第4話 リタとBランク依頼
リタと依頼を受け始めてから2日が経った頃、ギルドへ行くとすぐにアンナに呼び出された。
「実はお願いしたいことがあって呼んだんです」
アンナが言うにはここ最近、強い魔物の被害が増えてきて対処できる冒険者が少ないため俺たちにもその討伐依頼を受けてほしいとのことだった。
予想していた通りのことが起きてるようだ。低ランクの依頼目当てで低ランクの冒険者は増えていたが高ランク冒険者はほとんど増えていない。だからBランクやCランクの依頼をこなせる冒険者の手が足りなくなる。
「でも俺はDランクですしリタも今はCランクですよ?」
「だから依頼を受けているのは内緒にしてほしいんです。リタは元Bランク冒険者だしソータさんもCランク冒険者たちが自分たちより強いと太鼓判を押しているくらいの実力を持っていると判断してのことです」
おいおい、太鼓判を押されてるのか。
「つまりBランク以上の依頼も受けさせてあげるから内緒にしとけってことですね」
「はい、表現が悪い気がしますが概ねその通りです。そのお礼としてお二人のランクをそれぞれCランクとBランクに上げることも考えています。もちろんいつかこの街を出ることもあるでしょうから受けられるまでで結構です。どうでしょうか?」
「私はCランクのままで大丈夫です。Bランクにはならないつもりなので」
指名依頼の義務が発生するのは面倒だからと話し合って決めていたことだ。
「お願いはわかりました。受けてほしい依頼はまわしてください。それと…いいんですか? こんなことして」
まだあの仕事人間のデレクはマリオンにいるはずだ。
「だからあの人にだけはばれないようにお願いします! 怒ると本当に怖いんですから! 絶対にばれないようにしてくださいね!」
しつこいほどに念を押されながらもその場を後にする。
依頼を受けるときはそのことを知っている職員の受付に行けばすぐに出してくれるようだ。
早速受けてみることにした。
出来るだけ目立たないように受付嬢から渡された依頼書にはBランクと書かれており、対象はレッドグリズリーという魔物らしい。
「レッドグリズリーなら前に倒したことあるから心配しないでね」
目撃情報のあった場所に向かう途中、リタが励ましてくれた。
頼りなさそうに見えるのかな?
「レッドグリズリーなんて楽勝だよね!」 と言ってみる。
「もう! 油断してたら怪我しちゃうんだからね!」
やっぱり怒ってもリタは可愛かった。
オーガの時と同じようにレッドグリズリーの居場所を探ったことにして迷いなく進む。
そしてついてくるリタ。この二日間で俺の索敵が正確だということを嫌というほど知ったのだろう。もう信頼されているようだ。
レッドグリズリーの様子を風下からうかがう。 大きな岩のように丸くなって寝ているようだ。
「ソータくんあれお願い」
あれとは身体強化のバフのことだ。リタ自身も使っているがこれは重ね掛けができる。
この二日間、強い魔物はリタが一人で相手をしていた。俺も参加しようかといっても断られたのでリタに支援魔法をかけることに徹していたのだ。
「危なそうなら俺が倒しちゃうからね?」
言いつつ支援魔法をかける。リタの身体が淡い水色の光に薄く包まれる。
「うん、気持ちだけ受け取っておくね!」
その言葉を残し、リタはレッドグリズリーを狩りに行ってしまった。
まあ結果はお察しだ。
元Bランクで討伐経験がある魔物を倒せないはずがなかった。それに今は俺特製のバフがかかっている状態でだ。戦闘は1分ほどもなかっただろう。寝ていたところを強襲され、なすすべなく吹っ飛ばされていくレッドグリズリーが哀れだった。
「ソータくんって万能だよね」
いつものようにリタに水筒を渡して俺が解体をしているとそんなことを言われた。
「索敵範囲は広いし支援魔法も使えるし解体は異常にはやいし! 戦闘面でもオークを軽くさばけるくらいには強いんだもんね、ほんとひとパーティーに一人は欲しいくらいだよ」
褒められているようだ。
「リタもオーガもレッドグリズリーも瞬殺できるんだからすごいじゃん」
褒められて照れているようだ。「えへへ~」と笑っている。可愛い。
「Bランクも余裕だったし依頼受ける数増やしていこうか」
「うん、ソータくんのおかげですぐ見つけられるしもっと受けてもいいかもね!」
それから10日間ほど二人で依頼を受けまくり、ギルドの高ランク依頼過多状態は改善された。
森の様子も恐らく魔物が流れてくる以前とほとんど変わらない状態になったと思う。
俺はその過程でCランクにしてもらい、リタと同じランクになることができた。
アンナも正式にマリオン支部のギルドマスターになることが決定してギルド内の雰囲気もほとんど落ち着いてきた。そろそろ他の街にも行ってみようかという頃、ちょうどいい依頼が舞い込んできた。
依頼主はエリカの父で隣町であるガイオンまで護衛をしてほしいというものだった。
「リタ、この依頼から旅を始めようと思うんだけどどうかな?」
以前についてきてくれるとは聞いたが一応意思確認だ。
「うん、いい機会だと思う。このままじゃソータくん私に遠慮して始められそうになかったもんね。ありがとう」
ばれてたみたいだ。気遣いっていうのはばれるとなんだか恥ずかしいな。
まあ了承も得たしこの依頼でマリオンとはさよならだ。また来るとは思うけど。
アンナに報告しておく。
「俺たち護衛依頼を受けて違う街に行くことにしたので一応報告しておきますね」
「そうですか、そろそろだとは思っていましたが…。高ランク依頼の件は本当に助かりました。ありがとうございました。これ、私からの感謝の気持ちです、少ないですが受け取ってください」
おそらくアンナのポケットマネーから出しているのだろう銀貨が数枚入った小袋をありがたくもらって宿へと戻った。
なんか色々損しそうな性格だったな。ひどい目にでもあったらリタが悲しむだろうから使い魔を一匹おいてギルドを守らせておくことにした。
宿に戻るとエリカが出迎えてくれたのでエリカの父が出した依頼を受けたことを伝える。
「そうなの! じゃあ違う街へ行っちゃうんだ、寂しくなるけどお互い頑張ろうね! ちょっと待ってて! お父さん呼んでくる!」
リタとの別れを惜しみながらも泣いたりはしなさそうだ。冒険者は自分の住みやすい地を求めて旅をする人が多い。護衛依頼は多くの場合、そういった冒険者の街から街への移動の際に受けられている。
職業柄、そのことをエリカは知っているのだろう。
「おお! まさか君たちが受けてくれるとは。これは安心できる。よろしく頼むよ。ああ、一応名乗っておこう、私はジルベルトという。エリカの父だ。ジルとでもよんでくれ」
泊まっている間何度か話したことはあるがジルベルトって名前だったのか。
「知っていると思うけどソータだ。よろしく」
「リタです、よろしくお願いします」
「ああ、また助けてもらうことになるがよろしく頼む」
「またって?」
「実は―――」
話を聞いてみるとリタはジルを前に一度助けたことがあるらしかった。てっきりリタのお父さんがジルを助けて仲良くなってそこから娘を頼むみたいな感じかと勝手に思っていた。
そんなドラマみたいな展開ではなくリタがジルの命の恩人ってだけだったのか。
「それでいつから出発するんだ?」
「護衛の冒険者が決まったらすぐにと思っていたが今からではあまり進めないだろう。明日の朝からではどうかな?」
「分かった、リタもそれでいい?」
「はい。大丈夫です」
その日の夜はジルがエリカを休みにしてくれたらしく、3人で楽しくしゃべりながら夕食を食べた。
その後もずっとリタとエリカが話していたので気を遣って二人にしておいた。
今頃はリタの部屋でガールズトークなるものをしているのだろう。
明日からはリタをまた独占できるから今はエリカに譲ろう。
女友達にすら少し嫉妬をしつつ、ソータは気を紛らわすために異空間にこもり、鍛冶の真似事をするのだった。
やっと動き出すようです




