表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/29

拾陸話 閻毘遺魔境編惨

 閻毘遺魔境の支配者であるナナミ・ブスジマの配下、『猛毒機械クバイ』によってクロス・ヤナカ魔王候補が誘拐されてしまった一方で――――取り残された私、マキユス・スカーレットと妃紅葉の2人。

 《魔王》として導くべきクロスが居なくなっても、私は冷静だった。それは初めからこの閻毘遺魔境の主であるナナミの性格を知っていたからある程度予想していたのもあるのだが、もう1人の同行者である妃紅葉が酷く慌てていたからもある。


「あわわっ! どど、どうしようこん! クロス様、死んでないこんよね? もし死んでたとしても、クロス様は妾のように命の予備(ストック)がないから生き返れないこんし……い、いい、いそいでクロス様を探さなくちゃいけないこんよ!」


 実際に慌てた時、「あわわっ」という擬音語を口にする者を初めて目にする私。私自身もクロスが連れて行かれた事で多少は動揺していたのだが、周りにここまで慌てふためいている者が居れば逆に冷静に物事を考えられる。それは人間も、魔物も一緒らしい。

 と言うよりも、私よりかは妃紅葉の方がこの魔境の支配者である彼女――――ナナミ・ブスジマのことを知っているはずなので、何故ここまで動揺するのが可笑しいという見方なのだが。


「……いつの間にか、『泳ぎのイムス』も消えてますね」


 本当に大事な所しか隠していない水着(ブーメランパンツ)と鍛え上げられた肉体を見せつける変質者。この閻毘遺魔境の事実上の実権を貸し与えられている閻毘遺三大王の1人、『泳ぎのイムス』。

 マキユス達の前に現れた変質者(イムス)は、どうやら私と妃紅葉の視線を自身に引きつけるのが役目だったみたいである。その間に他の者……恐らくは他の閻毘遺三大王である『猛毒機械クバイ』と『超人リハシ』のどちらかがそっと、クロスをナナミの元へと送ったのだろう。


 恐らくではあるが、本当は誘拐ではなく、クロスがナナミの部下について行った、というのが正しい認識じゃないかと思っている。

 思えば私は、これまでクロスと共に旅をして来たが、彼の言動はどこか真剣みが感じられなかった。別に手を抜いていることではなく、どこか現実を見ている感覚がないのだ。


 "まるでゲームでも見ているかのようである"。


 クロスの事を説明しようと思うと、それが一番的確である。戦闘に対して過信している訳でもなく、単純にそう考えているかのように、なにに対してもそれがゲーム上の出来事のように、どこか危うさを感じる。

 悪魔としてはその危うさは本当に魅力的だったのだけれども、配下としてはこのように面白そうだからといって敵についていってしまうのには気をつけて欲しいものである。


 そんな事を考えていると、「キャロキャロキャロ……」と変な笑い声と共に足が異様に長い女が現れる。上半身は黒のゴスロリドレスを着た普通の体格、しかし足は胴体の2倍以上はあろうかという、足長の女。

 彼女の足の膝には黒いサポーターを着けており、腕には巨大な赤のグローブを取り付けていた。


「キャロキャロキャロ……どうやらクバイはきちんと義務を果たしたみたいキョロロロン」


「……あなた、もしや閻毘遺三大王の1人である『超人リハシ』、ですか?」


 私がそう尋ねると、彼女は両腕のグローブをぶつけてガシリガシリッと感触を確かめる。そしてニヤリと笑っていた。


「キャロキャロキャロ……その通り。ぼく様こそが、閻毘遺魔境を統括する三大王の1人、『超人リハシ』! 《魔界》の七武道――――魔剣道、魔拳道、魔槍道、魔銃道、魔牙道、魔潜道、そしてその全てを越える超魔道の七武道を全て会得した体術の天才にして神童のこのぶぎゃらべちゃぶちゃ!」


 剣を用いる、魔剣道。

 拳や蹴りを用いる、魔拳道。

 銃を用いる、魔銃道。

 牙など先天性の肉体的特徴を用いる、魔牙道。

 他人の隙を用いる、魔潜道。

 そしてそれら6つの武道を用いる、超魔道。


 そんな7つの《魔界》七武道を制したと自慢する『超人リハシ』は、妃紅葉が作り出した炎の弾に吹っ飛ばされて紫の毒の樹にぶつかって、ガクッと気絶する。

 そんな豪語してた癖に、一発の炎の弾で気絶しているリハシを見て私はクスリと笑うも、すぐに妃紅葉を見ていた。


「……あんなに楽しそうに自身の能力を言っていたんですから、少なくとも聞いてあげて良かったんじゃないですか? 妃さん?」


「ムカついたこん。後悔は何一つしてないこん。それに、リハシとかいうあの女はこんな敵の真ん前で自身の演説を始めていたこん。隙だらけなら攻撃して当然だ、こん」


 確かに、妃紅葉の言う通りである。

 《魔界》七武道は1つでも極めて超奥儀を発動すれば、《魔界》を破壊出来るとまでされている超絶強力な武術道。そんな《魔界》七武道を全て極めたのが本当だとすれば、まったくもって厄介である。


「……で、あいつに関してはどうしますこん?

 もしよければ、譲って欲しいこんが」


 と、妃紅葉が指差す先には、奇妙な鉄の仮面を付けた女が立っていた。

・リハシ/超人リハシ

…閻毘遺三大王の1体。長足系大鬼族。

 ブスジマ・ナナミ直属の部下であり、『超人リハシ』とも呼ばれている。魔剣道、魔拳道、魔槍道、魔銃道、魔牙道、魔潜道、そしてその全てを越える超魔道の七武道を全て会得した体術の天才にして神童。体技全てに秀でており、長い脚から出される攻めは美麗さと共に破壊力も抜群である。ただし魔法系統に関してはゴブリンやスライム並みの防御力しかのこのぶぎゃらべちゃぶちゃ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ