先制攻撃
転生勇者バアルと召喚勇者アナトが、古代の神の巨人に相対する。
ついにラグナロクが始まった。かつてのマスティマ女王の居城グリモアで。
剣を構えるバアルは呟く。
「俺はこの為に転生して、戦ってきたのか」
神の機神ヘルダイバαから、距離を取った五人は、即座に魔法による攻撃を開始した。
「全員先行で最大奥義をぶつける! 俺に続け!」
叫んだバアルの背中に翠の竜のエナジィがゆらりと映った。
翠の鎧がその姿を変えていく。鋭い鱗の表皮が割れ始め、新たに結合を繰り返し、翠の大竜に変化したバアルは爆風を起こす超大型剣ストームブリンガーを振り込む。
『爆風昇龍剣』
翠の風を纏いながら爆風がへルダイバαへ撃ち出される。
続いてアナトが昴を構えた。
『ソニックブーム』
アナトは百キロを越える昴を、超高速で横に払った。
続いてグレンの父親譲りの秘剣が発せされた。
居合のスキルでエナジィを一点に集中し、高速で必殺技を撃ちだすグレン。
『アルカナブレード』
バアルとアナト、そしてグレンの必殺技に地面に亀裂が入り、衝撃波が回転しながら突き進む。
続く必殺の攻撃を回避しようとするヘルダイバα。
しかし、グレンのソウルイータの特殊能力である呪縛で動けない。
三人の衝撃波が直撃し、動きを止めたヘルダイバαに向ってアイネが縮地で、一気にヘルダイバαの頭上へ飛ぶ。
双剣にエナジィを込めて機械の巨人に叩き付ける。アイネの背には剣の軌道、八つの羽が見えた。
『八翼天使の刃』
八回のアイネの高速な剣劇、衝撃がヘルダイバαの頭部を破壊し、亀裂が巨人の機体内部へと入り込む。
内部から炎上して動きを止めたヘルダイバα。
アイネはが地上にスタッと降た時に、ズズン、古代の巨人は崩れ落ちた。
「やっぱり、わたしって世界最強の勇者様?」
アナト簡単に倒れた巨人に喜んでいた。
「わたしって……他のメンバーの立場は?」
グレンが反意を唱えた。
「うん? 何言ってるの! おやじはやられ役に決まっているでしょう?」
アナトが答えにグレンが懸命に反論する。
「だからさぁ、好きで老け顔でいるわけじゃ……」
アガレスが言いかけた、その時。
「まて! そう簡単にはいきそうもない」
バアルが左手を挙げて、巨人に近づくなと指示を出す。
ヘルダイバαが立ち上がり光り始めた。
装甲が修復され、防御シールドが回復していく。
立ち上がったヘルダイバαに騎乗する、ラシャプにアナトが語りかけた。
「随分と古い玩具を見つけたね。闇の王ラシャプ」
「久しぶりだね、アナト……召喚勇者。どうやらエナジィを取り戻したようだ……父親に感謝だね」
アナトは唇を強くかみ、目の前の父親の仇を見ている。
ヘルダイバαに騎乗した闇の王ラシャプが、アナトの心の底を見透かして言葉にする。
「おや? 少し焦っているのかな。外も気になっている? 確かに黒き軍団は十万、白き軍団は二千。せいぜいもって二時間くらいかな? たとえ獣王アスタルトと、シルバーナイトのダゴンがいてもね。この国の軍隊が壊滅するまで、君たちには僕の相手をしてもらうよ、クク」