ぶつかる二人の龍
大きな十字が描かれた盾で、赤龍王の一撃を受け止めた者。
「おいおい赤龍王。それはやり過ぎだろ?」
アナトをアーシラトに任せたダゴンが、大盾で赤龍王の剣を受け止めた。
「ダゴンか。またも懐かしい顔だな。アーシラトよ。新しい力の意思を持った者などいないではないか? こんな出来損ないは戦には使えないな」
「出来損ない!?」
イルがアガレスへ向かう途中で、向きを変えて赤龍王に歩み寄った。
「出来損ないなんていない! わたし達は戦う為の道具じゃない。あなたはまだ神人と戦おうと思っているの? あなたが徹底抗戦を主張したから、竜の一族が滅んだのを忘れたわけじゃないでしょ!……えっ? わたしは何を言ってるの!?」
自分の口から出た言葉に思わず口を押さえたイル。
驚きを表し赤龍王がイルに近づいてくる。
「これは……エールの巫女、お前も遥かな記憶を持っているのか。ふむ、素質はあるか……しかし最終決戦は近い。この程度の力では間に合いそうもない。新しき力。やはり……」
赤き王がニヤリと笑った。
「やはり、この世界にお前達はいらないな!」
強い殺意を見せる赤き王のエナジィに、驚き後ろにさがるイルを追うように赤龍が迫る。
「中途半端な力は邪魔なだけだ。頼るのは己の力だけでよい」
両手を広げて力の循環を開始した、赤龍の鎧の形が変化していく。
闘気が鱗のように全身を包み、背中に翼を携えた赤龍へ、竜の闘気が身体から溢れる、第三形態ドラゴンウォーリアになった赤龍王が絶対の自信を見せた。
「さあ、これでお前達には勝ち目はない。クク」
赤龍王はバトルモードに移行し、桁外れの紅いエナジィを全身から溢れさせていた。
「過剰な自信は身を亡ぼすぜ。赤龍王」
そこには翠の竜の力を発現させた、転生勇者バアルが立っていた。
バアルの背に巨大な竜のエナジィがゆらりと映った。
緑の鎧が、その姿を変えていく。
鋭い鱗の破片のように、表皮が割れ始め、新たに結合を繰り返す。
二メートルもの大きさになったは背に翼を携えた。
赤龍王と同じ第三形態の、バトルモードに変身したバアルが、真っ直ぐに赤き王を見た。
「さあ、始めるぞ、赤龍王」
バアルの姿が一瞬にして消える。赤龍王の前に転写するアガペ。
「転写を可能としたか。俺の力――六頭龍の領域まで達するとは!」
翠の大竜に大きく目を開いた赤龍王に、挑発するバアル。
「御託は、いいから来いよ。赤龍王!!」
どちらかとなく、打ち出された拳、どんどん速度と威力が増加していく。
バアルと赤龍王、二人の拳が光速で撃ち出される。
あまりに速すぎて残像を残す攻撃、お互い相手のシールドを撃ち破る為に巨拳を打ち出していた。