第6話 冒険者ギルドとお約束?
再投稿。
期待に胸を膨らませつつ、冒険者ギルドの中へ入る。
夕方だからか仕事終わりの冒険者の姿が多くみられる。
受付で受付嬢と楽しそうに話をしている者、掲示板の前で仲間たちと真剣に話し合っている者、買取カウンターで値段に不満があるのか何やらもめている者。
そして、注目するべきは並べられたイスとテーブルにすわってこちらをにやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべて見ている三人の冒険者たちである。あだ名はガリガリ君、ごぼう、はげマッチョといったところだろう。
このギルドには酒場が設けられているらしく、仕事終わりに料理と酒を楽しめるようになっているようだ。
さて、件の冒険者たちであるが、案の定酔っぱらっているようで顔が若干赤くなっている。しかしすぐには絡んでこない。俺がギルドに依頼を出しに来た一般人だとでも思っているのだろうか。だとしたら登録時に喜んで絡んできてくれることだろう。
すぐに絡まれなかったことに若干の残念さと無法地帯というわけではないようだという安堵感を抱く。
しかし嘲りをはらんだ視線を向けてきている以上なにかしてきてくれそうである。
受付カウンターに向かいながら三人のステータスを覗いていく。その中の一人、はげマッチョに問題があった。
名前 ゴーグ 年齢 36
種族 人間 職業 Cランク冒険者
lv32
ステータス
生命力 250/250
魔力 40/40
腕力 120
精神力 30
耐久力 100
魔法抵抗 40
器用 50
体力 110
素早さ 70
魅力 40
運 70
〔スキル〕
普通スキル
大剣術 Lv4
気配感知 Lv3
生活魔法 Lv4
威圧 lv2
加護 なし
犯罪歴 なし (強姦 強盗 脅迫)
隠蔽系のスキルを持っていないのに犯罪歴を隠してるな。
魔道具を持っているようだ。それもかなり強力な。あれか。
名前 偽装のブレスレット 等級 超級
説明 ステータスの偽装を行うことができる。 普通スキル 〔鑑定〕 lv8 まで欺くことができる。
一般的に〔隠蔽〕と〔鑑定〕の相反するスキル同士を同じlvで使うと、精神力や魔法抵抗にもよるが多くの場合、〔隠蔽〕が勝つとされている。
つまりこの魔道具の効果は所持者に〔隠蔽〕lv8のスキルを与えるというものだ。
実に強力である。どこでこんなもん手に入れたんだよ。
ああ、運が異常に高いおかげでどこかで手に入れられたくちだろう。
最高が100であるはずの運のステータスが70もある。商人にでもなれば成功できただろうに。
まあ今は犯罪者よりも冒険者登録である。せっかくいろいろありながらも一日で到着したのに、目の前でお預けになってはたまらない。時間的には大丈夫そうである。
受付カウンターは複数あり、開いている受付にはそれぞれに受付嬢が座っている。
やはり顔やスタイルがいいと人気が出るようで、そういう人は冒険者に口説かれている。
テキトーに空いている受付を選んで手続きをしてもらう。
「ようこそ冒険者ギルドへ! ご依頼ですか? それとも登録でしょうか?」
仕事帰りの冒険者には見えなかったのだろうか。そんなに冒険者っぽくないのか?
「登録でお願いします」
「登録には手数料として銀貨一枚必要となりますが問題ありませんか?」
現金なら盗賊たちから手に入っている。金貨24枚に銀貨70枚、銅貨、鉄貨、銭貨がたくさん。
人数が多かっただけのことはあり、小さな屋敷なら買えてしまうだろう。
ちなみに貨幣の種類は、
銭貨 鉄貨 銅貨 銀貨 金貨 白金貨 黒金貨 の七種類あり、それぞれの価値は
銅貨から銀貨までは10枚で、銀貨から金貨からは100枚で一つ上の貨幣に交換できるようになっている。
「大丈夫です」
そう答えると受付嬢が一枚の紙とペンを取り出す。
「この紙に必要事項の記入をお願いします。文字が書けなければ代筆しますので言ってくださいね」
言い終わるか終わらないかというタイミングで一人の男の声が耳に届く。
「おいおい、ギルドはこんな弱そうなガキの登録まで認めてんのかよ! ここはガキの遊び場じゃねーんだぞ?」
そう、あのはげマッチョ犯罪者ことゴーグである。
周りにいた冒険者たちは「またあいつか」といった感じで遠巻きにみている。
ゴーグが俺と受付の間に割り込んでくる。
その声と案の定な展開に心のなかでほくそ笑む。
(やっぱりこいつがやってくれるのか! どう調理してやろうか)
ガリガリ君とごぼうはみているだけのようだ。あの二人には犯罪歴はなかった。ゴーグが犯罪者だと知らないで一緒にいるのだろうか? それとも知っていて歴が付かないギリギリのことをやっているのだろうか。
少し考えこんでしまったがとりあえずゴーグをつぶしてやろう。まだ冒険者同士の諍いについての注意事項などを聞いていないし、犯罪者とはいえ今はそう認識されていないゴーグを殺すのは問題になりそうだ。
ということで、やったのが俺とみんながわかるように、殺してしまわない程度にゴーグを痛めつけよう
と、思っていた。
「登録するしないはギルドと当人の意思次第です! あなたには関係ないはずですよ、ゴーグさん!」
そんな言葉を聞くまでは。その声を発したのは手続きをしてくれていた受付嬢であった。
「俺はギルドのことを思って言ってるんだぜ? 褐色娘」
そう呼ばれた彼女の魔力波形には揺らぎが感じられた。魔力は精神力にも直結しているため、感情による揺らぎを反映してしまうことがある。なにかあるのだろうか。
「いい加減にしてください! それ以上騒ぐならそれなりの措置を取らせてもらいますよ!」
おお、ガチギレしてらっしゃる。
オーグもそれなりの措置とやらが怖いのか、舌打ちしながらも渋々引き下がる様子だ。
いや、殴りかかるぐらいしてもらわないと! 俺の出番が!
思わぬ伏兵によってお約束を楽しめなくなってしまった。というか、犯罪者をスルーしてしまった。
一応絡んできたら懲らしめて衛兵に突き出してやるくらいはするつもりだったのに。
「面白いブレスレット持ってるね」
帰ろうとしていたオーグに、耳元で囁く。
軽く威圧してきたが何も感じなかったかのように無視しておいた。
これで当分の標的は俺になるだろう。次に絡んできたときにでもつぶそう。
とりあえず今は登録だな。
「あの、大丈夫でしたか? 気にしないでくださいね」
「はい、大丈夫ですよ! 助けてくれてありがとうございます」
「いえいえ、これくらい当然のことですから」
先ほどのガチギレモードは解除されたようで何よりだ。用紙への記入が終わり、提出する。
待っている間に受付嬢のことを考える。キャラ要素を言えと言われれば褐色茶髪キャラである。
褐色娘と呼ばれて怒っていたがなぜだろう。こちらの世界では褐色肌はよく思われていないのだろうか? やっぱり定番だとダークエルフ絡みだろうか。
名前 リタ 年齢 18
種族 人間 職業 冒険者ギルド受付嬢
耳がとがっているということもないし、種族も人間のようだ。
考えながら手続きを進める。犯罪歴確認玉や用紙の記載事項に虚偽がないかを魔道具の前で答えさせられた。
「こちらがギルドカードとなります。あとはギルドカードに血を垂らして頂ければ登録完了となります。登録手数料の銀貨一枚ですが、現金と依頼報酬からの天引き、どちらになされますか?」
「現金で」
歯で指に傷をつけ、カードに血を落とすと同時に銀貨一枚を払う。
傷がすぐに治ってしまうが見られないように気を逸らす。
カードには名前とランク、犯罪歴だけが記載されるようで、俺の場合は、
名前 ソータ ランク F
犯罪歴 なし
となっている。実にシンプルでわかりやすい。
それを確認するとリタがいった。
「登録手続きは完了しました! これであなたも冒険者の仲間入りです! おめでとうございます!」
自分のステータスの職業欄を確認すると確かに冒険者という文字があったのでそれに設定する。
名前 ソータ 年齢17
種族 人間(半神) 職業 Fランク冒険者
無事冒険者になれたようだった。
褐色茶髪、美乳。
年齢は 誕生日が早い くらいに思ってます。