出会いと説明の一日目その二
「1ー2か。えーと場所は...」
バックからパンフレットを取り出し、教室の場所を確認する。場所は二階の中央廊下をまっすぐ行き、二つ目の角を曲がったところだということを確認して、パンフレットをバックにしまう。周りは、同じ中学校だった友達を見つけ、挨拶を交わしていた。ちょっとした悲しさを感じなが...いや、中学校時代にあまりいい思い出もなかったし、電車で寂しいと思ったのも多分気のせいだろう。教室に着くと、黒板に座席表が張り出されていた。場所は、窓側の前から二番目の席だった。ここまでは普通の学校生活をしているが、もちろんこの教室には普通の学校とは違う点がある。まず一つ目が、教室の隅全てに監視カメラがあるところだ。監視カメラは、教室だけではなく学校の至る所にあり、この学校で暴力でもふろうものならすぐさま警察行きだ。二つ目は、リーガルソーディアンのマークが描かれた御札が壁に貼ってあるところだ。これが貼ってある場所では異能が使えなくなる。なので、異能による実践訓練は御札の貼っていない体育館や校庭などでしか行えない。とりあえずは席に着き、指示を待っていると時計の隣のスピーカーから声が流れ始める
「えー、一年生全員にお知らせいたします。このあとすぐに、学校説明を兼ねた朝会を開始いたしますのでクラスにまだ着いていない生徒も、すぐに体育館に向かってきてください。繰り返します...」
席を立ち、体育館まで歩いて行く。この道程が中々に遠く、距離にして200メートルほどはあるんじゃないかと思うほど遠い。そんな長い道のりを歩き、バスケットコートが五面分ほどある体育館に着く
「よし。着いたやつからクラス別に三列で並んでいけ」
ステージの上で喋っているのは、髪はきっちりと整えられ、メガネをかけた茶髪の先生だった。言われた通りに並び、少しの間待っていると完全に人の流れが止まる
「よし、五百名全員揃ったな。それでは、一年生の皆おはよう。学校説明の担当兼1-2の担任の遠坂だ、よろしく。さて、この中にはもうこれから何をするか知っている者も居ると思うが、これからチームを作ってもらう。一時的なものではなく、これから四年間一生パートナーとなるものたちをだ。もちろん、チームメンバーが二人だけという規制は無いので大人数で作ってもいいぞ。それじゃあ五分間で作ってくれ」
周りがざわざわし始める。友達を探し出す人や、周りの生徒を誘う人、そして俺を含めた...この状況についていけない者。いきなり、チームを作れと言われてもこの学校に顔見知りはいないし、すぐに仲良く慣れるようなコミュ力も持ち合わせていない。周りを見渡しているうちに、後ろからちょっとした声が聞こえる
「おいおい、聞いたか?あそこの一之瀬悠花とかいうやつ、私と組む条件は戦略百点、異能で八十点を取るような人だけだってよ」
「そんなやついるわけねぇのにな。ほっとこうぜ、『最強の剣』なんて言われて天狗になってるんだろ」
陰口...条件を提示しただけでこれか...自分たちが満たせないからって、他をおかしいやつ呼ばわりする。だから、学校は嫌いなんだ。俺は、陰口を言っていた奴らを睨んでから一之瀬悠花の元に向かっていった
「あなたは...朝の」
「あんた、ぶつかった時ニャイカ落としたぜ。これ、あんたのだろ」
「ありがとう...でも、用がそれだけなら早く去ったほうがいいわよ。あなたも周りから何を言われるか分かったもんじゃな」
「俺をあんたのチームに入れてくれ」
一之瀬悠花の言葉を遮るようにして言う
「あなた...私の条件をクリアしていてそれを言っているの?」
「戦略はもちろん百点、異能はギリギリだが八十点を取っている」
「条件はクリア...でも、私なんかと組んでいたら周りから何言われるかわからないわよ」
「あんたは...周りの目を気にして生きてきたのか?」
一之瀬悠花は、少し驚いたようで目を丸くする。そして、すぐに口元が緩んでいった
「あなた面白いわ...私は一之瀬悠花、気軽に悠花とでも呼んでちょうだい。戦略は百点、異能も百点を取っているわ。えーと...あなたの名前は?」
「俺は、藤宮凛太郎。呼び方は、リンだったりフジなんて呼ばれてたりした。さっきも言った通り、戦略は俺も百点、異能は八十点だ。これからよろしく」
「じゃあリンと呼ばせてもらうことにするわ。こちらこそよろしくリン」
ちょうど、チームが決まったところで遠坂先生が合図としてホイッスルをピー!と鳴らす
「五分経ったぞ。決まってないやつは...いないみたいだな。それじゃあこれから、そのチームメンバー同士で戦ってもらう」