第8話 ヒロイン(仮)と誘拐? 2
長くなりそうなので分けました。(後半)
鐘の音で朝だと気付く。
結局手持ち無沙汰になり、何かあれば気付けるように センサー のような魔法を部屋にかけ、異空間でポーション作りをしていた。
異空間からでて窓を開ける。 まだ太陽は上りかけであたりは薄暗い。朝特有の静けさの中で人々が次第に動き出すのを感じる。 雰囲気に少しだけ酔いしれる。 こういう雰囲気は好きだ。 なぜかホッとする。
真夜中、静寂が世界を支配している中で空を見上げるのとはまた違った良さがある。
あたりが明るくなってきた。 そろそろ食堂も開いている頃だろう。
特別料金の時間帯にいけばリタもいるはずだ。 気配は食堂に向かっている。
食堂内に入ると寝ぼけめのリタに挨拶された。 朝は弱いようだ。 一緒に食事をとる。
食事をとったら眠気はもうないようでしっかり者といった雰囲気の彼女に戻っていた。
出店はまだ空いているような時間ではなかったので、雑談をしながら時間をつぶす。
リタはもともとほかの街に冒険者の父親と二人で住んでいたが父親が流行り病で亡くなってしまい、少し前に父親からきいた話をもとにこの街へと辿り着いた。この宿の親父さんを助けたことがあり、宿代を安くしてもらえていると言っていた。
しっかりしているのは父親が死んでから一人で生きてきたからだろう。
会ったばかりの俺に特に気にもせずに話せるくらいには吹っ切れているようだ。
話しているうちに外は人々が活発に行きかうようになっていた。
「そろそろ行きましょうか。まずはこの通りなんですが…」
それから色々なところを案内してもらった。
古着屋、鍛冶屋、魔道具屋。
屋台がたくさん並んでいる広場、大きな商会の店や食事が安くて美味しい料理屋などなど。
そこまで広い街ではないと思っていたが、なかなか色々な場所があるようでとても興味深い。
お昼時。
リタがお腹が空いたと言ったのでなにか食べることにする。
午前中に話を聞いた場所の中に入ってみたいがちょっとお高めでいつもやめてしまうという店があった。
案内をしてくれたお礼としてお代は払うので入ってみようと提案してみた。
のだが、
「新人に優しくするのは当たり前だし、奢ってもらうなんてもってのほか」 だと断られてしまった。
それでも食い下がって交渉し、一つの妥協案を見つける。
屋台が並んでいる広場で数種類の食事を買う。 もちろん奢らせてもらった。
すぐには食べずにリタのお気に入りの場所というところについていく。
そこは時計塔だった。 時計塔はその中ほどまでは一般開放されているらしく、他にも数人の人影がみられる。 展望台のようになっているその場所からはたくさんの建物と人々の行き交いが見える。
時計塔からの眺めはとてもいいもので、リタも楽しげに食事をしている。 あまりお金は使っていないが満足してくれたようでよかった。
その後は残りの場所を案内してもらい、3時くらいには大体の案内が終わった。
リタは何か用事があるらしく解散することとなった。
まあ何か買いたいものでもあるのだろう。 食事以外なにも買わずに案内を優先してくれていたし。
俺も行きたいところがあったので特に反対もしなかった。
解散してから向かったのは奴隷商である。 案内はされなかったが道すがら発見しておいた。
この世界での奴隷は待遇があまりよくない。 冒険者には報酬の分配などで揉めるのが嫌で奴隷を買ってパーティーを組む人というのが少なくない。中には肉壁として扱う人もいるらしい。
そんな事情もあって奴隷を持つというのはあまりよく思われていない。
リタと一緒では行けない所だ。
この奴隷商は比較的規模が小さいほうなのだろう。 商店の中に入るとすぐに店主が出てきた。
「ここはお前みたいなのが来るところじゃねーよ、さあ! 帰れ帰れ!」
「奴隷の相場は知らんがこれじゃ買えないのか?」
なんかめんどくさいので金貨の入った小袋を見せつけながら言う。
するとコロッと態度が変わり丁寧に対応してくるようになった。
そんなんだから成功できないんだよ。
そう思ったが口には出さない。
とりあえず店にいる全員見せてもらったが特に目を引かれるような奴はいなかった。
おかしいな。ラノベだと高確率で運命的な出会いをしていたのに。
そううまくはいかないようであった。
店主に話を聞くと、この街にある奴隷商はここ以外はスラム街のような場所にあり、奴隷の多くが非合法な手段で奴隷にされた者たちなのだという。
ここの領主があまり積極的に取り締まりをしたりせず、放任しているため衛兵も動くに動けないでいるそうである。
この店主には犯罪歴がない。どうやらまっとうに仕事しているようだ。 店は小さいながらも奴隷たちがやせ細っていたりなどはしなかった。
最初の態度は八つ当たりだったのだろうと思う。
情報料として金貨を1枚おいていく。
店主が驚いているが「とっておけ」とだけ告げて店を出る。
後ろから「ありがとうございました!」と聞こえてきたが振り向かずに手をひらひらさせて答える。
外はもう夕方だったので今日はもう帰ることにした。
宿につくと同時に鐘の音が聞こえてくる。
食堂へ行くと知人Aがおり、話しかけられた。
「あれ? リタは? 一緒じゃないの?」
リタはまだ帰っていないようだ。
「途中で別れてお互い用事済ませることにしたんだ」
「そうなんだ。 ならもうすぐ帰ってくるかな。 いつもみたいに」
まだ人はさほどいないので料理を頼まずに席に座る。
リタは今どこにいるのだろうか? 少し気になったので感知魔法で探ってみる。
(――!)
リタの気配があった。
人通りが極端に少ない裏路地にいるようだ。
それと、気になる魔力反応が3つ近くにある。
ヘイトは稼いでいたつもりだったのにそっちを狙ってくるのか。
少し甘かったようだ。
まあでも、
「誘拐されるのもテンプレっちゃテンプレなのかな?」
誘拐されそうなお姫様を颯爽と助けるべく宿を飛び出した。
主人公がヒロインを惚れさせに行くようです。