表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/158

レベリオンの終結


 力を失い続ける六龍王に戦いの終演を感じて、思わず全身の力を抜いたバアルに、インフェルノソードをつかんて叫ぶ、姉のアーシラトの声が届いた。


『聖なる六竜が放て ヘキサグラムフォース』

 六つの光の筋がバアルとアナトへと飛んだ。

「ちぃい!」

 短く叫んで、ダゴンとアスタルトが、バアルとアナトの元へ飛ぶ。

 だが間に合わない。無防備な二人に向かう六頭の光の筋。

 アイネが前に手を広げて立ち、右足と胸を貫かれた。


「アイネ大丈夫か! 姉さんもう終わったんだ……やめろアーシラト!」

 二人を庇って倒れるアイネの身体を、バアルが受け止める。


「バアルとアナト。二人の勇者め! おまらだけは許さない! ここで死ね!」

 巨大なインフェルノソードを両手で抱えて、二発目を打ち出す構えに入るアーシラトの魔力は六龍王さえ超えていた。


 その時アーシラトの後ろから声が聞こえた。

「もういい。アーシラト……もういいのだ」

 六龍王の声だった。その声を聞い、崩れ落ちるアーシラト。

「よくない! あなたを倒した者なのよ!? わたしは、この世界で一人ぼっちになるの……そんなの許せるはずなんかない。だってわたしは、あなたの事が……忘れられない」


 消滅の剣により再生出来ない傷を受け、姿が消えつつある六龍王は、泣き続けるアーシラトを自分の胸に抱き寄せた。


「俺はこの世界に反乱を起こして、新しい秩序を造り出す事を考えた。それが自分の本心と思いたかった。でも俺はそんなに強い者では無かったようだ……な」

 六龍王にしがみつくアーシラトの髪を撫でる、大きな傷ついた手。


「アーシラト……俺のせいで世界はお前を魔女だと言うだろう。だが今度会う時は幸せにするから……許してくれよな。短い間だったが、おまえと居られて……楽しかったぞ」

 髪を撫でる六龍王に、震えながらうなずいたアーシラト。


「アイネよ。アーシラトの事……頼んでもいいか?」

 黙ってうなずくアイネに、安心した六龍王。

「それと……バアルとアナト。強くなったな。転生と召喚、どちらも見事な勇者だ」


 さらさらとさらさらと……六龍王の巨躯が風に流れる。

「イヤ、イヤよ、モート! わたしを置いていくの? お願い一人にしないで!」

 アーシラトの叫び声が風に流れる。


「アーシラト……そういじめるな……また必ず逢える。おまえが嫌でも俺は会いに行く……。二人の勇者よラグナロクを勝てよ……アーシラトをよろしく……たの……む」


 六龍王は大きな拳にして宙へ捧げ、これから起こる戦いの勝利を祈った。

 次に吹いた強い風で、六龍王はその姿を散らした。


「モート? モート!?」

 六龍王を目の前で再び失ったアーシラトは、その場で意識を失ったその時、アーシラトの身体は輝き、真っ黒な闇がアーシラトから離れた。


「やっと死んでくれたか。じゃあ、君たちが僕の遊び相手になるわけだね。まだ時間があるから、レベルあげ頑張ってくれよ。瞬殺じゃつまらないからな」

 ラシャプの影は戦い意思を残して消えた。


「逝ったか……モート」

 アガレスが風の流れに戦いの終わりを感じた時、こちらに向ってくる者の姿を見つけた。アイネから呼ばれたグレンだった。

「ふっ、さすがアイネだな。俺の心などお見通しと見えるな」

「父さん大丈夫か?」

 グレンが父親のアガレスの身を心配し、懸命に駈けてくる。


「大丈夫だ。少し疲れただけ。それより手を貸せ」

 息子グレンに支えられながら、アガレスは身体を起こした。


 それを見たアスタルトが静かにアガレスの元に近づき、グレンの肩に大きく重い手を置いて話し始めた。

「アガレスの息子グレンよ。その剣と強きエナジィを授かれ。そして今からはおまえがダークナイトとなるのだ」

 アガレスは安堵して旧友に語りかけた。

「俺はここでリタイアだ……獣王よ。楽しかったな」

「ああ、そうだな」


 アスタルトがそっけなく答えた。長い間戦い続けた。

 ある時は仲間として、またある時は敵として。

 そんな二人には簡単な挨拶で十分だった。

 日が落ち始め、夕日に照らされた赤い草原に風が吹く。


「本当に楽しかった……」

 夕暮れに照らされながら、アガレスは草原の風に吹かれ、笑顔を浮かべて目を閉じた。


 ここに『赤きレベリオン』は終結した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ