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弐拾伍話 魔王城編壱

 羅明日魔境のキングマグマスライム。

 守牢主魔境のゴルドデニシュ。

 螺子都魔境の妃紅葉。

 蔵賭弐位魔境のライブラ。

 閻毘遺魔境のナナミ・ブスジマ。

 繰異怒魔境のトレジャドラン。

 冨羅射土魔境の7人の支配者――――《剣王》ブレイディット、《槍王》イテアラス、《弓王》アタルッテ、《騎王》バスカビ・イルク、《狂王》ストレンジ、《魔術王》アイヘブン、《殺王》ムミョウ。


 《罪双域魔界》を構成する7つの魔境。その7つ全ての魔境から俺、クロス・ヤナカはその全ての魔境の支配者達から《魔王》としての承認を得た。

 俺は《魔王》として活動する為に、1京2858兆519億6763万3865個のスキルを持つライブラに頼み、羅明日魔境に特製の魔王城を作って貰った。元々、羅明日魔境はごみ処理場のような役目を果たしていた魔境だけあって、ごみや遺体など材料には困らなかった。ライブラの1京以上あるスキルのうちの1つ、《魔城作成》というスキルを使っていただき、廃材を寄せ集めて魔王城を作って貰った。

 洋風で格式高そうな中世の城。廃材を寄せ集めたせいなのか、黒を基調としながらも城のあちこちがひび割れていたり、色が変だったりとところどころ気になるところはあるが、《魔城作成》というスキルは魔力によって城へと形作るスキル。見かけはどうこうだが、その耐久性は優れている。少なくとも10万年以上持つと保障されている。


「これがクロス様の居城ですこん? なんか……少しボロっちい気もするこんが……これでいいこん?」


「あぁ、これで良いんだ」


 10万年以上の保証……それだけ保障されていれば十分だ。それだけがっしりとした城ならば、十分目的も達成出来るだろう。


「……で、今から《魔王》としてどんなことをするつもりなんですか?」


 マキユスはそう言って来る。いつもと同じではなくて眼鏡をかけており、ペラペラと書類に目を通している。


「この《罪双域魔界》は問題ばかりの《魔界》です。ほとんど魔物が居ない羅明日魔境を除いて、6つの魔境それぞれに20を越える問題点が既に上がっています。どれから対処するのかが気になる所ではありますが、とりあえずこの魔王城を拠点として閻毘遺魔境から対処しましょう。

 今の支配者ナナミ・ブスジマさんが敗けてから、魔境の管理が疎かになっているみたいで。それなので、この魔境からどうにか対処していきましょう。さし当たっては連絡網と、そして毒植物かどうかを見極める本の作成を――――」


「あぁ、その事なんだけどな――――後は皆で対処しといてよ」


「「えっ……?」」


 俺としてはあっさりと言ったつもりだったんだけれども、2人は何故かキョトンとした顔で見ていた。う~んと、俺は緊張をほぐすために背筋を伸ばす。


「俺がこの羅明日魔境に城を作って貰ったのは、ここが俺のスタート地点であり、ここがこの魔境で一番淀んでいる(・・・・・)場所なのだから」


「……淀んでいる?」


 そう、ここは俺がこの《罪双域魔界》で最初に降り立った場所。


「俺のスキルについては……2人とも知ってるよな。俺のスキルは、対象から魔力などの力を吸い上げる能力。そして、俺がキングマグマスライムと戦う前に吸い上げたのが、ここ(・・)


 と、俺は足でとんとんと床を叩きつける。妃紅葉はキョトンとしていたが、マキユスはすぐさま理解したようだ。


「……まさか。その対象って、《罪双域魔界(・・・・・)そのもの(・・・・)?」


「あぁ、そうだよ」


 このスキルは俺が尊敬するとあるゲームキャラクターからインスパイアして選んだのだが、厳密に全てが一緒という訳ではない。俺は口を大きく開けて中へと放り込むのではなく、ものを通して対象から力の根源たるものを吸い取る。故に、俺は《魔界》から魔力を吸い上げると言う荒技を使った訳だ。



「元人間の身体に、《魔界》のエネルギーを通すんだ。どんなリスクがあるかはゾクゾクしたんだが、その最中に色々と知れたよ。この《魔界》に住まう者達のささやかなる情報や、この《魔界》の異変について」



「…異変?」


 そう、これを異変と呼んでいいのか、それともあるべくして起きた事と言って良いのかは分からない。しかし、先程マキユスが言っていた問題なんかよりもずっと深刻で、なにより《魔王の神》枢木エヴァンジェリンが何故この《罪双域魔界》に《魔王》という支配者を作りたがっていたのかが分かった。


「この《罪双域魔界》は7つの《魔界》――――《羅明日魔界》、《守牢主魔界》、《螺子都魔界》、《蔵賭弐位魔界》、《閻毘遺魔界》、《繰異怒魔界》、《冨羅射土魔界》の7つが複雑に、分離不可能なほどに結びついて生まれた混合魔界。故にその7つの《魔界》それぞれのエネルギーもまた、複雑に絡み合っている。そして、暴走している。

 正常な人間の身体に、いくつもの人間の血液を流し込んだ時のように。互いに互いを拒絶反応を起こしつつ、同化しようとして、この《魔界》のエネルギーは暴走状態にある」


 そう、そしてここからが重要なところなのだ。



「この《魔界》は、このままだと後1年後に爆発して消滅する」

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