出会いと説明の一日目その八
「概念を切り取った...?」
「はい。私の異能は『付与』と『切り取る』というのが能力なんですの。付与する時は、武器に『空間を切り取る能力』を付与して、武器を持つ時は『切れるという概念』をその武器から切り取ります。簡単に言えばそんな感じですわね」
「じゃあ俺がテレビで見たことのある、敵の攻撃を無効化したのはどうやったんだ?」
「あぁあれですか。自分の持っていた剣を粉々に砕いて、重力という概念を切り取って自分の周りに散りばめ、敵の攻撃が粉々になった剣に触れた瞬間、その攻撃の...例えば銃弾なら飛ぶという概念を切り取って、攻撃を無効化していました」
何も言葉が出てこなくなる。切り取る...簡単には言うが、銃弾が散りばめた剣に触れたかどうかだなんて分かったとしても、銃弾が剣を弾き飛ばすよりも早く異能を発動させることなんて...
「普通に考えたら無理だが...まぁそれほどの実力のあるあんただから、出来るのか」
「でも、もちろん代償も払っています」
「代償?何を払っているんだ」
瞬間、悠花の顔色が一気に暗くなる。そんなに重い代償だったのか...聞いたことを後悔しながら、発言を取り消そうとする
「あ...すまない。そんなに重いもんだとは思わなか」
「お腹が空くんです...」
「......え?」
俺が言おうとした言葉を遮った悠花の言葉に、思考が停止する。お腹が...え?いま、お腹が空くって言ったのか?いやいや、そんな訳がない。あんなに、暗い顔してたのにその程度のはずが
「だから!お腹が空くんですってば!」
「......本当に?」
「はい...」
「じゃあなんで、さっきあんなに暗い顔を?」
「お腹が空くって結構大変なんですわよ!イメージを保つために、給食だってどか食いするわけにもいきませんし、かといって異能を使う授業があればお腹はすく一方ですし...」
「はぁ...大変なのはよくわかったが、その状態で使いすぎるとどうなるんだ?」
「栄養失調で倒れますが?」
「最強の剣だなんてよく言われたもんだな...」
「皆が勝手につけたものですわ。周りがなんと言おうと、異能は生まれつきなんだからしょうがないですわ!」
精一杯反論してくる悠花の姿はいつものように大人びた姿ではなく、子供のように見えた。ふふっと笑っていると「なに笑ってるんですの!」と怒られてしまい、その姿もまた子供のようで更に笑いがこみ上げてくる
「えーお知らせいたします。全グループの試合が終わったので、一年生は体育館にすぐにお集まりください。繰り返します・・・」
「ほら!終わったみたいですし行きますわよ!」
「はいはい。分かった分かった」