最終話 魔王城編弐
7つの独立していた《魔界》。どうして7つの《魔界》が1つとなって《罪双域魔界》へとなったのかは分からないが、今重要なのはそこではない。
この《罪双域魔界》が――――7つの異なる《魔界》が1つとなって生み出されたこと。
7つの《魔界》がそれぞれお互いに干渉し合っている。
そして、7つの《魔界》の全く違う魔力がお互いに滅ぼそうとしているのである。
「1年後、確実にこの魔力が干渉し合ってこの世界は爆発してしまう。
――――だから俺はこの世界の崩壊を止めるために、この7つの《魔界》の魔力を順応させないといけないのだから」
俺はニコリと笑うと、2人は何故か戸惑っていた。なので、俺は話を続ける。
「俺の持っているスキルは『無限に吸収する悪魔』、『模倣する盗賊』、『吐故納新』の3つ。この3つのスキルを使えば、この問題は解決できる」
この世界の爆発の原因は、それぞれの《魔界》の魔力が全く別のもの――――それぞれの魔力が干渉し合って、爆発しそうになっている。けれどもこの3つのスキルを使えば、それは解決できる。
まず自分の身体が崩壊しない程度に『無限に吸収する悪魔』で吸収。その後、『模倣する盗賊』で魔力を再構成して、『吐故納新』で放つ。それを繰り返して、《罪双域魔界》を再調整する。
「《魔界》にある魔力の量は大量だが、その量は大幅に増えている訳ではない。まだ俺のスキルでは魔力をそこまで吸収できないだろうが、何年も使い続ければスキル自体も成長して効率は上がるはずだよ」
「で、でも……7つの《魔界》の全ての魔力を再調整するって、時間がかかると思うんだこん」
そうだなぁ……確かに途方もない時間がかかるだろうなぁ。
この羅明日魔境で一度どれだけの魔力があるのか吸い取って調べてみたけど……あの量から察するに……。
「100年程度では無理、けれども10万年も時間があれば大丈夫だろう」
そう、この魔城が崩壊するか否かの時間もあれば十分だろう。
うん、それだけあれば良いだろうなぁ。
「……つまり、クロスさん。あなたはこの《魔界》のために、1人で何万年も魔力の再調整をすると? そんな途方もないこと、出来ると思っているんですか?」
「うーん、普通の精神なら無理だろうね。
けれども、そのシミュレーションは既にしている」
そう、ゲーム。
この世界がゲームだと、今からするのはちょっと長いプロローグか、ロード時間だと思えば耐えられる。現実ならば耐えられない、けれども現実じゃないただの夢や幻だと思えばいくらか気持ちは楽である。
まぁ、そのためにこの7つの魔境を巡る際中、ずーっとこれがゲームだと思っていた。そして、それは成功した。
俺はこの世界を、ゲームだと思い込む事に成功した。
10万年は長い。
だが、1人用プレイのゲームもあるし、妄想でゲームをする事だって可能だろう。
ただし、それには条件もある。そう、これから俺はこの《魔界》をより良い形にするためという目的からず――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――っと、魔力を吸い出しては、それを再調整すると言う行為をし続けなければならない。それだけの話だ。
2人は自分達も手伝うと言ってくれたが、それは不可能な話だ。
まずマキユス・スカーレットのスキルは、魔力を糸にするスキル。《魔界》の魔力を糸にする事が出来たとして、それがどうなる? 絡まないように編み上げたとしても、お互いに干渉し合う魔力が存在すると言う事実には変わりはない。
妃紅葉には……正直、期待していた。彼女の切り札である、『価値ある世界線の妃紅葉』でこれを解決するスキルによってこの魔力を解消出来る手がかりがあるんじゃないかと。それでも命を10個消費しても、《魔界》の魔力を解消するには俺と同じか、それ以上の時間をかけるしか方法がないという事らしい。冨羅射土魔境の時にさり気なく聞いてみたのだが、流石に無理らしい。まぁ、《魔界》7つが1つとなったという問題を解消する為に、命10個では軽すぎるという事だろうか?
「……と言う訳で、俺がやるしかないって事。
仕方ないですよね。だって《魔界》の王として君臨して、支配者として問題を解決する者――――それが《魔王》なんですから」
俺は《魔王》として再調整する為に、ほかの人達に干渉されないように《魔界》の奥深く、深淵地域へと沈んで行った。深淵地域――――俺が再調整する場所はマキユスによって、再調整が終わるまでは開かない、誰も侵入されない場所にして貰った。
《魔界》の魔力再調整はけっこう集中しなければならなくて、なにかの片手間で出来る仕事ではない。妄想するくらいしか自由がない、そんな作業なのだから。
この深淵地域は、《魔界》の再調整が終わるまでは出られない。たとえこれを閉じたマキユスであろうとも、何もかもを開ける道を見出した未来の妃紅葉だとしても、俺も魔力の再調整が終わるまでは出られないという場所である。
俺は覚悟を決めて深淵地域へと入っていき――――
その後、《罪双域魔界》から再び《魔王》は消えた。
しかし、今度は今までとは違っていた。なにせ《罪双域魔界》の《魔王》の欄には、しっかりと1人の名前が消されないように刻まれていたのだから。
私にとって王とは、「君臨しつつ、その行く末を気にかける者」という形であったために今回のような結末が一番良いのかなと思って、「《魔界》の崩壊を止めるために、1人永久に近い行為を行う」という結末になりました。
……えっ? バットエンディング? いやいや、《魔王》なんだもん。《魔界》のため、骨身を惜しまず頑張ってね☆
……もう少しだけ続きます。明日の0時は一気に3話更新です。