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拾伍話 閻毘遺魔境編弐

「良く来てくれたわね、夜中黒須! あんたの事は歓迎しないけど、閻毘遺魔境へようこそですわぁ!

 あーしの名前はナナミ・ブスジマ! 唐突だけど、あーしが支配する閻毘遺魔境であんたらのボーケンはここで終わりだわぁ! シャー、ヘビビビビ!」


 と、ナナミ・ブスジマと名乗ったこの魔境の主は高らかに笑い上げる。

 下半身は紫色の蛇、上半身は黒のワンピースを着た少し大きく突き出した胸が大人びた容姿となっている彼女は口元に手を添えて笑っていた。そんな彼女は蛇の身体を大きく伸ばして、俺の身体へとくるくると伸ばしていた。


「シャー、ヘビビビビ! あんたのようなのがなんで《罪双域魔界》の《魔王》に近付いているのが不思議でしょうがないわ! 本来、その椅子にはあーしが座るべき椅子なんだからね!」


 あんたが座る椅子はないだろうな、と俺は5mにも及ぶ、常人の3倍はあるその巨体を見上げつつ、そんな事を考えていた。ちなみに5mというのは上半身のみであり、おそらく蛇の尻尾みたいな部分も合わせて考えてみればその倍に及ぶだろう。


 ――――どうしてこうなったのか?

 俺は縄で縛られている状況の中、こうなった原因を思い返してみた。


 舞台はおよそ6時間前、この閻毘遺魔境へと初めて足を踏み入れた時にまで遡る。


==約6時間前==


 俺とマキユスの2人旅は、羅子都魔境にて新たに妃紅葉という狐娘が強引に仲間に加わっていた。とりあえずは羅子都魔境の妃紅葉に認められて3つ目。その上、念話という形ではあったが蔵賭弐位魔境と繰異怒魔境の2つも承認して貰えたようなので、これで5つ。

 《罪双域魔界》は7つの魔境で構成している《魔界》なので5つ承認したので、残りは閻毘遺魔境と冨羅射土魔境の2つである。なので、その次として閻毘遺魔境へと向かったのだが……。


「ここは毒の魔境、か……」


 目の前にて映し出されているのは、紫色や濃い紅色などなどド派手な極彩色なキノコや木々などが生えていた。猛毒の紫の沼に、黒色のキノコや紅色の大樹、木々を駆けまわっている藍色のトカゲやら、青と桃のまだら模様の蛇など、見るからに毒の森と言った感じである。


「……閻毘遺魔境は元々、毒を扱う蛇悪魔やキノコ悪魔などが多い魔境だと聞いていたでありんす。しっかし、食べられもしないような物ばかりでここに住んでる者はどうやって生きているのか不思議でありんす」


 妃紅葉が不思議がっていると、マキユスはしっかりと目を見開いた上で桃色のキノコを手に取っていた。そして傘と足に分けると、そのうち足の方をパクリっと口にする。


「閻毘遺魔境は今は毒ばかりでありますが、今の支配者たるナナミ・ブスジマになる前はただ樹木が密集して生えているだけの《魔界》でありました。けれども《魔王》であるナナミによってこんな毒だらけの地域に――――《魔王》によって生態系が変わった典型例ですね。

 あっ、ちなみにこのキノコは上の傘の部分は食べたら死んでしまうほどの猛毒を持っていますが、下の足の部分は食べても問題ないです。元から猛毒の魔境なんかじゃないから、こういう猛毒を持たない部分もありますが、基本的には食べない方が良いですよ。ほとんど猛毒ですので」


「食べたいとは思ってないので大丈夫でありんすよ……」


 「そうですか……」と言いながらむしゃむしゃとキノコの足を食べるマキユス。

 俺も遠慮したいな、そういう気持ちを伝えようとしたその時だった。


「スイッスイスイ……ようこそ、我が主のナナミ・ブスジマが支配する閻毘遺魔境へ! そしてここがお前らの墓場となるのだ! スイッスイスイスイ!」


 と、俺達の前に現れたのは競泳水着を着た変態だった。失礼した、変態な競泳水着男である。

 男として大事な部分を隠されたブーメランパンツと、ファスナーを下だけ止めただけのジャンパー。それ以外にはなにも来ていない青い肌と身体の男はと言うと、不気味な声をあげていた。


「……えっと、あなたは確か、閻毘遺魔境三大王の1人、『泳ぎのイムス』こん? ナナミ直属の部下であるあんたが何でこんな所にいるこん?」


「『泳ぎのイムス』?」


 何者だそいつはと思っていると、マキユスがこそっと教えてくれた。


「(『泳ぎのイムス』、閻毘遺魔境三大王と呼ばれるナナミ・ブスジマの幹部の1人です。ナナミ・ブスジマは元から《魔王》になる気満々であって、自分が《魔王》になった場合を想定して3人の幹部を用意しているのです。まぁ、ニホン的な知識も含めれば、四天王とかそのような立ち位置になるかと。

 閻毘遺魔境三大王とは『泳ぎのイムス』、『猛毒機械クバイ』、『超人リハシ』の3人の幹部。この変態はそんな三幹部の1人、あらゆる所を自由自在に泳ぐ事が出来るという異能力の持ち主だそうです)」


「(あんな変態がまだ2人も居るのかよ……世も末だな)」


「(変態ではありませんが、少なくともキャラ性が濃いという面では一緒でしょうが)」


 マキユスは「うんざりなんですよぉ……」と溜め息を吐き、俺はどうなるんだろうなと思っていると、何故か妃紅葉が憤慨していた。


「むっきー! なんでそうなるでありんすか?! 妾はあなた達の主なんかに支配されるつもりはないでありんす! もし妾が仕えるとしたら、ここに居られるクロス・ヤナカ様ただ1人だけのみでありんす! あんな、猛毒ばっかりの蛇女なんかに仕える価値など一切ないでありんすよ!」


「スイッー! 我らが主を愚弄するとは! 温厚な性格である我は投降すればクロス以外は助けてやると考えていたが、もう我慢ならない! お前ら全員、あの世に泳ぎ届けてやるっスイッー!」


「こちらこそ上等でありんす! お前ごときが、この妾を倒せるなんて、妾の命を1つでも失える事が出来るだなんて思い上がりも甚だしいでありんすよ! 故にここで妾から礼儀を叩き込んであげるでありんす!」


「なにをぉぉぉッスイー!」

「ありんすぅぅぅぅぅぅ!」


 肩を突き合わせて言い争いをする中、マキユスはやれやれと言いつつ近付いて行く。俺も続いて行こうとして、


「……動くな、動くと猛毒を投与しますよ?」


 と、某アメリカ社長ヒーローみたいな仮面をつけた女、『猛毒機械クバイ』に誘拐されたのだった。


 回想終了。

 つまりは俺は閻毘遺魔境の奴らに誘拐されたという事である。

・イムス/泳ぎのイムス

…閻毘遺魔境三大王の1体。水精族。

 ブスジマ・ナナミ直属の部下であり、『泳ぎのイムス』とも呼ばれている。水分が含まれている場所であれば、地面や岩の中だろうと自由自在に泳げるスキル《悪魔式遊泳自由形》というスキルを持っている。自分の泳ぎに誇りを持っており、なおかつ自分の格好もカッコいいと思っている。

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