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第2話 アンナと計画

会話と名前増やしていきますね

帰ってきたアンナは複雑そうな表情をしていた。理解はできる。

領主に呼び出されて何事かと屋敷へ行ってみたらどう責任を取るつもりなのかと聞かれて頭が真っ白になった。それなのにいつの間にか気付いたら領主は上機嫌で馬車で冒険者ギルドまで送ってくれるというもてなしまで受けてしまっていた。

何事もなく終わってよかったと思う気持ちと何でこんなことになったのか全く覚えていない違和感で複雑な気分になっているのだろう。


まあ領主の件はうまくまとめといてやったぞ、素直に喜んでおけ。


今回の事件のことが公表された直後に領主からお呼び出しがかかったとあって少々ギルド内もざわざわしていたがアンナが戻ってきたのを見て、また、アンナの複雑そうな表情を見て何があったのと職員が詰め寄って聞いている。

たまたまギルド内にいた冒険者たちも興味があるのか聞き耳を立てている者も多い。

適当にはぐらかしながら答えていくアンナに、領主を言葉で軽くあしらってきたらしいという噂が流れるのは時間の問題だった。

まあ噂を流したのは俺だけど。

リタが辞める時にアンナの周りからの評価が上がっていればいるほど影響が少なくなるだろうと考えたからだ。


そんなことをしつつ、リタに達成報告をする。


「あと10回ほどEランク依頼を達成できればDランクに昇格できるようになりますね!」


おお、もうDランクか。あまり積極的に受けているつもりはなかったが冒険者ランクってのは結構すぐに上がるものらしいな。


「すごいですよ! この調子なら登録して二週間も経たずにDランク冒険者です! EランクならまだしもDランクまでとなるとギルド内最速かもしれませんね!」


どうやら上がりやすいわけでもないみたいだ。その後さらに依頼を3つほどこなしてリタと一緒に宿へと戻った。 上がりやすいのはお前のモチベーションだろうって? うるさい。

リタから褒められてるんだ、やる気が勝手に出てきてしまってもしょうがないというものだろう。

ちなみにリタが敬語なのは公私を分けるためと、まわりに変な勘繰りをされないため、らしい。

あと二日程なら我慢もできるというものだ。


宿の期限はもうすぐだが昨日のうちにエリカに五日ほど延長すると料金を払っていた。

ほんとはリタと同じ部屋がよかったが周りの目を気にして諦めている。



次の日の午前中、俺はDランク冒険者へと昇格した。


「おめでとうございます! 流石ソータくんです!」


ギルド内にいた冒険者たちも「俺はあいつならやってくれると思ってたぜ!」などと調子のいいことをいいながらもおめでとうと祝ってくれた。

次の依頼はどうするか聞かれたが用事があるからと言って受けなかった。

午後からは自分へのご褒美として依頼を受けないでずっとリタを観察することにしたのだ。


だがそれも長くは続かない。依頼を受けないということはリタと話す口実がなくなってしまうということだった。リタがほかの冒険者と話しているのを延々と見せられて自分は話せない、そんなことは断じて許してはいけないと心の中のソータが叫んでいた。

結局用事が案外早く済んでしまって暇だといったふうを装ってまたすぐに依頼を受け始めるのだった。


Dランクでも依頼の種類は増える。 護衛依頼だ。

でもそんな時間を取られるようなことはするはずがない。

だから魔物討伐依頼や採取依頼などを受けるのだがこれもEランクに毛が生えた程度の難易度しかなかった。

すこし面白い依頼がないか期待していたがやっぱりリタと話す口実にしかならないものだった。




翌日もいつも通りに仕事をしていると件のギルドマスターが街についたようだと使い魔から知らせが入った。

余談だが使い魔は現在小動物が二十匹ほどいる。そのどれもがすでにステータス的にはBランク冒険者程度、スキルも合わせればSランクも倒せるほどに強い。


ギルドマスターは50くらいの人のよさそうな雰囲気の男だ。マリオンの街をよく知っているようで数人の護衛の冒険者を案内するかのようにギルドへ向かってきている。


ギルドにつくとその男はギルドの中の様子を不思議そうに確認すると受付へ行き、自分の立場を名乗った。


「冒険者ギルドガイオン支部のギルドマスター、デレク・ガイオンだ。報告を受けて事件への対処にきた。まずは今のお前たちの中心人物に会いたい」


苗字持ちで街の名前を持っているということはこのデレクは隣町のガイオンを治める領主の親戚なんだろうな。ギルドマスターをやってはいるが貴族ということだ。

すぐにアンナが名乗り出てともにギルマスの部屋に入っていく。

情報を得るために使い魔を一緒に入らせて状況を探る。


「さて、今回の件はほんとうに残念だった。何か隠しているのは気付いていたが小悪党だからと放置していたのがいけなかった。いや、そんなことを言ってもせんなきことだったな。しかし、よく混乱を収めて持ちこたえてくれた。まとめるのも大変だったろうに。礼を言う」


「いえ、私は何にも! むしろ私が不甲斐ないからみんなが不安になってないか心配なくらいで……」


「なに、心配はいらないだろう。みんな君を信頼しているようだった。ギルド内はどんな惨状になっているかと思って入ったらみんな普通にしておって驚いたくらいだ。それは紛れもなく君のおかげだろう。そこでだ、君はこのマリオン支部のギルド長をしてみるつもりはないかね?」


「え! 私なんかがいいんでしょうか? 第一ギルドマスターが何をするのかもわからないのに……」


「仕事なら私が教えるから問題はないだろう。君がやる気なら私からエリアマスターに言ってみよう。今ならすぐに首を振ってくれることだろうしね」


冒険者ギルドは世界規模で国をまたいで存在している組織だ。一番上にいる権力者は冒険者ギルド総長と呼ばれて、国や地域ごとにエリアマスターを任命している。そしてそのエリアマスターがそれぞれの支部のギルドマスターを指名することができるようになっている。

この国で言うと王都エルバンの冒険者ギルドマスターがそのエリアマスターにあたる。

そのエリアマスターがいま、この事件で下がってしまったギルドの信用の回復に努めているから味方からの進言は簡単に受け入れられるだろうということだ。それにこのデレクは一応貴族だし。俺もアンナが適任だと思う。


その場はアンナの「やってみます」の一言ですべて決まってデレクはアンナに仕事を教え始めた。



その日の夕方、宿へと帰る前にリタとともにアンナのところへ行く。終わったら来てと呼び出しを受けていたからだ。


ギルマスの部屋に入るとアンナが1枚の冒険者カードを持って待っていた。


「リタ、まずは今までありがとう。あなたがいてくれなかったら多分乗り切れていなかったわ。それと、今後は冒険者に戻るんでしょう? これを返しておこうと思って」


アンナはCと大きく書かれたカードをリタに見せた。


冒険者カードはギルド職員になるなどした時に返却しなければならない。自分でありもしない依頼を作って達成したことにしてランクをあげたりするみたいなことの対策だろうと思う。

職員がまた冒険者に戻ろうとしたときはカードを返却したギルドで返してもらうか再登録するしかないのだ。もちろんカードを返してもらう場合でも元のランクより実戦から離れていた分だけ低くなってしまっているのだが。


「ありがとうございます! サブマスターに捨てられていたらどうしようって思ってたんです!」


リタがカードに魔力を流すと名前と犯罪歴が浮かび上がってくる。

彼女のもので間違いないようだ。リタが喜んでいて俺もハッピーになる。

色々アンナを助けた自分を無性に褒めたくなった。


その後アンナから自分がギルドマスターになるかもしれないと聞かされてデレクについての愚痴を少し聞いたところで宿へと帰った。デレクは良い奴なんだろうが仕事にはとことん厳しいみたいだ。アンナも元のギルマスたちよりはよっぽど立派なギルドマスターに育つだろうな。


――――――――――――


「明日からは冒険者に戻るわけだけど武器とかある?」


「はい、いつでも戻れるように準備は出来てますよ、じゃなくて、できてるよ」


「良かった。じゃあ明日からは依頼を一緒にこなそう。冒険者としてのカンが戻るまではマリオンにいることにしようか」


とは言っているが実際にはリタがまだ少し同僚たちがどうなるか不安そうだからだ。

それにエリカともまだ別れたくなさそうだし。

いつかは別れることになるけどその時も辛そうにしていたら転移でいつでも会えるからと教えてあげれば機嫌も治るだろうか。


「うん、分かった!」


元気に答えた隣を歩くリタを見る。

リタにはまだ手を出していない。

リタがまだ俺を好きかどうかわからないからだ。

洗脳魔法を使ったことも神眼で感情を見たこともリタには一度もない。

だから正直とても不安だ。リタが奴隷になったのだって俺がそう仕向けたからだ。

リタは何を思っているんだろう。本当のことを知ったらどう思うだろう。

タイミングと演出がかみ合えばリタも逃れられないことはわかった。

すべてはリタが逃げられない環境を作ってからだ。


リタが俺のものになってくれるように、俺の気持ちに応えざるを得ないように全力を出した。

だから今度はリタの気持ちを知れるように、リタが俺を好きになってくれるように全力を出すんだ。


そう思った。

もし夜這いして嫌がられたりしたらソータは破壊神となって世界を壊し尽くすでしょう、傍らに洗脳したリタを置いて。

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