第5話 報奨金と芽生えたなにか
第二章は主にリタ視点で話が進みます(言うのだいぶ遅い)
朝の鐘の音で目を覚ました……と思う。
気付いたらまたソータくんと朝食を食べていた。
昨日の夜はあれほどちゃんと起きようと思って寝たというのになんでだ。
もう気にしないことにする。
今日からまたギルドで仕事だ。 昨日は色々あったけどしゃんとしなきゃ!
ソータくんに今日は依頼を受けるのか聞いてみると用事があるとのことだった。
少し残念。
ソータくんと別れてギルドへ向かう。
中にはすでに何人か同僚がいて、各々掃除や依頼の貼り出しなどを行っていた。
冒険者の姿も少しだけ見られる。
まだ完全に起きていないのか、下心からなのか、掲示板に依頼の貼り出しを行っている職員のお尻を凝視している。
私も書類の整理をしていると受付を担当していた職員からヘルプサインが出される。
依頼を受けていく冒険者たちが増えて、窓口が混む時間帯になったのだ。
私も空いている窓口にいき、受付を開ける。
少しすると冒険者が増えて、やがて全ての受付窓口が開かれる。
いつものようにさばききり、一つ二つと窓口が閉まっていき、それぞれ違う業務を行う。
私も書類の整理の続きをしていると来客の知らせがあり、サブマスターがギルドマスターの部屋へ行ってしまった。 大丈夫だろうか。 あの二人はとても仲が悪い。 あまり仕事をしないギルドマスターと一人で仕事を終わらせてしまうサブマスター。 みかけるときはいつも険悪な雰囲気だった。
まさか来客の前でまで喧嘩はしないとは思うが少し心配だ。
少しすると同僚が私を呼びに来た。
来客は衛兵の方だったらしい。 昨日のことかな?
「なにやらかしたの!」と聞いてくる同僚をとりあえずはぐらかしながら、ギルドマスターの部屋へ入る。
中には曲がったことは許さないといった雰囲気の方ときつそうな見た目の美人、そして太っていて毛が薄い中年男性がいた。 順に衛兵、サブマスター、ギルドマスターだ。
「ゴーグたち三人に襲われたというのは君だね。いや、疑っているわけではない。事情はソータという少年から聞いているから最後に確認をしてもらいたくて来たんだ」
ゴーグたちに襲われた状況を話すと大体聞いていた通りだといって解放された。
部屋から出るとき二人から睨まれた気がしたけど……。 いや、一人は通常運転のようだ。
なんでだろう。
部屋から出たら同僚に詰め寄られたのでゴーグたちに襲われたので撃退して衛兵に身柄を渡したと簡潔に話した。 みんな私がBランクだったとは思わなかったようでとても驚いていた。
その後、衛兵は少し二人と話してからギルドマスターを連れて帰っていった。
サブマスターが戻ってきたので話を聞いてみると牢屋に行ってゴーグたちの処遇を決めるのだという。
まわりからの視線をたくさん受けつつ、仕事を続ける。
少しやりづらい。
一時間ほどでギルドマスターが戻ってきた。
サブマスターを部屋に呼んで何か話し合っているみたいだ。
私たちも仕事の合間に雑談程度でゴーグたちについて話す。
ひそひそ話は得意になった。 みんなギルドマスターの悪口を言い合って日ごろの鬱憤を晴らしているようで、私はそういうの好きではないけど雑談程度なら参加している。
なんだか一体感があって面白いのだ。 サブマスターにはすぐばれるけど。
お昼時、半日で終わる依頼を受けた冒険者たちが依頼終了の報告にやってくる。
でもそれは少数だ。 だから窓口は少なくて大丈夫。
みんな交代でお昼休憩に入っていく。
そんなときサブマスターに呼び出された。 いつもの怒っているのかと誤解してしまうような顔で食事に誘われてしまった。 いつもは一人でさっさと済ませてしまうのにどうしてだろう?
何かありそうだったのでついていった。
サブマスターについていくと入ったお店は上品な雰囲気の高そうなお店だった。
ああ、節約したかったのに……!
「心配しないで。私が誘ったんだから私が払うわ」
思っていることがばれてしまった。
やっぱりサブマスターってすごい。大人な女性って感じでかっこいい。
「誘ったのはゴーグたちの件について詳しく聞きたかったからよ。今後の役に立てたいと思って。それと今回の件で報奨金が出ることになったわ。あの衛兵長のポケットマネーとギルドからも出すことにしたからそれなりの金額にはなっていると思うわ。おめでとう」
なんと! ソータくんやエリカたちを守ろうとしただけなのに報奨金までもらえてしまうなんて!
次の休みにソータくんをまたデートに誘ってみようかな? なにかもう少しで気付けそうな気がするんだ。
「それでゴーグたちの件だけど、彼らは何か言っていた?」
「いつもみたいに奴隷にして売り払うって言ってました。 そういえば最初の方はゴーグさん以外の二人は迷ってるみたいでした。 後で怒られるとか言ってましたね。裏に誰かついてでもいるんでしょうか?」
運ばれてきた料理に舌鼓をうちつつ、質問に答えていくうちにサブマスターの顔がいくらか柔らかくなっていることに気付いた。
(仕事人間って感じの人でもおいしいものを食べているときは緩んだりするんだなー)
なんだか新鮮だった。
ふと、窓から見える時計塔をみる。
サブマスターと話しているうちに二時間ほどたってしまっていたようだ。
慌ててサブマスターをつれてギルドへ戻ろうとする。
「大丈夫よ。そうね。そろそろいい頃合いかしら」
サブマスターはとても落ち着いていた。 何が大丈夫なのだろう?
ギルドへ戻るといきなり拍手で迎えられた。
何だろうこれは?
ギルドマスターが出てきて簡単な式典のようなものがはじまってしまった。
名前が呼ばれたのでとりあえずギルドマスターの方まで行く。
「ゴーグ、リド、バンの三名が鉱山奴隷となることが決定した! 卑劣なことに奴らは罪のない人間を奴隷に落として売り払っていたらしい! 今後このようなことは冒険者ギルドが許さないと、二度と起こさせないと誓おう! 今回、奴ら三人の捕縛に尽力してくれた功労者を紹介しよう! 知っている者は多いと思うが、このギルドの受付嬢をしてくれているリタだ! 実は彼女はBランク冒険者の資格を持っている! その類い稀なる力を使い、非道な行為をする三人を取り押さえてくれた! そんな彼女に衛兵隊隊長とわが冒険者ギルドより報奨金を出すこととあいなった! これを受け取ってほしい!」
ずっしりした重みが感じられる硬貨が入った袋を渡された。
いきなりで驚いたけど報奨金をもらえたみたいだ。 ギルドマスターはまだ何事か演説しているようだ。
周りの様子をみていると素直にギルドマスターの言葉に感動している人もいれば三人の行いに憤っている人、処分の重さに驚いている人、尊敬の表情や青い顔をしてこちらを見ている人など様々だった。
青い顔をしているのは私のことを「ダークエルフだ」などとばかにしていた者たちだろう。
ああいう輩は自分より弱い人間にしか強く出れないのだ。
あー、ソータくんがこれを見てくれていたらなー。
かっこいいって思ってもらえたかな?
その後は通常通りの業務が待っていて、なんだか拍子抜けしてしまった。
でも報奨金はたくさんもらったし嬉しいことに変わりはない。
でもひそひそ話での雑談内容が私になって少し気恥ずかしかった。
依頼完了報告を受け、ピークの時間帯が過ぎて暇になる。
隣の受付ではいつものように美人の受付嬢が冒険者に口説かれている。
あんなことがあったからか私を口説いてくる人もいた。
でもみんな私の肩書きばかりを見て話しているのだと分かってしまった。
すごい掌返しでもういっそ清々しいほどだった。
もう少しで業務も終わる。
そういえばこれくらいの時間だったな、彼が来たのは――
ギギギギギギ――――――。
ギルドの扉が開かれて男の子が入ってきた。
おとといもしていたようにすこしキョロキョロしてこちらに向かってきてやっぱり私の窓口の前で止まる。
「用事が終わってたまたま通りかかったので、まだいるかなと思って寄っちゃいました。仕事終わるまで待っててもいいですか?」
「はい」
知らぬ間に口からこぼれていた。
少しうれしいと思ってしまった。
あんなことがなくてもソータくんは私を見つけてくれるんだ。
そんな風にとらえてしまう。
なんだろう、心に何かがともったかのように暖かいものを感じる。
私はその芽生えたものについて考えるあまり、彼と何を話して帰ったのか、夕食は何を食べたのか、覚えていない。ぐるぐると思考しても全く答えは出てはくれなかった。
だから私は時間をかけて、芽生えてしまったなにかについて少しずつ紐解いていくことにした。
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