第5話 誓約とマリオン奴隷商
奴隷探しに行きます。
「改めておめでとう。無事に強くなれてほんとによかった」
「うん! ソータくんのおかげだよ! でもソータくん、これから買う私以外の奴隷も強くしちゃうだろうからもっと頑張って実力を上げていかないと!」
「まあいろんなことに手を出していけば必然的にやれることが多くないと行けなくなるからね。なんでも一通り出来るくらいには育てるとは思うよ。それでもリタが一番なのは変わらないけどね」
「そんなのわかんないよ! 美人で優秀な人がいたらそっちに目移りしちゃうかもしれないじゃん! 男はそういうものだってエリカも言ってたし……」
「俺はリタが全てだからリタ以外を好きになったりはしないよ。誓約魔法で誓ってもいい。リタもこの際誓っちゃう?」
誓約魔法は破ると内容次第でひどい時には死ぬこともある危険な魔法である。お互いの合意があってのみ内容が決められるが一度この魔法を行使してしまえば当人たち全員の合意がなければ解除することも出来ない。その危険さゆえ一部の国では無断で使用した場合に罰を課しているほどだ。決して「一緒にカラオケいこーぜ」みたいなノリで誘うようなものではない。
「……。」
「俺もリタが他の人に目移りしちゃうんじゃないかって心配だからさ。誓ってくれたら嬉しいな」
「分かった。誓う! 私はソータくん以外の人に恋愛感情を持ったりしない!」
「俺もリタ以外を好きになったりはしない。もしなってもリタに報告するしリタのそばから離れたりすることは絶対にしない」
ソータとリタの二人を淡い桃色の光が包みこむ。
二人は旅行から帰ってきて家に着いた時のように暖かいような安心するようなものを心に感じていた。魔力は人の感情を反映することがある。ソータはリタの、リタはソータの、相手が好きだという気持ちに触れたのだ。
光が収束していき、やがて安らぎを感じている二人の姿が現れる。
ソータとリタ、最強と準最強が互いを縛り合うために込めた魔力は莫大で、そのすべてが余すところなく誓約魔法につぎ込まれた。何人たりともたとえ神であってもこの魔法に介入することが出来ない。二人の仲はそれほど固いものとなったのだった。
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お昼になってもまだ寝ているリタを起こして昼食を食べさせる。
「美味しい。ソータくん前から聞きたかったんだけどこれってなんていう調味料を使ってるの?」
「こっちは味噌で、こっちが醤油、あと塩と胡椒と酢と…」
「んー。塩とか胡椒とかは知ってるけど醤油とか味噌とかは聞いたことないなー。いつも食べてるけどこのご飯とか調味料とかは無くならないの?」
「んー。二人ならあと二ヶ月くらいは持つかな。あ、そうそう。その材料の調達がてら次の目的地はリーラにしようと思うんだ」
「リーラって商業都市リーラだよね! 私行ってみたかったんだ! 商店だけじゃなくて露店にも掘り出し物がたくさん眠ってるって聞いたよ」
「ついたら一通り回ってみようか。片っ端から鑑定をかけていけば面白いものが見つかりそうだ」
「うん! さっそく今日から目指すの?」
「いや、今日はガイオンとマリオンの奴隷商館を回ってみようと思ってる。最後の大陸で見つけた植物とかで育ててるものの管理が大変になってきたからそろそろ人手を増やそうと思って」
「そっか。私もついて行っていいかな?」
「もちろんだよ。まずはマリオンのほうから回っていこう」
転移でマリオンの例の奴隷商人の商店にいく。
あの奴隷商人はリタが危険な状態だと俺たち以外で唯一知っている人間だ。洗脳して問題のないように片付けようと思ったがリタが「隠密スキルを使って姿を隠すから」と言ってきかなかったので俺一人で相手をすることになった。
「へぇ。それでその極悪女は昨日断頭台で頭を切り落とされたのか」
「はい。領主の館の前に保存の魔法をかけた状態で飾ってあるとか。なんとも救いがない話ですな」
少々の世間話をしてから商談にはいる。
「今日はいい奴隷がいないか見に来たんだ。また全員見せてもらってもいいか?」
「なるほど。それでは以前のように各部屋を回って頂く形でよろしいでしょうか?」
「ああ、たのむ」
〜〜
「こちらが戦闘に向いた男性の部屋でございます」
顔や体の見えるところに傷があったり厳つい顔だったりと戦闘向けと言われなくてもわかるような男共が6人ほどいた。でもなぜかみな優しい雰囲気を纏っている。入った時に全員が掃除用具を装備していたからだろうか? こいつら絶対いいやつらだろ。
特に気にかかった奴はいなかった。リタもあんまりだったみたいだ。
〜〜
「こちらが戦闘系以外の特技を持った男性の部屋です」
早口言葉が得意、計算がそれなりに速い、鳥の鳴き真似ができる、じゃんけんが結構強い。
いや、いらないな。ていうかこいつら売れ残りだろ。前にも見たぞ。リタも苦笑いだ。
〜〜
「ただいま戦闘が得意な女性奴隷がいませんのでこちらの部屋は物置として使用しています」
いや、いらんだろ、その説明!
以前はここも案内されたから文句言われないように説明したんだろうけどな。ちなみに以前いたのは魔族の女だった。魔族は人間より平均的な種族全体の強さが強いからすぐ売れるのだろう。
平均では魔族の方が強いけど魔王と勇者では勇者、人間の方が強い。結局は人によりけりって感じなのだ。種族でいうと人間側には今はリタもいるしな。
〜〜
「こちらが戦闘系以外の特技を持った女性の部屋でございます」
女性が5人ほど。うち二人には見覚えがあった。
「あの二人、前からいるよな。容姿もいいし良い特技も持ってるのになんで売れてないんだ?」
綺麗な顔立ちに家事系のスキルが高い。値段も高くはなるが需要はあるはずだ。
「あの二人は双子でして。二人一緒に買われることを条件に奴隷として売られてきたんです。そういう場合は基本的に我々奴隷商が責任をもって条件通りに売れるまで面倒を見ることになっていますので」
ああ、高額奴隷を二人も買えるくらいの金持ち共は大体が馴染みの店があるからこんなちっちゃい店には来ないってことか。マリオンでちゃんとした奴隷商がここだけだといっても別に伝手はこの街以外にもあるだろうしな。
リタは双子の奴隷を“じー”っと見ている。気になったのだろうか?
『リタ、この二人気に入ったの? 買おうか?』
リタにだけ聞こえるように念話で話す。今まで別に金策なんてあまり考えていなかったが異常な速度で依頼をこなしていったり、素材を売ったりしているうちに二人を買えるくらいの金は溜まっている。というか、値段はまだ聞いていないがもう1双子買えるくらいはあるだろう。
『うーん。でも今回の目的には合わないよね。他の農業とかに詳しい人の方がいいのかな?』
まあ最終的にはみんな何でもできる人材にするつもりだから別に考えなくていいんだけど…。
『じゃあとりあえずほかのところも回ってみてからにしようか。すぐに売れそうにはないし』
『うん』
〜〜
結局ここでは誰も買わずに帰ることとなった。
「……お客さん、あの時のお嬢さんのその後は……?」
帰り際、気になって仕方がないといった感じで奴隷商人が聞いてきた。
「ああ、彼女は俺の知り合いの別荘で暮らしているよ。周りを林に囲まれていて人はめったにこないらしい。事情を知っている友人が生活に必要な物資を届けているから不便はないと言っていた」
「そうでしたか。私ではどうにも出来ない事とはいえ結果的に見捨ててしまうことになってしまってずっと申し訳ないと思っていたのです…」
「あんたは奴隷商人に向いてないよ。人を売る商売で相手の気持ちを考えて悔やんだり悲しんだりするのは苦労しそうだ」
「いやはや耳が痛い。どうしてもやってみたいと周囲の反対を押し切った形で始めた商売で、案の定苦悩しているのですから。しかし苦労だけではないんですよ。人を売るという非人道的な商売をしているだけにお互いにとって利がある出会いを手助けできた時にはなんとも言えない嬉しさみたいなものがあるんです…って、お客さんに何を語っているんだか。申し訳ございません」
この奴隷商人は自分の仕事に誇りを持っているみたいだ。目的に合った奴隷が見つかれば客は喜ぶ、奴隷となっても必要とされていれば、自分の技能を生かせる環境ならば、身の安全は保障されるから奴隷も喜ぶ。と、そういうことだろう。
「いや、いい話を聞かせてもらった。またひやかしになってしまってすまなかったな。これはその礼だ」
金貨を1枚置いて以前と同じように去っていく。話を聞いていけばなかなかいいやつだったな。
ソータ>>>>ダイン>>リタ>>最後の大陸最強>ハク>イグニス




