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サラチア王国物語集

消えたティアラ another

作者: 瑞條浩幹

やあやあ、久しぶり。

え?俺のこと覚えてない?まあいいや。名前がないんだ、いつかは忘れるだろう。

今回は、クロス目線。時々ものすんごい思考が展開されるかもしれないから気を付けてな。


それじゃ、行ってらっしゃい。


さて、あの作戦に取り掛かろうじゃないか。

「ダーネス?そろそろいける?」

ダンナイト国の使者が帰って行った後、私は自分の部屋に戻った。公式の場の時に着るドレスから着替えるのと…とある作戦を実行するためだ。


その作戦とは、名付けてルーチェの誕生日にティアラでびっくりさせよう大作戦だ。ネーミングセンスの欠片もないが、別に人に言うわけでもないので気にしていない。ダーネスに言うと微妙な顔をされたが。


作戦内容は、ルーチェのティアラに細工をして爆発しているように見せて驚かせよう、だ。本当に爆発するわけではない、安心しておくれ。どのようにするのかは企業秘密だ。


そのためには、まずルーチェのティアラを回収しなければいけない。そのため、ダーネスに取ってきてもらおう、ということだ。幸いダンナイト国の使者が来たため、ティアラが鍵付きの箱にしまってある確率は少々ながら低くなる。鍵付きの箱にしまってあったとしてもダーネスのピッキングの技術はかなり高くなっている。問題はないだろう。


問題といえば…ルーチェを暫くの間部屋の外に出しておかないといけない。まあざっと1時間あればできるとは思うが。

そこでお茶会に誘うことにした。怪しまれないように、久々に屋上でしようと全員を誘って。これで私が時間を稼げばなんとか行けるはずだ。


ダーネスは飾りつけ作成をしている。わっかを繋げてひも状にするやつ。私はそういうちまちました作業が苦手なのでありがたい。

「…あれ?分かった。時間稼ぎ頼んだよ…。」

ダーネスはちらりとこちらを向いた後、また作業に戻る。うん、可愛いな。この姿で拘束して軽めの拷問を実行したらどうなるんだろうか。たとえば水攻めとか…多分ダーネス飲み干してしまうな。それはそれで面白い。今度やってみようかね。

そんな私を知ってか知らぬか少し離れる。いや、別にやる気はさらさらないぞ。


 〇


「ただいま、ダーネス。どう?」

お茶会から帰ってきた私は、ベットで寝ていたダーネスに聞いた。今のダーネスは鷲姿だ。肝心のティアラは…私の机の上にあった。どうやら成功したようだ。


ほっとしたのも束の間、ノックの音が聞こえてきた。マズイ。

「なあクロス~?」

入ってきたのはウィンディだった。機転を効かせたダーネスが慌ててティアラを隅に移動した。が、その時不吉な音がした。

「え、何!?」

「…あれや、ネズミがおったから今ダーネスに捕まえてもらってんねん。」

中々に苦しい言い訳だが、果たして…。

「あ、そうなん。分かった、捕まえ次第食堂来てな!みんなにも言っとくわ。」

ウィンディはそう言って去っていく。よかった、何とかごまかせたようだ。

しかし…さて、どうしようか。ルーチェのティアラは高級品だ。自分で直せるものではない。とすると…。

ダーネスを見ると、呆然とした様子で立っていた。いつの間にか人の姿になっている。

寄っていくと、ダーネスの手には壊れたティアラがあった。それも綺麗に真っ二つに。

「…どうしよ。」

「んー…修理に出すしかないよな~。」

どうしようか。おそらくこのティアラを直すには街の修理屋に行かないといけない。でも、私だとバレやすいし、襲われる確率だってある。

「そうだ!」

「…?」

ダーネスの頭上にクエスチョンマークが浮かんでいる気がする。

「変装すればいいんや。ついでに夜に行こう。そしたらこっちの勝ちや。」

勝ちというのは、夜になると影が増える。そうすると、操作さえ上手くいけば拘束することも攻撃することも防御することも同時にできる…といことである。


 〇


想定外だったが、何とか行けるだろう。変身薬も割とすんなり取れた。もっとも、変身薬があった倉庫はソラが管理しているので、恐らく翌日にはばれるだろう。でも、サプライズ自体は明後日なので問題はない。それまでの間に欺きとおせばいい。

ただ2つもとると色々とめんどくさいので1つにしておいた。

半分ずつ飲んでも見た目は変えられる。問題はない。

さ、見た目も変わったし出発しますか。ダーネスが行きたそうにしていたけど、なだめておいた。鷲を連れている女の子はなかなか見ないしね。



裏口からこっそりと出る。外に出るのは簡単だ。

少し歩くと、修理屋が見えた。周りを軽く見まわした後、中に入る。夜とはいえ、人が全くいないわけではない。

カランカランと軽快な音。奥には優しそうなおじさんがいる。

「ごめんください。」

「お、いらっしゃい。こんな遅い時間にどうしたんだい?」

「えっと…。」

持っていたカバンからティアラを出す。ティアラを見たおじさんは驚いた顔をしていた。

「これをできるだけ早く直してほしいんです。」

「これを…?中々立派なやつだな。しかも魔力量が半端じゃない。」

おじさんは興味深そうにティアラを眺める。そういやこのおじさんの名前は看板に書いてあるグリーバでいいのだろうか。

「いつぐらいに完成しそうですか、グリーバさん。」

「そうだなぁ…。魔力量が多いとはいえ綺麗に割れているからね。一日で行けるだろう。」

「分かりました。明日の朝に取りに来ます。」

軽く会釈をして店を去っていく。そういえばグリーバさんの右腕に火傷の跡がある。何があったのだろうか。


 〇


「ただいま、ダーネス。」

帰りも襲われることなく部屋についた。さて、遅めの風呂に行きますか。

ダーネスは私を見るなりこちらに飛んできてホバリングし始めた。先に入っていてもいいといったのだが、どうやら待っていたようだ。


私がシャワーを浴びている間、ダーネスは風呂にぷかぷか浮かんでいた。どうやって浮かんでいるのかは不明だが、目の癒しとなるのでいいだろう。

可愛いな~。

「…あっつ!」

見とれていたらお湯加減を間違えてしまった。危うく火傷をするところだった。危ない危ない。


 △


朝。重たい体を起こし、カーテンを開ける。今日も快晴だ。

ダーネスは既に起き、飾りつけの続きをしていた。

「あと少して終わる…。次どうしたらいい?」

私が起きたのを確認したダーネスはほぼ完成している飾りを見せてきた。完璧だ。

「せやなぁ…んじゃ、花でも作るか。」

ダーネスは頷くとティッシュペーパーをとって花を作り始めた。本当に器用だ。

「あ、私また取りに行ってくるね。」

変身薬の残りを飲んで、さあ出発だ。


 〇


「あ、お嬢ちゃん。ティアラは直ったよ。」

グリーバさんが私を見るなり奥のほうへ向かっていった。

すぐに戻ってきた彼の手には金色のティアラがあった。

「そういえば、ティアラ、どうするんだい?」

去り際にグリーバさんが聞いてきた。まあ気になるだろう。

「友達の誕生日に渡すものなんですけど…鷲に壊されてしまって。」

最後のは少し迷ったが言っておくことにした。みんながここに来た時に言ってもらうために。


 〇


帰ってきてすぐにルーチェから連絡が来た。

私の部屋に来ないか、と。

行くと即答した後、軽く唸った。

ティアラがなくなったのが分かったのだろうか。それとも、なんだろうか。

人を解剖したくなったとでも?ついにルーチェにも赤い何かが混じったのか。

それはそれで面白い。

「違うとは思うけど。」

ダーネスにツッコミを入れられる。どうやら声に出ていたらしい。


ヒントは大量においてきた。

さて、この状態でどれだけみんなを騙せるか、腕試しと行こうじゃないか。

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