表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/48

第1話 リタの過去

第二章は過去編から

物心ついた時から家族はお父さんだけだった。

お母さんもおじいちゃんもおばあちゃんもみんな流行り病や魔物の被害にあって死んでしまったらしい。

でも私は寂しいなんて思わなかった。

お父さんはいつも私のことを第一に考えていてたくさん構ってくれたから。


小さい頃、近所の同年代の子どもたちに「裏切り者の肌」「ダークエルフと同じ」 と仲間外れにされていた。 

自分がなぜ仲間外れにされるのかは分かっていた。

お父さんはあんまり聞かせたくなかったみたいだけど、この肌の色のせいだろう。

伝説の勇者と魔王の戦いを語った有名なおとぎ話がある。

そこでは最初勇者側で戦っていたダークエルフたちは戦いの最中、勇者側の劣勢を悟って裏切り、勇者に牙をむくという場面があるのだ。

このおとぎ話は大昔に実際にあった戦いをうたったものであり、勇者側の勝利後、ダークエルフたちは「裏切り者」「卑怯者」 などと蔑まれ、ダークエルフ狩りが始まってその数を減らしたと言われていた。


しかし、そのおとぎ話は話を盛り上げるために改変されたものであり、事実とは異なるもの というのは今では一般に広く知られていることだ。

私が生まれるずっと前、当時ダークエルフと共生していたエルフの国の王であるハイエルフが そんな裏切りなどなかった、事実無根である と実際に大戦を経験した生き証人として証言したらしい。

エルフと言えば普通数百年生き、ハイエルフととなれば千年は生きる長命種である。

実際に見てきたと言われれば誰も反論はできなかった。


だから今では作りものだと分かったうえで広く楽しまれるようになった。

でもそんなことは子どもたちにとっては特に気にされることではなかった。

だから裏切り者と罵られ、仲間外れにされた。


そのことを知ったお父さんは当然怒って仲間はずれにした子どもの親たちに詰め寄っていた。

保護者たちは本当に申し訳なさそうに謝ってくれたが、お父さんの怒りは収まりそうになかった。

保護者たちはお父さんの怒りに涙目になりながらちゃんと躾けると約束してくれた。

お父さんはAランク冒険者だ。 当時はよくわからなかったが今だったら父におびえていた保護者たちの理由が分かった。

私としては、遊ぼうといって断られたときはすこし悲しかったが、お父さんがいたのでそこまで寂しくはなかったし、その親たちが謝ってくれたのでもう終わりでいいよと思っていた。

結局その場は私が父を宥める形でお開きとなった。


そんなことがあってから近所の子どもたちも仲間はずれにするようなことはしなくなった。

そのかわりものすごくよそよそしくなって私はいるだけで空気が悪くなってしまうような存在となってしまった。

だからだろう。  私は次第に遊びに行くことも少なくなっていった。

それを見かねたお父さんが私を狩りに連れて行ってくれた。 お父さんはやっぱりとても強くて色んなことを知っていた。

13歳の時だったか。

私はお父さんの仕事について行ってお父さんに冒険者についてや戦い方などを学ぶようになった。

お父さんも自分がいつ死ぬかわからないから、と色んなことを教えてくれた。


そこからお父さんが死ぬまで、二人でパーティーを組み、冒険をしていった。

お父さんは私の成長に合わせて色んな依頼を受けてきてくれて、たくさんの依頼を一緒にこなす内に私もBランク冒険者となることができた。


お父さんは流行りの病で亡くなった。

病床に伏している間、冒険に連れて行ってあげられないとずっと嘆いていた。

お父さんがもう長くはないと知った時、胸が潰れそうな気持ちを抱いた。

お父さんを慕っている人はたくさんいたらしい。

毎日のように様々な職種の人がお見舞いに来てくれて、多くの人が私が一人残されると知って支援を申し出てくれた。

お父さんは死ぬ直前、私にこう言った。


「ごめんな、お母さんと誓ったのに一人にしてしまう。 まだ何もしてあげられてないのに。本当にごめんな」


(お父さん。 私色んなこと教わったよ。 魔物も一人で倒せるようになった。 もう充分すぎるほど愛をもらったよ)


支援は受けなかった。 私にはお父さんからならった生きるすべがあったから。



長年住んだ街をでて、とある街を目指す。

街の中心には大きな時計塔があって、夜になるとライトアップされるらしい。

そこで愛を誓い合った男女は長く結ばれるんだとか。

お父さんがお母さんに結婚を申し込んだのもそこだと楽しそうに語っていた。

一度行ってみたかったのだ。

この街からは遠くてお父さんと冒険をしていた時には行けなかった。


街への道中、魔物に襲われている男性を助けた。

お父さんと同じくらいの年齢に見える。

なんとこの人、目指していた街、マリオン で宿屋を経営しているらしい。

お礼に安くするのでぜひ泊っていってほしいと言われた。

これから何があるかわからないしお金は節約していきたかったので甘えることにした。


街の中へ入ると大きな時計塔が見えた。

あれがお父さんがいっていた時計塔だろう。 よくみると結構古いようでいたるところに改修工事のあとがあった。


宿には助けた男性の子どもであるエリカがいた。 歳は私と変わらないだろう。

親が突然連れてきた私にも気さくに話しかけてきてくれて街中の案内までしてくれた。

初めて友達と呼べる子ができて少し舞い上がってしまった。


時計塔にのぼってみた。 塔の中ほどにある展望台までは一般開放されているようだ。

そこから見る眺めはとてもきれいだった。 すぐに私のお気に入りの場所となった。

でもそこには恋人らしき男女が数組いて、この中で一人なのはなかなか気まずかった。


(いつかそういう人とランチでもしたいな)


エリカはいつも宿の仕事を手伝っているし誘うのも悪いかなと思ってしまう。



これからどうしようか、考えながら冒険者ギルドへと向かう。

時計塔を見るという目的は果たしてしまった。

エリカとも仲良くなれたし、宿代を安くしてくれている。

この街ですこし暮らしてみようか。


そんなことを思った。



最近この辺りでは魔物が増えてきて、冒険者への依頼が多くなっているらしい。

それを聞きつけて冒険者たちが少しづつマリオンに集まっている。

それによってギルドの仕事も忙しくなってきている。

でもギルド職員はどこも手いっぱいでこのギルドだけ人数が増えることはない。

だからよさそうな人を見つけては声をかけている。


そんなことを説明してくれたのはギルドに入った私にすぐに声をかけてきた目の前にいるキリっとした女性だった。

彼女はこのギルドのサブマスターらしく、話をして私がBランク冒険者だとわかるとその経験を活かして受付嬢をしてみないかと誘われた。

しかも休みはもらえるし給料も高いという高待遇だ。

恐らく依頼の手続きなどたくさん見てきたから教育がほとんどいらないということでだろう。

この提案に乗らない訳がなかった。


最初は怖い人だと思っていたサブマスターも仕事をしていくと結構優しい人だとわかった。

仕事もできて気配りもできる、しかも美人である。 すぐに尊敬する上司となった。



受付をしていて嫌だと思うこともある。

お父さんと一緒にいた頃は気付かなかったけど冒険者には精神が子どもの人が多い。

私の肌を見て、「ダークエルフがいるぞ!」「裏切って負けるのってどんな気分?」などとはやし立ててくる人がいたのだ。

その多くは周りの冒険者や職員に白い目で見られてすぐにやめていくのであまり困ってはいない。

でもこう何度も続くとイラっとしてしまう。

まあ減ってきていることだしもうすこし様子を見よう。



受付業務にも慣れた頃のこと。

たくさんの冒険者の手続きも終わってもう少しであがる時間だ。

となりの窓口では他の美人な受付嬢たちが冒険者たちに言い寄られている。

実はその受付嬢は裏で「もっといい条件の男いないのかしら」と言っているような、ハッキリ言って性格が悪い女なのだが男たちは気付いていないようだ。

私の方が性格はいいはずなのに私を口説くような男は現れなかった。

受付嬢をしていれば勝手にモテると思っていたのに、そんなことは決してなかったようだ。


明日はどの依頼を受けようかとパーティーで話し合っている人、先ほどから下手な値段交渉をして買取価格をあげようとしている人、ギルド内部にある酒場で仕事終わりの一杯をしている人。

ギルドは今日も平常運行だ。


そんなとき、一人の男の子がギルドに入ってきた。

新しく買ったばかりのような刃こぼれも汚れもない剣を携えている。

冒険者志望で登録をしに来たのかな?

キョロキョロしながらこちらへ向かってくる男の子をみながら考える。

私の窓口に来た。 

そわそわしている彼の緊張をほぐすように伝える。



「ようこそ冒険者ギルドへ! ご依頼ですか? それとも登録でしょうか?」

運命の出会い

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ