身を焼く憎しみ
「お父さん!」
父であった剣聖アークのエナジィが話し始めた。
「アナト……すまんな。カッコ悪いとこ見せちゃったな」
ばつが悪そうに微笑む父親に、泣き始めるアナト。娘をやさしく抱く剣聖。
アナトは胸元からMonoChromeに輝くペンダントを取り出した。
「これ……お父さんがお母さんに置いていったペンダント」
ペンダントを見て剣聖が懐かしそうに言った。
「それは大切なものだ。アナトが持っていてくれ。いつかおまえを救ってくれる」
少し離れて見ているダゴンに、剣聖は気がついた。
「久しぶりだな、ダゴン。ほう、上には獣王とアガレス、それにモートも居るのか。昔を思い出すな」
「アーク……子供の剣で正気を取り戻しのか?」
ダゴンの問いに剣聖は笑った。
「フフ、ダゴン。おまえはまたケンカか!? 傷だらけだな。いつもおまえは誰かの為に傷を負うな。たいがいにしないと……グフ」
「ばかが……俺なんかよりあんたの方が傷ついているだろ……家族のためにさ」
ダゴンの答えに、今度は照れくさそうに笑った剣聖。
身体は大地に風が立つ度に少しずつ拡散していく。
風に乗ってサラサラと流れ始めたアークのエナジィ。
「いかないでお父さん! あたしを残して死なないで!」
アナトの言葉に、剣聖が自分の娘を強く、強く抱きしめて最後の言葉を発した。
「10年前にオレは消滅していたんだ。またおまえに逢えるとは……もしかして神様は居るのかも……な」
最後に最高の笑みをアナトに見せると、剣聖アークはサラサラ、サラサラと風に流れて消えた。
「いいもんだね親子の愛。僕には関係ないものだけどね。さて、勇者には楽しんでもらえたかな?」
その場の全員が燃えるような怒りと、悲しみを感じた。
憎しみを隠さないアナトのエナジィ。
「絶対に……許さない」
アナトの身体から炎のように、蒼いエナジィが吹きだす。
「アナト! やめろ!」
急いでアナトに近づき、制止するダゴンの手をほどいて走り出すアナト。
巨大なエナジィで宙に浮いている闇の王は、苦笑いをアナトに送った。
「クク、八つ当たりは良くないな、勇者」