第8話 気持ち
視点切り替え激しいです。
初めは私の力が目当てだと思っていた。ソータくんが私を好きらしいというのは分かった。私を助けたいというのも本心だろう。でもどこかでBランクである私の力を求められているんだろうと思っていた。いくらソータくんが万能で強いといっても個人の限界がある。お父さんもお母さんが死んで私の面倒を見るようになって次第にソロで依頼を受けるようになった。そのままパーティーを組んでいればSランクになれただろうお父さんでもソロで依頼をこなすには限界があったのだ。それを知っていて私をパーティーに誘ったのだと思った。ソータくんは支援タイプで戦闘関連は私の方が強いだなんて思ってしまっていた。でも違った。思い違いだった。ソータくんは強かった。誰よりも。圧倒的に。Bランクの私が足がすくんで動けないでいた相手すら一撃で倒してしまうほどに。
異空間のこともどこかにつながっている魔道具の扉なのだと思っていた。冒険者は自分の力を誇張したがるから。魔力で全部作ったなんて到底信じられなかった。見たこともないような魔道具を見たときも私はこの国から出たことがないから知らないだけだって、ここはどこか違う国なんだとそう思った。でもソータくんは太陽を動かした。私の目の前で。夢を見ているんだと思った。ソータくんと目が合うと吸い込まれそうな気がした。私は怖くなって異空間について考えるのを放棄した。
ソータくんの力はすべて本物なのだろうと思う。でもそうするとソータくんはなんで私を好きになってくれたのか分からなくなってしまった。私の力が欲しかったわけじゃなかった。彼は私なんかでは逆に足を引っ張ってしまうほど強かった。そして万能だった。彼は望むものなら何でも手に入れてしまうだろう。絶世の美女でも、山を築くほどのお金でも、世界を操れるほどの権力でも。彼なら何でもできるはずなのになんで私なんかを好きだと言ってくれるんだろうか。考えても考えても答えは出なかった。彼があんなにも思ってくれる理由、尽くしてくれる理由、待っていてくれる理由。
「…ソータくんはなんで私に優しくしてくれるの…?
ソータくんは私のどこを好きになってくれたの……?」
気付いたら聞いてしまっていた。
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なんで好きになったのか。理由は確かにあるはずだ。でもそれは一目惚れでもない限り複雑に過ぎていい表現が見つからない。表現のしようがない。
「リタ、好きになった理由って、これって簡単に言い表せるものじゃないと思うんだ。だけどリタにもう一つだけ知っておいてもらいたいことがある。俺がリタをどれくらい好きかってこと」
リタに教えてあげるね、俺の本性。
「リタが奴隷になった事件、黒幕は俺だったんだ」
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それを聞いた時の私が抱いた感情は怒りでも困惑でも憎しみでもなかった。
ただ、やっぱりそうだったんだと納得してしまった。
彼は人間離れした力を持っていた。ドラゴンを一瞬で倒せるし、伝説で語られるような蘇生魔法を使えるし、ドラゴンを従えてみせた。まさに神のような力を持った彼がなんであのとき、助けるのがあんなに遅かったんだろう。彼ならもっと早く気づいていたはずだと思った。ずっと疑問だった。眠らされた時、サブマスターはソータくんを覚えていないようだった。実務担当のあの人が話題になっていた彼を知らないわけがなかった。
ソータくんは自分がしたこと、思ったことをすべて話してくれた。
洗脳魔法というものが使えること。
事件の発端となった3人から話を聞き出してつながりを知ったこと。
実は依頼を私と話す口実に使っていたこと。
ずっと私の近くにいたこと。
ほとんど全員を洗脳してうまく動かしていたこと。
私の力目当てで口説いた男をお仕置きしたこと。
私より強い使い魔がたくさんいること。見せてもらったけどすごく可愛かった。
初日の行動をなぞって私の中のソータくんへの印象を強めたこと。
「同じ宿ってだけ」と言われて傷付いたこと。
眠った私を貧民街まで運んで身体を麻痺させて縄で縛ったこと。
茶番劇で私が泣いてしまって焦ったこと。
実は奴隷商人にあの時の私と同じような状態にしていたこと。
契約が中途半端なまま終わるように仕向けたこと。
全て私を手に入れる為に動いていたということ。
すべて上手くいって嬉しかったということ。
少しだけ安心してしまった。実はソータくんは私のことを大して見ていなくて、それで事件が起こってしまったから義務感で優しくしてくれてるんじゃないかとも思ってしまっていたから。ソータくんが甘やかしてくれるたびに本当の気持ちが知りたくてたまらなかった。
どちらにしろソータくんがいなかったとしたら私は奴隷として売られていただろう。
「リタはどう? 俺のことどう思ってる?」
私はどうなんだ? 私はソータくんをどう思っている?
ソータくんが私を奴隷にするために操っていた。それを知っても悪感情はなく、どうしてか胸のつかえが取れた気分だった。
ソータくんを見ていると心が暖かくなるのはどうしてだろう。
ソータくんに優しくされるとほかの何十倍も幸せに感じてしまうのはなんでなのだろう。
ソータくんに触れられると心臓が壊れそうなほど激しく鼓動してしまうのはなぜだろう。
あの時自分の弱さを知ったのにまた自分の気持ちを考えることから逃げてしまっていた。ソータくんが甘やかしてくれるから、このままでいたいなんて思ってしまっていた。奴隷の私がソータくんと結ばれるなんておこがましいとばかり考えてしまっていた。
でもソータくんは私を手に入れるために奴隷にしたと言った。全て計画通りだったと言った。ソータくんは変わらずに私のことが大好きで、ずっと待っていてくれる。
私はね…ソータくん……。私は…
「私はソータくんが好きだったんだと思う。最初はよく分からなかったけど、今ははっきり分かる。ソータくんが好き」
「リタを奴隷にしたのが俺だって知っても好き?」
「うん。聞いて安心したっていうか納得しちゃった」
「じゃあ俺の気持ち受け入れてくれる?」
「うん。もちろん」
「重いよ?俺」
「知ってる。そしてひねくれてもいる。私を奴隷にしちゃうくらいだし! でもそれでいい。ソータくんはそのままでいいよ」
自然と吸い寄せられて気が付いたら抱きしめ合っていた。ソータくんの体温を感じる。暖かい。ソータくんとの身長差のせいで顔まですっぽり埋まってしまっている。でもそのおかげで顔を見なくて済む。やっぱりまだ恥ずかしい。
そのまま沈黙を楽しんでどれくらいたった頃か、ソータくんが声をかけてくれた。
「そろそろ夕飯食べようか? 時間は止めてあるから出来たてホカホカだよ!」
なんだか締まらなかったけど一緒に夕食を食べる。ソータくんが作る料理はいつも見た事がないものだ。当然食べたこともないからどんな味がするんだろうといつもウキウキだ。夕食もとても美味しかった。
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リタと気持ちを伝えあった。
リタは俺の気持ちをすべて受け入れてくれるようだった。
正直、リタが逃げられない環境を作っても本性を教えてしまえばリタは俺を嫌いになってしまうんじゃないかと思っていた。
でもリタは受け止めてくれた。
リタを見くびってしまっていたんだろう。
でも本当に嬉しかった。
思わず抱きしめてしまっていた。
リタもそれに応えてくれる。
沈黙が流れてずっとそれを二人で味わっていたかったが夕食を食べていないことに気付いた。
俺は食べなくても生きていけるがリタはダメだ。
もしかしたらお腹は空いているが俺に付き合ってくれているのかもと思った。
リタは食事を楽しんでくれているようだ。
食事を済ませてリビングのソファーに並んで座る。
なんだかそのまま押し倒してしまいそうだ。
「明日は休みにしてデートしよっか」
リタに思い出を残してあげたかった。
だから明日はデートだ。
両想いになりましたね。おめでとう。




