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二人の兵隊

兵隊が一人、歩いていた。



いつもの倍の重さを支えているこの脚は、もう限界を迎えていた。

フラフラする脚を、かすかな意識で支えて、閉じそうな目を必死に開けて、彼は歩く。


「もう少しだ、頑張ってくれよ君。

この数年間、辛い日常を互いに慰めあってきたじゃないか」

彼には家族がいる。妻がいて、子供がいて。そんな守るものがある。

この数年間、彼はいつも彼らのことばかり考えていた。

「こんなところで倒れてたまるものか。そうだろう」

私は意識などほとんどない、かすかな力を絞り出して彼を鼓舞した。


私は彼が羨ましかった。守るもののある彼が。私はどうだろう。守るものなど1つもないのだ…

そう。1つも…


「そうだな。私はこんなところで死ねない…そうだ。死ねないんだ…」

とても掠れた声であった。

強い風が一度でも吹けば、彼の火は消えるであろう。そのようなものだった。


バタッ


私はこれ以上は動けないと思い、とにかく近くの建物に倒れこんだ。そこらの建物はミサイルだの爆弾だの銃弾だのに好き放題にされ、荒れ果てている。






白い建物が見える。少しぼやけている…

どうやらうたた寝をしてしまったようだ。


「すまん。少しうたた寝をしていたようだ」



彼からの返事はない。、


大体のことは察したのだが、それを認めたくはなかった。


「おい。いつまでも寝ていられないぞ」

私は彼をさすった。


私はそれを確信した。分かってはいた。

彼を背負っている時からこの時が来るのはわかっていたのだ。覚悟はしていた。それでも…






私は涙を流した。






「はぁっ」


力が抜けた。

悪くない気分だった。

全ての力が一瞬でふわっと抜けて、長い距離を走り終わった後に広い草原に倒れこんで壮大な青空を見ているような…


そんな気分だった。



「そう悪くはないな」









そして、私にはなかったものができた。

そのことに、今気づいた



















一人の兵隊は、静かに目を閉じた




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― 新着の感想 ―
[良い点] 兵隊を題材にした短編は思いついたことがなかったので、新たな発見でした。私にはなかなか書けないだろうなぁー [気になる点] 主人公の心にどんな光明が差し込んだのか、個人的に気になりました。 …
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