男と女
子どもは「小さな科学者だ」と言われます。
一ヶ月ほど前からSくんと食事が一緒になると話題になっていることがあります。今日も「ねえねぇ、ごまちゃん。アレわかった?男と女の…」と始まりました。
話の最初のきっかけがなんだったのか、もうハッキリとは覚えていないのですが、ずっと気にかかっている謎。「男と女って何が違うんだろう?」という大きくて深いテーマ。
今日はKくんも一緒に食べていたので「ね、Kくんはどう思う?」とたずねてみると「アレじゃないの?おちんちんとおまた」と一番わかりやすく的確な答え。「なるほどねぇ。そこは確かに違うねぇ」とひとまず肯定しました。Sくんはしばらく「ん〜」と考えて「……おちんちんないのに、どうやってオシッコするんだろ?」と新たな謎を掘り起こしています。
この話題、もう何度も繰り返していて、Sくんは時々他の保育者にも聞きに行っています。中でもN保育士のコメントには驚いたようですぐ報告しに来ました。「ね、ね!Nちゃんがさ!生まれる前はこんな小っこいときには、みんな女なんだって!」なんと生物学的発生過程での性分化の話。この話を受けて「女だったのに男になった」という解釈からヒトの性は変わり得る(?)という新仮説がSくんの中に生まれました。
Sくん自身はと言えば、実はずっと髪の長さが気にかかっています。「髪の長いのが女、髪の短いのが男」という、外見からみる(記号的な)性別の捉え方。これはこれで、実はとても大切なモノの見方です。子ども達は自分の経験した知識をもとに、ものごとを推測したり判断したりします。Sくんは、これまでの人生経験上、男女を見分ける一番のポイントは髪型だ、と学習してきたのですね。
このSくん理論にN保育士仮説がスーパー合体します。そして生まれた新理論。「髪が長くなると女になる。短くなると男になる」例えば、ごまがこのまま髪を切らずに伸ばしていくと女になる!というのです。笑ってはいけません。少なくともSくんの経験では、科学的・論理的にこの考えは間違っていないのです。
N保育士の言うことも間違いではない。今日はサラッと流しましたがKくんの、外性器による判別も間違っていない。Sくんの外見的記号からみる性判別だって、実は大人も普通に行っていること。どれかが正しくてどれかが間違っているというものではありません。
なので、あえてSくんの話すことを否定はせずに「えー、ごまちゃん、このまま髪伸ばして確かめてみようかな」なんて話しました。謎は深まるばかりですが、ひとつのテーマについて深く掘り下げて考えていくこと、他者の考えを聞き自分の経験と照らし合わせて解釈すること、その解釈をどう確かめるか考えること……そんな大切な経験を積み重ねていくことで、世の中を理解していくことが成長のひとつの側面なのです。今後、Sくんがどんな答えにたどりつくことになるか、とても楽しみです。
「小さな科学者」達は日々の生活の中で、興味や関心をもとに世界をよく見て理解しようとしています。




