マイ湯呑みフキン 外伝
私は、AI搭載の大型バイクである。
私の主人は、10年と7ヵ月、27日前に亡くなった。
以後、私は、古びた車庫の中で、少しも動いていない…。
… …!主人の気配をセンサーでキャッチした!
まさか?!
とある田舎町の一角にある、家屋の側から、何かが壁を破って、走り出していく。
無人のバイクが、道を通るのは、珍しくない時代だ。
この時代、人工知能を宿す、乗り物が行きは人を乗せ、
その主人が、目的地に着いたのなら、主人から、
「もう、自宅に戻ってくれ。」と言われたら、そうするのは至って普通なことなのだ。
さて、
久しぶりに走り出したバイクは、センサーに反応した者を、そう長くない道のりで発見したが、明らかに自分の主人では、なかった。
バイクは、それとなく、その者を観察していた。
自宅と思われる場所に、ダルそうに入っていく、その者を見ていた。
ふいに、その者は、バイクに気づく。そして、
「おっ、大分前の型のヤツじゃん!」と、急に目を輝かせてバイクに近づいてくる。
その時だ。
AI搭載のはずの、そのバイクは、思考回路が初めてショートして、道端にバタン!!と倒れ、近づいていこうとした者は、それを目の当たりにし、ただただ動揺していたものの、いつしか、その華奢な体で必死に、倒れたバイクを起こそうと炎天下の中で必死にモガクノだった……。
(終)