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とある美人冒険者とドラゴンの話 1

連休中にあげたかったやつの前半です。

自慢ではないが私は美人だ。そして歳のわりに力もある。

私はいわゆる冒険者というもので、魔物を討伐したり、盗賊を倒したりしてお金を稼ぎ、生活している。


冒険者というと男が多く、女の、それも美人の私は色んな冒険者に口説かれ、パーティーの勧誘を受ける。そういう男共は決まって私の体目当てで、パーティーに入ったらスキンシップが過剰になったり、ひどい時にはすぐに襲ってくる馬鹿もいた。襲ってきた奴らはもれなく切り落としておいた…どこをとは言わないが。


そんなことがあってパーティーを転々としていた時に、私は今のパーティーに出会った。今のパーティーメンバー達は私以外は全員男だが、私に女としての興味を持っていない。簡単に言うとパーティーの男達はデキているのだ。男同士で。しかもそれを少しも自重することがなく、野営の時などは結構な頻度で男の野太い声が聞こえてくる。


少し複雑ではあるが、私に興味を示さないだけ付き合いやすくもあり、他のパーティーの勧誘や、愛人になれといってくる阿呆共をあしらいつつ、それなりに長くこのパーティーに所属していた。



〜〜



(それにしても遅いな)


昨日の夕方、このガイオンという街に着いて明日からさっそく依頼を受けようという話をしていたはずなのにパーティーメンバーたちはなかなか起きてこない。最近はこういうことが本当に多い。最初の頃は気を使ってくれていたが、今となっては自分たちの都合で休みにすることも増えた。今日も恐らくそうなんだろう。昨日の夜は壁越しに声が聞こえてくるほど盛っていたからな。私がその事で何度か怒ってもまったく変える気配がないのでもう諦めている。


(今日はもう1人で簡単な依頼でもこなそう)


待っていてももう依頼に行く気もないだろうし、私一人で依頼を受けることにした。生活費を稼がないといけないからな。


ギルドで簡単そうな採取依頼を受けて、少し受付嬢から話を聞き、目的のものが群生しているという洞窟へと向かった。



〜〜



目的地の洞窟へと着き、周りを探索してみる。


しばらく探索してみたが見つからない。


まあキノコだしな。


生で食べると人間なら一週間近く下痢になり、死ぬこともあるというキノコだ。熱を通してしまえば決しておいしくはないが食べられるようになるらしい。主に特定の毒物を作る際に用いられるという。


受付嬢は洞窟の中にたくさん生えていると言っていたのであるかと思ったがそう上手くはいかないようだ。洞窟の中で魔物と出会ったら障害物も少ないので隠れてやり過ごすということも出来ない。だから少し面倒ではあるが、ちゃんと洞窟に入って探すことにしよう。


(まさかドラゴンなんかがいるわけもないだろうしすぐに終わらせて帰ろう)



~~



我はファイヤードラゴン。


といっても他のドラゴンたちのように喧嘩は好きではないのだ。


なんで戦おうなんて思うのだ? 

人間や他の魔物もなんで勝てないと分かってて挑んでくるのだ?


正直疑問しかないのだ。

我は魔力が多い草さえあれば生きていける。

だから群れから離れ、目立った敵もいなさそうなこの地にやってきたのだ。


この洞窟はいい。寝床としてはそれなりなのだ。

それに我以外の魔物は総じて弱い。

我の姿を見れば飛んで逃げていく。

人間の街が近くにあるが、この洞窟にはなにもないと分かっているのか一人とも会っていないのだ。

おそらくこの洞窟にあるのはまずいキノコだけだからなのだ。

来てすぐくらいに食べたが次の日、お腹を壊した…。

ファイヤードラゴンである我のお腹を壊すなどとんでもないキノコなのだ……。

まあそんなキノコはあるが、戦わなくていいからここはお気に入りなのだ。


今日もまた、我は惰眠をむさぼる。



〜〜



(まさかドラゴンがいるとは……!!)


なんと、洞窟の中には巨大なドラゴンが横たわっていた。

これはワイバーンなどといった雑魚とは格が違う。色龍や属性龍の類いだろう。

なんでここにとかそんなことではなく、諦めの感情が浮かんできた。

眠っているのに、私もいつかはドラゴンを討伐してみせるなんて言っていたのが馬鹿らしくなってくる程の威圧感を放っている。

絶対に適わないと分かってしまう。

でも……


(眠っている今ならいけるか……?)


私とドラゴンの間にはキノコが群生している。

ぐっすりと寝ている今なら音を立てないようにすれば採取できるのではないか。


そう思ってしまった。


絶対に音を立てないように足音を消して慎重に近づいていく。


1歩、2歩。

ドラゴンが起きる様子はない。


3歩、4歩。

寝息をたてているドラゴン。


(これならいける!)




あと5歩、4歩。


(よし、いい感じだ!)


あと3歩、2歩。


(もう手を伸ばせば届きそうな距離まで来た!)


あと1歩。


(ーーッ!)



ドラゴンの目が開いていた。

爬虫類特有の縦に長い瞳孔が私の動きを完璧に捉えていた。


その瞬間私は死を覚悟した。

あの時すぐに引き返していれば…。

私ならいけると愚かなことを考えていた。

金が欲しいばかりに命を落とす選択を取ってしまったのだ。



グルルルル



私はこれからくるであろう衝撃に備え、目を瞑る。

しかし、一向に衝撃も痛みもやってこない。


思わずドラゴンをみると私に興味がなくなったと言わんばかりにまた寝息をたてていた。


(助かった…の…?)


よく分からないがドラゴンの気が変わらないうちに逃げた方がいいだろう。

私は目的のものを無造作に掴んで、来た道をもどっていった。



〜〜



眠っていると人間の気配があった。


(珍しいのだ。こんなところに。

まさか我がここにいることがばれたのだ…?)


人間はドラゴンを見ると怯えて逃げるか嬉々として向かってくるかの二通りの反応を見せる。

今回、人間が一人であることを考えると我がいると知らないでここにきたと考える方が無難だ。

とりあえず今出て行ってしまっては驚かれるので洞窟で隠れていることにするのだ。





(洞窟の周りをしばらくウロチョロしたと思ったら入ってきたのだ……。

なんなのだ……。ここには何もないのだ? 人間よ…)


人間はそのまま進んでくる。


(そうだ! とりあえず寝たふりをしてごまかすのだ!)


やがて人間の姿が見える。

我の姿を認識したとたん、顔を真っ青にして固まってしまった。


(やっぱり知らないで入ってきていたのだ。ほら、さっさとどこかへいくのだ)


この人間を逃がせば後で討伐しようと多くの人間たちが押し寄せてしまうかもしれないが、その時はまた移動すればいいのだ。襲ってきているなら倒すが、そうでもない者を殺すなんてそれこそ他のドラゴンたちと同じになってしまうのだ。


人間は何を思ったかゆっくりと息を殺して近づいてくる。


(なんでなのだ!? 意味が分からないのだ! 早く逃げればいいのに!)


何歩か進むとこちらへの注意が次第にキノコへと向いているのが分かった。


(そんなまずいもののために命を張っているのだ?! 人間はやっぱりよくわからないのだ!)


驚くべき人間の行動に思わず眠ったふりも忘れてしまった。

人間は絶望したような顔をしている。


(…………。もう一回寝たふりをするのだ……きっといびきでもかいていれば気付かないのだ…!)


人間はすばやくキノコを取ってすぐに帰っていった。


(ふう。とりあえずやり過ごせたのだ!)


しかし、人間に会ってしまったのは変えられない。


(面倒くさいことにならないといいのだ……)




~~



なぜあんな所にドラゴンなんかがいるんだ。

騒いでもいないし、受付嬢も何も言っていなかったことから冒険者ギルドはまだ知らないのだろう。

これは報告したら報奨金が貰えるかもしれない。


危機から逃れられた安心感と報奨金への期待を抱きながら街を目指して歩いた。




~~




「おいお前! リズとか言ったな。昨日のことは忘れてやるから早く俺様のモノになれ!」


街へついてすぐに不快な声で話しかけられた。

こいつ誰だ?

昨日って……ああ。昨日口説いてきたやつか。

たしか、この街の大手商会の商会長の息子とか言っていたな。

面倒くさいから適当にあしらったんだった。


(……無視でいいか)


そのまま目の前を通り過ぎようとする。


「おいおい。そんなことをして本当にいいのか?」


何を言っているんだ? こいつは。

こっちは急いでいるのに。


「これが何かわかるよなぁ?」


下卑た笑顔をこちらに向けて1枚の紙をひらひらさせる。


「なっ! どういうことだ!?」


紙には私が金貨30枚もの借金をとある商会からしているという旨が書かれていた。

もちろん身に覚えなどない。が、ちゃんと私の筆跡で記名までしてある。

まさか昨日の……。


「気付いたみたいだなぁ? うかつにサインしちゃあいけないってことだぜぇ?」


昨日、最後にこいつは私たちがこの街にいる間はとても安くするので自分の商会で買い物をしてほしいと言ってきた。何度あしらっても引く様子が見られなかったため、それくらいならいいかと思って返事をしたら契約書も作った。酒の勢いもあって、用心深いやつだとは思ったが特に疑いもせずに記名までしてしまっていた。私の気を引くために優遇してくれる人も今までたくさんいたからこいつもその一人だと思っていた。


「さあ。どうするんだぁ? 借金払えるのかぁ? なんなら肩代わりしてあげてもいいぞ? お前が俺様のものになるんならな!」


しかし、実際は違った。私は騙されたのだ。

こいつはどうやったかは知らないが私が借金をしているという証拠を偽造した。

しかも自分の商会ではなく、別の商会からの借金というところもたちが悪い。

おそらくこの証明書は本物なのだ。

もし私が今回のことを衛兵に言っても(嘘をついてまで借金を踏み倒したい女)として認識されるだけだろう。

返済期限が来たらそれこそこちらが悪として衛兵に追い回される。


(くそっ! うかつだった自分を殴りたい)

本編には絡んできません。

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