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第7話 それぞれの思惑

愚か系の悪役ってむずかしいですね

私の父は大商会を営んでいた。

いま私はその伝手をつかってこのマリオンという街のギルドマスターをしている。


しかし私はこんなところで終わるような人間ではない。

私は選ばれし人間なのだ。

いずれは貴族となって領地をもらい、好きにするのだ。

領民は貴族のおもちゃである。 私が貴族となれば好きにすることができるのだ。

商会には興味がない。 金は手に入るだろうが、仕事が面倒だ。

貴族となって毎日遊んで、たまに上司のご機嫌取りをしている方が性に合っている。


いまギルドマスターの仕事をしているのには訳がある。

単純にギルドマスターの権力を好きにできるというのもある。

しかし一番は今目の前で捕まってしまった手駒の処遇について話し合っている人間だ。

いや暑苦しい正義感をもっている衛兵長の方ではない。 女の方だ。

この女はサブマスターで仕事はできる。が、愛想はない。

美人でいい体をしているのにだ。

女はしょせん愛想がすべてだというのにこの女にはそれがない。

哀れな女だ。 勝気な雰囲気なのが男ができない原因だろう。

しかし私はほかの男とは違う。

こんな強気な女だからこそ屈服させたくなるというものだ。

今は小金稼ぎのために仕事を任せているがいつかは私の愛人にしてやろう。

そのほうがこの女のためになるだろう。


しかし今その小金稼ぎで問題が発生している。

手駒であった冒険者三人が捕まったというのだ。

さきほど戻っていった受付嬢を襲って返り討ちに会ったらしい。

なんということだ。あんな小娘にいいようにされるとは。

捕まった三人は処分するほかあるまい。

命令もしていないのに襲って挙句の果てに捕まるような無能はいらない。

どうせ替えはきくのだ。



衛兵長とともに牢屋へ行き、担当者と話す。

今後ギルドでこんなことが発生しないように見せしめとして鉱山奴隷としてほしいと強くおす。

奴らに何か話されてしまってはたまらない。はやく処分してくれ。

そんなことを思ったがもうすでに私たちの命令で動いていたと吐露してしまったようだった。

それでもギルドマスターの言と犯罪者たちの言ではどちらが信じられるか考えるまでもないが。


三人の処分を決定してギルドに戻り、女と今後について話す。


あの三人によって衛兵に目をつけられてしまった。

なにかパフォーマンスが必要だろう。

それとあの小娘がどこまで知ったか。 知っているなら始末しなければならないだろう。

知らないとしてもあの小娘のせいでこんなことになったのだ。 奴隷にでもして売り払ってやらなければ腹の虫がおさまらん。

小娘はBランク冒険者だ。良い値がつくだろう。


女は小娘からどこまで知ったか聞きだすために連れ出したようだ。

私はパフォーマンスの準備をするとしよう。





女と小娘が帰ってきた。

職員に合図をしてパフォーマンスを開始する。



「そんな彼女に衛兵隊隊長とわが冒険者ギルドより報奨金を出すこととあいなった! これを受け取ってほしい!」


ふん! 今はせいぜい浮かれているがいい。

貴様を売ればもっとたくさん金が入ってくるのだ。


「三名の処分を重く思う者もいるのは知っている! しかし、これはみせしめである! ギルドでこのようなことがあればもっと重い罰を与えよう! 今後このようなことが起きぬように密告者には褒章を出すこともここに宣言しておく!」


反応は上々だ。 こんなところでいいだろう。



――――――――――――――――


私が望むものはお金と権力。

この男が私を下卑た目で見ていることは知っている。

それでもこいつの地位を私が奪うまで協力関係を築くことにした。

この男は自分がすごいと勘違いしていた。

親のコネでギルドマスターになってからろくに仕事もせずにほかの組織のお偉い方のご機嫌取りをしている。

仕事をしないギルドマスターと仕事を完璧にこなすサブマスター。

わかりやすいアメとムチだ。

どちらが頼られるかなどすぐにわかることだろう。

冒険者のなかからも手駒を得て、実質的にこのマリオンの冒険者ギルドを支配しているのは私という状態になった。

表ではギルドマスターの陰口をたたく職員を適度に窘めつつ気配りができる上司としてふるまう。

裏ではギルドマスターの手駒を使って誘拐してきて奴隷に落として売りさばく。

そんな生活が続いた。


最近魔物の被害が多くなってきた。

忙しくて手が回らないことも増えてきた。

そんなときにリタにであった。 Bランク冒険者だから大体の仕事は見ているだろう。 教えることは少なくて済むかもしれない。

それに顔が普通だった。 ギルドの顔となる受付嬢には多少仕事は出来なくても見た目重視で選ばれることが多い。 そちらの方が冒険者の士気も上がるからだ。

しかし、Bランク冒険者なら何かに感づいて処分しなければならなくなるかもしれない。

そんなときに美人だったらファンができていることが多いので少し面倒になる。

だけど彼女は決して美人ではなかった。

まわりが美人だらけの受付嬢という場で彼女にファンができるようなことはないだろう。


そんな考えから彼女を職員に誘った。

彼女は優秀だった。 仕事もすぐにマスターして、同僚からの評判も上々といったところだった。

しかも彼女を気にしている冒険者はいない。裏方の仕事を表側の人間が見ることは少ないからだ。


彼女は私に憧れを抱いているようだった。 当然だ。

私がそう思うように行動しているのだから。

これで彼女は私が望めば処分できるようになった。

都合がよかった。



おとといの夕方のピークが終わったあたりのことだった。

リタと手駒にしている冒険者が言い争っていた。

理由は何だったか……?

なぜか全く思い出せない。

忙しい時期で受付嬢には手を出すなとは言っていたのでそのときはさほど心配はしていなかった。



しかし、事件が起こってしまった。

あの冒険者たちがここまで馬鹿だとは思っていなかった。


一応いつでも処分できるようにはしていたのであまり焦りはなかった。

話を聞くためにリタを連れ出す。

連れて行ったのは雰囲気がとても上品な高級店だ。

まずは相手の勢いをつぶす。

ちゃんと雰囲気にのまれていたので予定していた言葉を言う。

うまく効いたみたいだ。

彼女がすぐに襲ってこなかったということは何も知らないか、知っていても真相にたどり着いていないか、もしくはあの三人の言うことを信じていないか、のどれかだろう。

とりあえず相手の心をさらに開かせる。


「それと今回の件で報奨金が出ることになったわ。あの衛兵長のポケットマネーとギルドからも出すことにしたからそれなりの金額にはなっていると思うわ。おめでとう」


これもしっかり効いたようですらすらと状況を話してくれた。


真相にはまだまだたどり着きそうにない。 それにこれ以上は関わるつもりもないようだ。

思わず顔が緩んでしまう。


話しているうちに時間の経過に気付いたのか早く戻ろうとせかしてくる。

もうそろそろあの男の方も準備ができた頃だろう。


「大丈夫よ。そうね。そろそろいい頃合いかしら」



簡単なパフォーマンスも終わり、ギルドマスターと話し合う。


衛兵の目が厳しくなっているらしい。

リタについてはすぐにどうにかする必要もないだろう。

それにいまリタが消えたら私たちが余計に疑われてしまう。

それでもこの男はリタを処分したいらしい。

すこし時間を置いて衛兵の目が少なくなってから動くことにした。



それからリタの様子を観察しつつ、いつも通りの毎日を送る。

でもなぜだろうか。 リタについての記憶が薄くなっている気がする。

それだけじゃない。 最近職員たちが何を話していたか、覚えていない。

なんだろうこれは。

疑問を感じつつも出来る上司を演じる。



一週間ほどであの男の我慢が限界を迎えた。

これ以上はこの男が暴走してしまうかもしれない。

明日はちょうど彼女が休みだったはずだ。

持病が再発して体調不良で早退して明日一日様子を見たけど治りそうもなく、故郷に帰ったということにでもしておこう。

きびしい言い訳だが今まで作り上げてきた信頼は揺るがないだろう。

そういう事情でやめていった者はいたし大丈夫だ。


大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせる。


大丈夫、今まで彼女のファンなんて()()()()()のだから。

サブマスターはまだボケるような年齢ではありません。

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