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弐拾壱話 繰異怒魔境編惨

 下剋上、力が至上主義の悪魔達が住まう《魔界》では良くある事である。長年《魔王》として君臨していた者が自然に生まれた魔物によって倒されてその地位を失ったりと、力の差によってはその地位を追われるというのも少なくはない。今、突如として俺達の前に現れたカイトドランもまた、そういった力によう下剋上を狙っている者らしい。

 違うのは闇討ちなどして倒しても文句を言われないところをわざわざその姿をさらして、さらには一騎打ちの決闘と言う形で戦おうとしているのは、正直なところ悪魔としては不自然ではある。


「さぁ、クロス・ヤナカよ! さっさと《魔王》の座を賭けて、一騎打ちしようじゃないか!」


 「さぁ!」という単語を連呼して、連発して、カイトドランは一騎打ちを急かしていた。俺はどうしようかと思っていると、マキユスは受けて置くべきだと進言していた。


「これから先、《魔王》になったらこのようにその座を賭けて戦おうとする者も出て来るでしょう。何故、今まで《罪双域魔界》の《魔王》が居ないかは分かりませんが、それでも《魔王》が生まれてから初めてその地位を狙う略奪者が出て来るのかもしれません。

 それならば今この場でカイトドランを倒して、その強さを公式に見せつけるべきです。今までなんだかんだで、クロスさんは支配者同士としか戦っていませんし、その強さを知らない人の方が多いかと」


「そうこん! 妾、クロス様の強さ、見てみたいこん!

 その強さ、《魔界》中に知らしめて欲しいんだこん! 妾、その強さに、そこに痺れるぅ憧れるぅな所を見させて欲しいんだこん!」


 マキユスは《魔王》になるんだったらここいらでカイトドランを倒して他の悪魔達にその力を見せるべきだと、妃紅葉は良い所を見せて欲しいと懇願していた。ここで断るのも可笑しいなと思いながら、俺はとりあえずカイトドランとの一騎打ちに乗る事にした。断る事もないし、ここいらで強さを見せつけるのも良いかも知れないと思ったからである。


「……良いでしょう。ところで本当に一騎打ち、なんですよね?」


 これは人間同士の、正義とかに準じた正々堂々としたルールに準じた戦いではない。

 悪魔の、裏切りと非道的行為が日常茶飯事の彼らにとって、一対一の一騎打ちが本当かどうかは聞いておかなければならないだろう。そこを一番気にしていたのだが、意外にもカイトドランはすぐさま一騎打ちである事を認めていた。


「このカイトドランの収集物に賭けて、一騎打ちである事を誓う所存なりですよぉ!」


「カイトドランの収集物……?」


「ドラゴン系の悪魔は、自らの収集物に関しては嘘偽りを持たない。いや、偽れない種族。故に、そんな収集物に誓うという行為は絶対の信頼を持って保証するという意味を示します。

 この戦い、もし仮に他者からの妨害や支援があった場合、問答無用で戦闘自体を無効、もしくは反則行為として敗北する所存!」


 強く言い切るカイトドランに、俺を初め、マキユスや妃紅葉もキョトンとしてしまう。けれども俺としてはそこまで言ってくれるのならば、素直に反対する事も出来ないので、了承した。


「よろしい! ではこれより正々堂々と、《罪双域魔界》の《魔王》の座を賭けた一騎打ちを開始する!」


 正確にはその称号をまだ俺は手に入れてないのだが、そんな指摘もしないまま繰異怒魔境での一騎打ちは始まった。あれだけ正々堂々にこだわっていたカイトドランは真っ向から向かうと思いきや、いきなり俺から距離を取る。


「ファトトト……クロス・ヤナカ。お前の能力は3つ、それはそこのマキユス・スカーレットとの会話で知っている。そして貴様の能力を、我は一度目撃している」


 「そこから得た結論だが――――」と、なんだかもったいぶった言い方をして、その手にまっさらな水色の球を掌の上に作り出していた。


「クロス・ヤナカ、お前の3つの能力。それはこのまっさらな水の球、みたいな能力なんじゃないかな?」


 それに対して俺は何一言、口にはしなかった。なにせ、それが事実(・・・・・)なのだから。


「このまっさらな水色の球、これは純粋に魔力のみで作り出した魔力による球体。これ自体には火炎のような燃やす力も、雷撃のような痺れる力も、なにもない。ただそれらに変わる前の素材、それが正しい表現なのかもしれない。たとえばこれに火の魔力を加えると――――」


 カイトドランの手の上の水の球が、赤色に染まっていた。赤色に染まった球は、球の中で火が揺らめいていた。


「――――このように火の球になる。しかし、ここから火の属性分の魔力を抜くと、再び純粋な魔力のみの球体となる。その応用として雷、氷、毒といったように属性を含める魔力を込めるとこうなる」


 と、元の水色に染まり直した球が雷を放つ黄色、凍りつく球体、熔ける紫色へと変わっていた。そしてそれを空中で霧散させていた。


「――――お前の能力、それはこの純粋な水色の球みたいなものなのでしょう?

 外からのものを身体の中へと取り込み、それを反映させる能力。コピー能力と言って良いのかどうか分からないが、相手の技を取り込む事で効果を発揮するのがお前の能力なのだろう?」


 ドヤァ、と言いきったカイトドランの言葉。それに対して俺は「合ってるよ」と肯定する。



「正確にはその魔力を放出するのも含めてが、俺が神から貰った3つのスキルだ。

 能力を吸収、その能力を使用する、そして捨てる――――ゲーマーで悪魔と言えば、桃色の悪魔のことだろう?」

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