VRログインゲーム
「また鯖が駄目になってるのか、ホント糞運営だな」
悪態を吐きながらゲームを再起動する。
俺の意識は眠る様に沈んで行き、ログイン画面へと進んで行く。
そして後1歩の所で目の前にエラーメッセージが表示され、俺の意識は現実世界へと戻って行く。
「もう少しでキャラ選択まで行けたのに……」
体を起こしヘッドセットを外す。
そして深呼吸をした後、ヘッドセットを手に取る。
……こんな軽い機械で五感投影型のゲームがプレイ出来る程に技術が進歩してもログインに悪戦苦闘するとはな。
自分が生まれる前から存在するクソが極まり過ぎた神ゲー『ログインゲーム』が未だに存在する事に苦笑しながら再度ゲームを起動する。
3回目、子供用プール並の浅い場所で引き戻された。
7回目、ログイン成功! そしてキャラを選んでいる途中に落ちた。
まぁでも調子良いし、これはすぐにプレイできるな!
13回目、あれからログイン画面にすら辿り着かなくなった。
16回目、なんとなく戻る時にポーズを取る様になった。
20回目、ログイン成功! キャラ選択成功!
満天の星空と魔法の明かりが灯るゲーム世界に来たぞ!
まぁ、指一本動かないんだが……あ、落ちた。
26回目、VRになる前のログインゲームは一々引き戻される事無くログインボタンを連打出来ていたと言う話を思い出した。
31回目、1回のログインに時間がかかる様になったのはログインゲーとして進化したのか退化したのか悩む。
33回目の前、息抜きに匿名掲示板を見る。
運営の批判と高度な情報戦、そしてオカルト全開のおまじないが交わり恐ろしい勢いで進んでいる。
48回目、何となく点けていたテレビを見るとアニメのAパートが終わっていた。
54回目、単調なリリース&キャッチ作業を楽しくするため、ハードメーカーとゲームメーカーが協力して何か作ってくれる事を願う。
62回目。
75いや76か?
89……。
「これで駄目なら今日は辞めよう」
たぶんこれで100回目だしな。
俺は大きく深呼吸した後、ゲームの電源を入れる。
意識は深く深く沈んで行き、ログイン画面に到達する。
祈りながらパスワードを入力し、OKボタンを押す……よし、成功だ。
複数のアバターが並ぶエントランスホールへたどり着く。
ボタン連打でメインキャラを選択すると、アバターと俺が重なり一体化する。
そのままゲーム世界へと転送され、獣人やエルフ達が集うファンタジーの街へと立つ。
祈る様に体を動す……よし、動いた。
「よっし!」
思わず声が出た。
「長かった……」
約100回に渡る戦いの果てにようやく掴んだ勝利だ、達成感が凄い。
このカタルシス、ほんとログインゲームって神だと思う。
謎の満足感に包まれながら歩きだそうとした時、世界が崩れた。
「……」
再度ゲームを起動しようとすると、目の前に1件のメッセージが表示される。
『緊急メンテナンスのお知らせ』
やっぱりログインゲーってクソだわ。