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島津

 1559年2月3日。長宗我部家は島津との連合を形成するために、香宗我部親泰が外交団を率いて島津家・内城へと登城していた。

「して、親泰殿は島津へ一体どんな用件で?」

 当主・島津貴久は、どうやら四国4国と近畿6国を合わせて、計10か国を支配する長宗我部家の来訪を訝しんでいた。

「そうですね。単刀直入に申し上げますと、長宗我部と同盟を締結していただきたいのです」

「長宗我部殿が本気を出せば、こんな薩摩一国を治めているに過ぎない島津家など一捻りであろう」

 日本を探しても島津ほどの強さを誇る武士団は存在しないだろう。そんな武士団を統制する貴久の言葉を、親泰は皮肉と捉えていた。

「仮にそうであれども、我が家は無駄な被害は好みませぬ。島津様の配下は兵士に至るまで精強。このような家を争うのは得策にございませぬ」

「つまり、我々は畿内の一部を長年統治していた三好家よりも強いと? こんな小国を統治するに過ぎない我々が?」

「左様でございます。ですから、何卒同盟を締結していただきたいのです」

「なるほど。それで、真の目的は何だ」

 先程までの空気とは一転して、場の空気が張り詰めたのを親泰は肌で感じ取る。

「どうやら、早々上手くはいきませんか。いいでしょう。外交とは腹を割って話すもの。目的を話しましょう」

 ここで親泰は一呼吸入れる。そして語る。ここに来た目的を。

「長宗我部家としては島津家の強大な軍事力が欲しいのです。島津家武士団は精強。それに当主への忠義は揺るぎないものです。我々はそんな島津家を味方に引き入れ、日ノ本に安寧を取り戻したいのです」

「ハッハッハッハッハ!」

 これに貴久は大笑い。しかし、すぐに切り替えて鋭い眼光で親泰を見る。

「その申し出、お受けしよう。ところで一つ聞くが、同盟を結ぶだけでよいのか?」

 どうやら貴久は気づいていたらしい。これとは別に目的があることに。

「島津家とは軍事・内政・外政を統合したいのです。そうすることによって、両家は一糸乱れぬ行動が可能になり、両家の間の力の差をなくす。そうすればどちらかの立場が上になるという事もなくなります」

 これには家臣団は反発した。

「それでは長宗我部が我らの領地を乗っ取ることも可能ではないか!」

「我らの領地を衰退させ、機を見計らって我らを滅ぼすことも可能!」

 などとヤジが飛んでくる。

「島津の領地を衰退させ、島津家を滅ぼすことは長宗我部においては不利益でしかない! そんな損失の大きい事を、条約に反する事を誰がするか! その時には短刀一本さえあれば十分!」

 親泰は騒ぐ家臣団の言う事を否定した。それに脅迫じみた言葉も添えた。

 家臣団は親泰の言わんとすることを理解した。もし、長宗我部が島津を滅ぼせば腹を切る。親泰はそう言っているのだ。

「その言葉、二言はないな?」

「勿論にございます」

 貴久の言葉に、親泰は即座に返答した。

「ならばその申し出もお受けしよう。今後は長宗我部領のみならず、島津の領国の発展の事も頼む。内政は得意であろう」

 貴久がこれを受けたことに、家臣団は安易な考え方であると諫めようとする。

「しかし……」

「よい。島津家が、民が笑って暮らせる領国になるのであれば文句はない」

「では、最後にもう一つ。大隅と日向の事ですが、我々は手を出さないので島津の好きにしてください。肝付や伊東を追い出すのも自由です」

「相、分かった。親泰殿の心遣いに感謝する」

「では自分はこれにて。すぐに別のところで出向かなければなりませぬ故」

 そして、親泰は内城を後にする。

 その後、親泰は島津家南方の洋上に待機していた船に乗り込み、2千の兵とともに琉球を襲撃して占領した。琉球にあった城は首里城を除いてその後破壊され、琉球国の統治には宗珊を派遣した。


 長宗我部家は2月10日に島津家とは内城にて条約への署名が行い、正式に連合とも言うべき同盟を締結した。

 その2か月後には、長宗我部の支援を受けた島津家が大隅と日向を奪還した。これによって長宗我部家と島津家を合わせて14か国を有することとなった。

えへ、えへえへ。へへへっ(台湾を見ながら)

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