< 閑話>番外編 「新幹線アイス」「名古屋名物」
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カッポウ再録 SS 2本 <番外編>
本日二本更新です。
《新幹線アイス》
「たいへんです、服部さん、大ニュースが入ってきました!」
「なんだ?」
スマホを手にした朱音の手がフルフルと震えている。
「新幹線名物、スゴイカタイアイスの販売が停止になるそうです!」
「ふうん」
服部の反応に、朱音は不満そうに顔をゆがめる。
「どうして、そんなに普通でいられるんです? アイスが食べられなくなるんですよ?」
「……朱音、とりあえず、今日のニュースは、JR東日本の話だ。東北新幹線の車内販売の話で、まだ、東海道新幹線で廃止されるとは決まっていない」
「で、でも! 東日本さんが、そうしたら、ゆくゆくは東海さんも、そうなる可能性があるってことですよね?」
「……まあ、それはそうだが」
服部は頷く。昨今は、車内販売の売り上げが落ちているという。
どの会社も見直しということで、廃止の危険をはらんでいるのは事実だ。
「一応、新幹線ブランドのアイスは、駅の売店やスーパーで買える場所もあるんだが」
「でも、それ……固くないですよね?」
朱音は口を尖らせた。
「そこ、重要か?」
「重要です」
朱音はふるふると手を震わせた。
「新幹線アイスは、木のさじが折れるくらいだから、いいんです!」
「そういうものだろうか?」
服部は思わず首を傾げたのだった……。
《名古屋名物≫
「名古屋の駅弁といえば、ミソカツ弁当ですね」
「名古屋コーチンの鳥めし系も、定番だが」
ミソカツ弁当をうれしそうに頬張る朱音の横で、鳥めしを食べる服部。
味の染みたご飯も美味しい一品だ。
「ちょっと、小腹がすいたら、天むすもいいですよね」
パクリと、天むすに手を出す朱音。
天むすは、普通のおにぎりに比べて、小さいのが定番だ。一口サイズの小さな握りで、小ぶりのエビ天が入っているのが有名どころである。
「ところで、名古屋のグルメと言えば、なんですかね?」
「ひつまぶし、きしめん、味噌煮込み、味噌おでんあたりかな?」
首を傾げながら指を折る服部。昨今は、伝統的なもののほかに、新しい食文化もどんどん生まれていく。
「台湾ラーメン、あんかけスパ、餡トースト、手羽先なども、名古屋名物だといえるだろう」
「台湾ラーメン?」
「辛口のラーメンだ。台湾ラーメンと名がついているが、これは、名古屋発祥だ。中京圏では『台湾ラーメン』といって、広く愛されているが、台湾のラーメンではない」
唐辛子の辛さがあとひく美味しさで、ドバドバ汗をかくという名古屋のご当地ラーメンである。もともとが名古屋の中華料理屋のまかない料理だったらしい。
「甘味系お土産といえば、ういろう。『白黒抹茶小豆珈琲ゆず、さくら』と、名古屋人だと呪文のように種類を唱えられることでも有名だ」
実際に、ういろうメーカーは、いくつもあって、それぞれが印象的なCMを流している。外郎の他に、内郎というお菓子もあることを東海圏に住んでいると、刷り込まれたりするのだ。
「なごやん、納谷橋饅頭、大納言など、他にも甘味お土産は充実している。なお、名古屋というより、愛知県の名物となるが、『えびせん』系は、それらに比べて軽いので、持ち帰るという点では便利だな」
「えびせんって、結構高いですよね」
朱音に、服部は頷く。
「スナック菓子と違って、えびの含有量が多いから当然だ。香りが違う」
パリリとした歯ごたえ。口内に広がるエビの香り。せんべいといっても、高級品なのである。
「これは、余談だが、名古屋と言えば、エビフライを浮かべる人間は多い。しかし、名古屋人はエビは好きだが、エビフライが名物かと問われると、首を傾げることが多い」
「へー」
ミソカツ弁当を食べ終えた朱音は、いそいそとミソカツサンドのパッケージを開く。ミソカツ三昧である。
「……よく食うな」
「そのための、斎王の奥義です」
胸をはる朱音をみながら、服部は、斎王の役目とはいったいなんなのかという疑念を抱いたのであった。
本編は、次話になります。15時更新予定。
イラストは加純さまからいただきました。ありがとうございます!