の連携攻撃でも倒せなかった、ラシャプの騎乗するヘルダイバαを前に躊躇するペーティの五人。
「クク。どうしたの来ないの? 確かに各自の必殺技で倒せないかったからね。クク、さてどうする?」
ラシャプは楽しそうに笑ったが、その言葉には動じず、アイネは左手を空中にかざした。
「こんな玩具じゃないでしょ? ラシャプ、あなたが見つけたものは!」
広大なホールに力の循環が始まり、巨大な魔法陣が描かれていく。四方から稲妻が走り、魔法陣に吸い込まれていく。
アイネは掲げた左手を闇の王ラシャプへ向けて、力を放った。
『空と大地の雷神 シャイニングスパーク!』
数千もの稲妻が龍となって降り注ぎ、強烈な雷の衝撃がヘルダイバαを襲う。
「さすがアイネ――まだ完全に回復していない今、最速で最強の魔法を持ってきたか!」
ラシャプの感嘆と同時に、ヘルダイバαのシールドが雷に砕かれていく。
「あなたが雄弁なのは、古代の巨人の回復を待っていたから……でも逃がしません」
アイネの詠唱は続いていた。
「なに? 続けて魔法を詠唱だと!?」
驚くラシャプへ向って、鋭い視線を送るアイネの額には、五つの角を持つ魔法陣が宿った。立体的に表示された魔法陣は、青く縁取られ滲むように光を強めた。
アイネが左手に宿った六頭の竜に命じる。
『聖なる六竜が放て ヘキサグラムフォース』
闇の王ラシャプへ六つの光の筋が飛び、厚い装甲を貫かれたヘルダイバα。
「ばかな。それは背龍王の技。アイネお前は……天才」
竜巻のようなエナジィがアイネの周りを巡り、髪を結わえた糸が切れ、アイネの長く銀髪が空中に広がる。轟音ともに、再び崩れ落ちるヘルダイバα。
「世界の平和を守る為には、例え古代の神の兵器であっても、引く気はまったくありません」
アイネが空中に銀色の光を放つ。細く長い髪を払った。