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拾質話 閻毘遺魔境編肆

 私と妃紅葉の前に現れた、奇妙な鉄仮面を付けた女。目鼻を覆い隠す奇異な鉄で出来た仮面を付けており、両腕は蛇を思わせる鱗の腕。鉄の鎧で胴を守り、蛇を思わせる、うねるような尻尾が特徴の彼女は、木にぶつかって伸びているリハシを見て、「情けない」と頭を悩ませていた。


「仮にもわたしと同じ、閻毘遺三大王の名を拝命してるからにはそれにふさわしい活躍と言うものを見せて欲しいものです。身体能力に特化しているからこそ選ばれたあなたが、一撃で伸されていては意味がありません」


 と、リハシを蛇の尻尾でペチッと一回叩くと、今度はこちらへと視線を向ける。


「……で、どちらがリハシを倒したの?」


「妾だこん」


 鋭い切り返しの言葉に対し、妃紅葉は真剣な口調で答える。それに対して鉄仮面を付けた女は「あなたが……?」とどこか疑いの眼差しを向けていた。


「とりあえず、先に自己紹介をさせていただきましょうか。

 閻毘遺三大王が1人、猛毒と魔法戦術の使い手、『猛毒機械クバイ』」


「妾は羅子都魔境の支配者にして《魔王》様の未来の妃、妃紅葉だこん! お前が三大王の最後の1人、ですこんね。イムスは先程会いましたし、リハシは今そこで伸びていますから」


「正確には最後の1人ではなく、ただ単純に最後に会っただけですが、まぁその通りかも知れませんね。

 ――――さて、私の目的は2人の始末です」


 そう言い、クバイは両腕に猛毒を思わせる紫の弾を作り上げる。穏やかではない気配に私も出ていこうとするが、妃紅葉に止められてしまう。


「……これは妾の闘いだこん。それにこの程度の相手に負けるようでは、《魔王》様のお妃には相応しくない、役不足だこん」


「それなら任せますか……」


 妃紅葉の言葉を受けて、私は安心したのですがそれに腹を立てたのは、それを言われたクバイであった。


「……この程度の相手、とは酷い事を言ってくれますね。これでもこの閻毘遺魔境においては三大王の地位を受け預かった者。そう簡単に倒せるほど楽なものではないですよ? それなのにそこまで過小評価したんです、楽に死なせてあげると思わないでくださいよ?」


 クバイは両手で作っていた紫の弾2つを両の手を合わせて紫の猛毒の剣を作り上げる。


「猛毒魔術、感染せし刃スタッカート・デス・ギフトズ!」


 クバイは猛毒で作り上げた剣を妃紅葉へと放つと、それは高速でこちらへと向かって来る。それに対して妃紅葉は自分陣に魔術で火炎を纏わせる。猛毒は火炎によって熱消毒され、猛毒の刃はドロドロに解けていた。


「猛毒を増えぐのに自分の身体に火を点けるだなんて、正気の沙汰ではないと思います。それなのに何故、火炎で自分を焼くなんてまともじゃないですね」


「妾は気が触れている訳でも、おかしくなったという事でもありません。

 これが一番確実だったからした、ただそれだけの事です」


 命をストックできており、命がある限り何度でも復活できる妃紅葉。そんな彼女からして見れば、全部を覆いきれるかどうか分からない炎の壁を作り上げるよりかは、自分に炎の膜を張る方がはるかに楽なのだろう。


「――――ただ残念な事に、私の毒はあなたの炎では滅せられなかったようですね」


 キケケケ、とクバイは不気味な声で笑っていた。クバイの言葉の言う通り、炎の膜で守っていたはずの妃紅葉の腕がクバイの猛毒に侵されていた。それを見て、妃紅葉は慌てて魔術で水を用いて、毒を洗い流そうとするも猛毒は妃紅葉の腕へとしみこんで行く。

 猛毒は妃紅葉の身体全身へと回り、そして妃紅葉の身体が消える。消えて、どこからか現れた緑の土管から復活した妃紅葉は自身の命のストックが《97》と1つ減ってる事を確認して、クバイの方を見ていた。


「おかしいこん。普通の毒なら、なんでも滅せる炎の膜によって燃え尽きていたはずこん。それなのに何故……」


「キケケケッ! それよりも妃紅葉さん、あなたが復活していることに私は驚いているんですけれどもね。

 まっ、簡単に言えばこれこそが私の魔術特性、【浸食】なのですよ。どんなに防ごうとも、確実に相手の元へと向かって侵入して侵食する、回避不可にして防御不能の魔術を与える――――それが私の魔術特性」


 魔術特性。

 それはその人の魔術がどのような方向になっているのかという、1つの魔術の進行方向のことである。たとえば同じ魔術を使おうとも、魔力が大きい人ならば大きいものが生成されやすく、魔術を生み出す際の穴が小さければ針のような鋭く尖った形に生成される。そういった、その人が魔術を使った際に現れる魔術の特性の事を、『魔術特性』という。

 人によっては欠陥と見なされ、あるいは長所と称されるのだが、クバイの魔術特性である【浸食】は彼女の戦闘スタイルに合っていた。


 猛毒。当たれば確実に相手を滅せるだけの毒を、絶対不可避で回避不能の攻撃として発動する。

 確かに『この程度の相手』と称するには、少々彼女は強すぎるのかもしれない。


「理解出来ましたか? 私の強さというものが。

 そして、もう1つ残念な事を言っておきましょう。実は我らが主、ナナミ・ブスジマ様も私と同じ【浸食】という魔術特性を持っており、なおかつ魔物の命を1つ滅ぼす程度の毒しか持っていない私とは違い、ナナミ様の猛毒は魂そのものに汚染して感染して滅する。


 分かりますか? あなた方が慕うクロス・ヤナカがどんな能力を持っていようと、我らが主には勝てないんですよ」

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