出会いと説明の一日目その七
「さて、引き分けだったわけだが...教えてくれるのかな?『切れない剣』さん?」
「そちらも教えてくださったら、こちらも教えますわ。『守れずの盾』さん」
「そのあだ名は止めてくれって言っただろ...まぁここで一緒に暮らしていくうえで、隠し事があったとしてもいつかバレるもんだし...いいぜ。なんでも聞いてきな」
「それじゃあ最初の質問なのですが...あなたは本当に守れずの盾なのですか?」
その二つ名に顔を歪め、俯きながらも答えようとする。守れずの盾...俺が中学校時代に付けられた二つ名。誰も守れない、守るのではなく傷つける...そんな意味が込められて付けられた二つ名だった
「あぁそうだ。俺が中学校時代に守れずの盾と呼ばれていた...まぁあんまり好きじゃないんだがな」
「理由は聞かないでおきましょう。二つ目ですが、あなたの能力の詳細を教えてください」
「能力の詳細...まず俺は体のいたるところから、さっき見せたようなぷよぷよした盾を出すことが出来る。それで、その盾を出したまま」
手から盾を出して、もう一つの能力を発動させる
「硬化っと。まぁこんな感じで、盾を固めることが出来る」
「そこまでは有名なので知っていますが...なぜ私の異能を無効化できたんですの?」
「俺の硬化された盾にはもう一つ能力があってだな、盾に触れた相手の異能を無効化出来るんだよ。だから、あんたの異能を無効化できたんだよ」
「だから切れなかったんですね...硬化すれば攻撃も出来て盾にもなる、能力だけを聞けば無敵ですわね」
「そんなことを言ったら、あんたの能力だって聞いただけなら無敵だろ?空間を切るほどの威力を物に付与する異能力者...だが、あんたの異能もそれだけじゃないんだろ?」
俯いていた顔を上げ、悠花の顔をじっと見つめる。刃を持っても一切、手に切れたあとがない。どんなに鍛え上げたとしても、支給された刀は真剣で、その刃を何も手に巻いていないのに持って手が切れない訳がない。それこそ...切れない剣と呼ばれるもの以外は
切れない剣、その異名を聞いたのは俺がバトルロワイヤルで優勝したすぐだった。テレビから流れてくる映像は、敵の攻撃をいくら受けてもダメージを負っておらず、銃で撃たれようとも打たれた銃弾が当たる前にその人物の前で銃弾が落ちていく...そんな映像だった。戦った異能力者なんて、顔すら覚えていない。だけど、その日テレビの前で見た光景だけは忘れることができなかった
その時はその人物が中学生だったということもあり、顔が放送されることはなかった。だが、俺はその人物を追うように、この高校を受けた。あの実力ならかならずここに来る...そんな風に追っていた人物が今、目の前にいるなんて今でも信じられない
「刀の切れるという概念を一部切り取ったのですわよ」