97 思わぬ来客!①
バァン!
「フィィールさまぁぁぁっ!死んじゃやだぁぁ…!」
「うわぁぁぁぁーん!!死なないでぇぇぇ!!」
勢いよく扉を開け、走りながら入ってきたのは…
「おっ…お前達…なぜ…」
帝国一の実力を誇る親衛隊のメンバー、パールヴォルト兄妹だった…。
目から大粒の涙を流しながら泣く姿は幼子のようだが、どちらも15歳を越えている…。
背丈はやや低いものの、その体格を活かしての素早い戦闘で有名な戦士だ。
兄のルル・パールヴォルトは短い青髪をもつ少年ヴァンパイア…。
非常に優秀であり、同年代では彼を越えるものはいないだろう…。
妹のミミ・パールヴォルトはボブカットに揃えた可愛らしい少女のヴァンパイア…。
兄と似ていたずら好きであり、私も手を焼いたことがある。
だが、兄と息の合った戦いに救われることは何度かあったな…。
二人はワタシの元に駆け走ると、ワンワン泣きながら抱きついてきた…。
涙で私の服が濡れるのもお構いなしに…。
「なぜ…こんなところに…」
私が疑問を口にすると…
「あなたが死にかけているとお聞きしたのです…フィール様…」
「…!ヴッ…ヴォルン…!」
扉に立っていた若い男性ヴァンパイア…ヴォルンが答えてくれた…。
精悍な顔つきをした成人ヴァンパイアのヴォルンは、10年以上私と共に戦ってきた勇士…。
まだ生まれて20数年になるが、今では多くの同胞を導くべく力を注いでくれる。
「…まだ返事を聞いていないというのに…自殺を図ろうなどと…フィール様は卑怯ですよ…」
「う…む…」
ぐっ…ヴォルンからの求婚を思い出すと…どうにも居心地が…。
悲壮な表情からは私のことを心の底から思っていることがわかる。
こんな雰囲気でどう話せばよいのか…。