第4話 リタの実戦
休み中にいっぱい書けたらいいな。
翌朝、未だ目覚めないリタの代わりにハクに魔物の肉をあげていると念話で話しかけられた。
『ご主人。ここはなにもなくて退屈すぎるゆえご主人について行きたいのだが!』
暇だったらしい。まあこいつ戦い大好きって感じだし何も起こらないここはさぞ退屈だったことだろうな。
「いつもって訳にはいかないがついてきてもいいぞ。というか俺が呼んだ時以外はあの大陸に戻ってるか? リタがモフりたい時以外は用なんてないし」
『なんか私の扱い雑すぎないか! あの小娘のときとは全然違うんだが! でもまあ戻ってていいのなら戻りたい。あそこは敵がたくさんいて飽きないのでな!』
「死んでも蘇生してやるから毛並みだけは守っとけよ? 首輪つけるからしゃがめ」
『それじゃあますます飼い犬みたいじゃないか! なにゆえ首輪を!』
「これはつけたものにこの空間へ自由に出入りできる権限が与えられるっていう魔道具だ。空間魔法も付与しといたからこれをつければお前の意思で行き来できるようになる。分かったか?」
『むむ。そういうことなら仕方あるまい。甘んじて受け入れるとしよう。それにしてもご主人はそんなものまで作れるのか! さすが私のご主人になっただけはあるな!』
「ああ、ハクって結構強いんだっけ? あっけなく従魔にできたから忘れてたよ」
もうリタも負けないだろうしほんとにペットとしか思ってなかったな。
『ご主人! 流石にひどいぞ! ご主人が強すぎるだけで私はこれでもあそこらへん一帯は私のナワバリとして守っていたんだ!』
「すまんな。でもハクより強いのもいるだろ? 大丈夫だったのか?」
ハクも狩る側になれるくらい強いがあの大陸で一番強いというわけではないだろう。
『強いヤツらは基本、自分のナワバリからでない。もっと強いやつが生まれて負けてすみかを追われてくることはあってもな。そういうヤツらは大体が手負いだからこの私が負けるはずがないだろう』
「ふーん。そういうことなら死ぬこともないか。じゃあもう行っていいぞ。首輪なくさないようにな」
『うむ! 感謝するぞ! ご主人よ!』
ハクは少し魔道具の使い方に苦戦したようだったがちゃんと黒いモヤを出現させて転移していった。
まだリタが起きる様子がなかったのでイグニスのところにも行ってみる。
「お前いつも草食べてない?」
『! 主! そんなことはないのだ! 主はいつもタイミングが悪いのだ! その証拠にほら! ここをみるのだ。さっきまで寝ていた痕なのだ』
食って寝てるだけだな。ハクと違ってイグニスは何も起きないのを望んでいる。それにしてもぐーたらだ。
「ハクは最後の大陸に行って暇を潰すみたいだけどイグニスも行ってみるか? お前も色々付与したから結構戦えるだろう?」
『いやいや! 我はここが暇だなんて思ったことがないのだ! むしろここは天国なのだ! 草は魔力たっぷりだし挑んでくる輩もいないし! こんな空間を作れるなんて主はスゴすぎるのだ! 一生主に忠誠を誓うのだ!』
「まあ嫌ならいいよ。退屈だったら申し訳ないなーって思っただけだから」
必死すぎるイグニスは放っておくことにした。
――――――――――――
起きてきたリタと一緒に最後の大陸へと転移する。
今日もすることは昨日と同じだ。俺が経験値を連れてきてリタが順番に殴っていく。その繰り返し。
「リタ。今日はもっと大陸の中央に移動してからにしようか。ここらの魔物は飽きてきたでしょ?」
「うん。同じような魔物ばかりで急所とかが分かってきたのはいいんだけどね。何しろずっと同じ単純作業になってたから移動するのは賛成!」
目新しい魔物がいれば少しは退屈も紛れるだろうし、何よりここはハクの縄張りなのだ。経験値稼ぎ中にハクが来たらリタの関心がそちらに向いてしまう。効率おちるしなんか気に食わん。リタが賛成してくれたので移動することにする。
「リタ、飛行魔法の使い方は覚えてるよね? ステータスも上がってるし長く速く飛べるようになっていると思うんだ。練習も兼ねて空を飛んで移動しよう」
飛行の魔法は移動に便利だからと加護を与えた日に教えていた。
「うん! 空を飛ぶのって最初は怖かったけど慣れてくると気持ちよくて好きなんだー。上手く飛べるようにソータくんにはバレないように練習した成果を見せてあげるよ!」
「それは心強い。それじゃあ先導するからついてきてね」
リタがついてこれるくらいのスピードで空をかける。プテラノドンのような魔物やグリフォンなどに襲われたがすべて魔法で遠距離から撃ち落としていく。
移動中、強い魔物の反応があった。ハクと同じく狩る側の魔物だろう。そいつの周りの魔物の反応がどんどん消えていっている。ここはそいつのナワバリのようだ。
「リタ、そろそろ始めようか」
ナワバリに入った俺達に気付いていないようだったので始めることにした。
「ここまで離れると違う種類の魔物がたくさんいて飽きないね!」
数十キロほどしか移動してないが先程までとはまったく違った種族の魔物がうじゃうじゃいる。最後の大陸とはそういうところだ。
しばらくそこで経験値稼ぎをしていると先ほどの魔物が向かってきているのを感じた。他の魔物を屠っていた反応が途中からこちらに向かって一直線に進んできていることから考えていつの間にかナワバリの主の索敵範囲内に入ってしまっていたのだろう。
「ソータくん! 何かこっちに向かってきてるよ!」
リタも気付いているようだ。
千里眼で魔物の姿を捉えて鑑定する。まあ実際には神眼をつかっているだけだが。
種族 ビッグフット(変異種) Lv360
ステータス
生命力 18000/18000
魔力 10000/11000
腕力 9000
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〔スキル〕
神級スキル
全耐性 極
特殊スキル
狂化
固有スキル
身体強化 上 Lv8
咆哮 LvMAX
普通スキル
念話 LvMAX
投擲 LvMAX
気配感知 LvMAX
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・
・
体長は5mほどでゴリラと人間のハーフといった感じの見た目だった。
(このくらいならリタも怪我しないで完封できるかな? )
「ここら辺で一番強いのが近付いてきてるね。リタのレベルも280を超えたし、予定より少し早いけど実戦にしてみよっか」
「え!? ここってイグニスくらい強いのがたくさんいるんだよね? それでイグニスを倒すのにはLv300くらい必要って言ってなかった? それなのにここのボス?! 私死んじゃうんじゃないかな!」
「ああ、リタは自分のレベルしか見てなかったしそう思うのも仕方ないよね。リタ、本当に大事なのはステータスだよ? リタのステータスは俺の加護のせいもあってものすごく増えてるから。普通の人間で言うと今の状態でLv600くらいあるから安心して」
「ろ、600!? 私そんなに強くなってたの!? でもソータくんの加護のせいって言われるとなんか説得力あるな……」
「ほら、実戦の相手がお出ましだよ? 集中して!」
「えっ! あ! うん!」
“バリバリバリィ!” と木をなぎ倒してビッグフットが現れる。リタの姿を確認したビッグフットは倒した木をリタに向かって投げつける。軽く投げただけでもものすごいスピードが出ていて“ビュン”と風を切り裂く音が聞こえる。リタは迫ってくる木を片手で受け止めてビッグフットへと投げ返す。リタが投擲した音を置き去りにした木はビッグフットへと命中し、ビッグフットは「グオッ!」といった驚きと苦しみの混ざったような鳴き声をあげて吹っ飛んでいく。すかさずリタはビッグフットへと迫り、渾身の一発をビッグフットの頭に叩き込む。ビッグフットの首はリタの一撃に耐えきれずに千切れて潰れた頭はどこかへと飛んでいってしまった。
奥の手であろう狂化も使えずに一撃で絶命してしまった憐れなビッグフットをいつも通りに解体してしまっておく。流石にこのレベルの魔物の魔石は大きく、人の顔くらいありそうだった。邪神軍討伐の時でも数十個ほどしか取れなかった程のものだ。何に使おうか想像が膨らむね!
「怪我がないようでよかったよ!」
呆然としているリタに声をかける。
「私今、Lv360の魔物を倒したの…? 一撃で……?」
「そうだね! かっこよかったよ! ステータスが重要って言ったでしょ? リタはもうこの世界でも五本の指に入るくらい強くなったんだよ!」
「……。」
リタが驚いてフリーズしてしまっている。可愛い顔で固まってしまっているのでとりあえずキスをする。
「んっ。なに! なんでいつもキスするの!」
「リタがかわいいからじゃん。責任取ってもっとキスさせて」
「意味わかんないよ!」
「まあいいや。で、どう? 強くなった感想は?」
「うーん。まだよくわかんない。私が強くなってるんじゃなくて本当はここの魔物が弱いだけなんじゃないかって少し思っちゃった」
「初戦であんな感じだったらそう感じても仕方ないよね。今日はもう残りの2時間くらいはリタが好きに戦っていいよ。力の確認も兼ねてね」
「うん、わかった! ソータくん、魔物集めるの協力してもらっていいかな? 出来るだけ違う種類の〜」
夕方までリタの要望に応えて、リタの周りにいろんな魔物の群れを転移させてはリタが屠るのを見守った。実戦を重ねていくうちにリタも自分の力が本物だと気づいたようだった。
黙ってたらキスされてもしょうがないですよね。




