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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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人間(せかい)を滅ぼす男

作者: 鬼京雅

 その白い心を持つ男はこの世に生まれるべき男ではなかった。


 少年から青年になる過程で、人間という知的生命体の脆さ、醜さが許せないと思う潔癖さが、人間を「モノ」のようにしか思わない性格となった。


 人と人とが集まればどんなに狭いコミュニティーでも顔の優劣や体躯の優劣。差別や区別、上下関係が生まれ、それは「弱肉強食」という人間社会の感情の掃き溜めを簡単に生み出し、それに敗北した者は死に絶える。


 故に人間という生き物が存在し過ぎる、酸欠しそうな世界で生きなくてはいけない苦しみが男を「狂気」を持って変革し出し、三千世界の全てを手中にする為に戦争を起こそうとしていた。と、同時に戦争を楽しもうともしていた。


 すでに男の心は真紅に染まり出していたのである。


 白は何色にも染まる悪魔の色だ。


 その過程で男は手始めにある事をした。


 戦争を起こすについて最も大事な勢力になる仲間である身内を殺害したのである。


 男はこれから起こる激しい戦争にて心が折れないように友を家族を恋人を……親しい全ての人間の首を刀で斬り殺した。全ての痛みを全身で浴びた男はまず、小規模な勢力の中に入り込み、力と才覚を帯びた「狂気」でその勢力共をねじ伏せ心服させ、死を恐れぬ家臣団とし自国の支配へと乗り出した。


 やがて表と裏の社会を支配し、自国を我が物とした男は世界に対して核攻撃を行う。それに驚く世界各国は独自の防衛機能を使い核の被害を最小限に抑え、報復行為をする為に世界連合軍を設立する。


 しかし、その時男はすでに地球にはいなかった。


 宇宙という無の空間にて暮らす、地球にて差別された犯罪者を中心とした強制開拓民である人々。その棄民達に核戦争が始まった今なら地球に帰り、そこで活躍すれば強制開拓民としての労働から抜けられると焚き付けた。それはコロニーを地球に降下させそれを拠点防衛用に使い、最強の矛と盾にして世界連合軍を打ち破る策だった。


 そして、最後の審判は下された。


 強制開拓民の作り上げた地球降下プログラムを改ざんし、地球に着陸するシステムを崩壊させた男は宇宙から数多のコロニーを地球へ向けて落下させ、宇宙へ出た人類ものとも消滅させた。


 男は幸せそうな顔で死んだようだった。


 様々な色彩に染められた男は、元の白い顔で消滅した。


 本能で生きる生物以外は生きていてはならない。嘘や欺瞞は人間には必要無い。しかし、ソレが無ければ集団生活は成り立たない。だがソレを許せぬ男は行動で証明した。自分の大義をーー。


 たった一人の人間が生きていたせいで人類の未来は終わったのである。

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