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雌雄激突


 十倍の闇龍軍団に相対する白銀軍団にアイネの号令が響く。


 アイネは白銀軍団の指揮の伝達に、エンジェルナイトである、フッラの特殊能力ブロードバンドを使用していた。この力により正確に指揮ができる。事実、白銀軍は完璧な動きを見せた。


 空中のフッラがアイネの言葉を拾い、全員へ思念波として、直接脳へ送信する為にどこにいても、騒音の中でも、ハッキリと仲間へ言葉が届く。


 白銀軍団が猛然と前進を開始する。

 闇龍軍団に迫った時、アイネが叫んだ。


「全軍突撃!」

 

 うぉおおおおお。


 エール騎士団が盾を構え闇龍軍団の左翼へ走り出し、闇龍軍団の一陣目と激しくぶつかり合う。

 五分と五分の力の押し合いが続くが、数で圧倒的な闇龍軍団は、ゴースでも守備力の高さに定評があるナイト中心のエール騎士団を、徐々に圧倒し始める。


 ジリジリとエール騎士団は前線を下げる。


 前線が下がりスペースが左右に空いたのを見て、闇龍軍団の二陣目は左翼と右翼に兵を分けて、エール騎士団の側面へ廻り始めた。


「くっ、このままでは正面と側面からの挟み撃ちに合うぞ」


 エール騎士団長のサージが呟く。

 しかし、事態はサージの思惑よりも悪くなる。

 敵の後方の三陣が一気に前進したことで、エール騎士団の前線は崩壊の危機に陥った。


「くっそ、もう少しだけ持ってくれ」

 サージが焦りを漏らした時、アイネからフッラを通して、獣人軍への号令が飛ぶ。


「獣人軍、前進! 敵の三陣目の後ろをつけ! 突っ込め!!」


 獣人軍はエール軍の守る前線から、斜めに敵を回避しつつ、闇龍軍団の三陣目の後方へ進む。

 敵陣アーシラトを守る四陣目に向かって走り込む。


 十万を越える敵の軍勢の中を、一気に雄叫びをあげて進む獣人軍。

 その勢いに、前進していた闇龍軍団の一陣、二陣、三陣は気をとられ進軍の速度が鈍る。

 アイネから、次の命令が伝えられた。


「マスティマ騎士団、円錐隊形のまま中央を一点突破! アーシラトへ向え!!」

 アイネの声がフッラを通して白銀軍団へ、ブロードバンドで伝えられた。


 敵に当たる個所を狭め一本の槍のように突き進むマスティマ騎士団。

 闇龍軍団はエール騎士団を囲むように展開していた為、中央の戦力が手薄になっていた。


 アイネの声が再び白銀軍団に響く。


「後方、竜騎士、エンジェルナイト。離陸を開始アーシラトを上空から狙え!!」

 飛竜に騎乗する竜騎士と、自ら翼を抱くエンジェルナイトが一斉に飛び立つ。


 一気に上空へ達した竜騎士と、エンジェルナイトが槍を手にダイブを始めた。

 太陽の光を浴び輝く槍の輝く筋が、幾千と空から地上に落ち流星のように流れる。


 その頃、闇龍軍団の本陣では意見の相違が表面化していた。

「アーシラト様、どうかご命令を! 我が軍はアイネの作戦により、混乱の極みに陥っています」


 闇龍軍団の上級指揮官が懇願したが、この状況になってもアーシラトは、まったく指揮を執ろうとしていなかった。自軍の指揮官から戦況状況の報告を受けたアーシラトが冷徹に答える。


「第一陣、二陣、三陣、ここ本陣の防衛に戻せ」


 アーシラトの敵に背を向け、退却して本陣を守れという指示に驚く指揮官。

「正気ですか? そんな事をしたら敵に後ろを取られ、我が軍は壊滅的な被害を受けますが?」

「そう、それでいい。大量のエナジィが得られる」

 口元を緩ませるアーシラトに、指揮官は困惑していた。


「聞こえなかったのか?」

「はい?」

「私の命は偉大なる竜の王と闇の王の言葉。いますぐ全軍をここの防御にもどせ!」

「は、はい」


 指揮官は膝をつき、頭を下げ戻っていった。

 簡易的な柵で被われた本陣には、アーシラトと、中央に置かれた赤き王の遺体だけが残った。


「アイネめ直接ここを狙ってくるとは。私の意図が分かっているようだな。だが、悪あがきもここまでだ」


 アーシラトは呟き、右手で、石棺の上に横たわる赤龍王の髪を梳かしながら、問いかける。

「この世界は赤き色を選んだ。そうよね赤龍王……モート」

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