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翠の大龍の勇者


 二人の竜を守る、エナジィシールドが同時に砕け散った。

 自分を守るシールドが消えても、そのまま撃ちあいを続ける赤龍王と勇者バアル。

「おまえも六頭竜のエナジィを持つとはな、転生勇者」


 シールドを失い、拳でも大きなダメージをお互いの身体に与えていく。

「同じだと? 忘れたか王。赤い火は青い氷を溶かし、緑の風は赤い火を消す」

 バアルの言葉に応える赤龍王。

「三つの色彩の力関係か? 確かに赤は緑には歩が悪い。だがそれがどうしたというんだ? おまえごときの力で、俺をどうすることができよう!」


「いいや、ここで――赤龍王! 俺は――おまえを越える!」

 バアルの右手に巨大な力の循環が始まり、同時に転写で赤龍王の後ろに飛ぶ。バアルの風切りの剣は、爆風を起こす超大型剣ストームブリンガーへ変化する。


「くらいやがれ!」

『爆風翠龍剣』 

 バアルの大剣が翠のエナジィを纏い、爆風を起こして赤龍王へ撃ち出される。

 両手で受けた赤龍王だったが、両手を削りながら緑の暴風が体を包み込む。

 衝撃を受け切れずに後方へと、翠の風に押されて吹き飛ぶ赤龍王。

 そこへまたバアルが転写し、一気に間合いを詰める。


 バアルのエナジィが最大に高められ翠の風は複数に分かれて、バアルは四つの分身となり、最大奥義が打ち出される。

『真竜ソニックブレード』

 四体の翠の竜から同時に衝撃波が撃ち出され、ストームブリンガーの力を借りてバアルの通常モードの時の、百倍、風、翠の属性の威力が発現していた。


 その巨大な翠の属性のパワーは赤龍王の身体を粉砕していく。

 空中に吹き飛ばされてから、地上に落ちた赤龍王。

 バアルは静かに赤龍王の前に降りると言った。


「終わりだ赤龍王」

 澄みきった空は青く静かだった。砕けた両手を空に向かって広げながら赤龍王は言った。

「これが新しき力……力への意思。クク、素晴らしい」


 翠の大竜バアルは剣を払いながら言った。

「さらばだ六頭龍の王」


 バアルの翠の風が赤龍王を取り囲んだ。強い風に身動きが取れない赤龍王。

 バアルの大剣ストームブリンガーが赤龍王の胸を大きく切り裂いた。


「風の大剣を持つ翠の大竜。ふふ、自由に風を操るものだ」

 最後の言葉を残して、風吹く大地に倒れ込む赤龍王。


「……やったんだ、俺はやった、俺は赤龍王を倒した!」

 転生勇者の大竜バアルが天へと剣を掲げ、勝利を示した。

 その姿を遠目で見ていたイルが呟く。


「とうとう倒したのね、赤き大竜を……。さあ帰りましょう、みんなの治療の為に。わたしの生まれた街、悠久の都エールに」


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