92 魔王城は大変なことになってるっぽい!
「…いつまでそうしているのですか?…あの人間はフィールを助けようとしたのですよ?」
「…」
「…感謝のひとつぐらい伝える気はないのですか?」
「…」
参りましたね…。
こちらの言葉にも無反応だと…どうすることも…。
このままだと…クリス様も愚民様も心配してしまうというのに…。
そのとき
プルルルルルン!…プルルルルルン!…
突然鳴り響くミモルン…。
あまりのタイミングの悪さに舌打ちしそうになりましたが…。
「…はぁ…」
仕方ありません…。
一度部屋を出て応対するしかないですね…。
幸い…フィールもこの様子だと問題を起こさないでしょうし…。
「…一度…よく考えてくださいね…」
私はそう言うと、ミモルンを手にしながら部屋をあとにする…。
キィィィ…ガチャン…。
…おそらく私のミモルンに連絡をいれるほどですから…魔王軍の誰かだと思いますが…一体誰なのか…。
ガチャッ…
「私です…どなたですか?」
私に連絡をいれた者は…
「…メーラッ!お前…あまりにも遅いのねっ!こっちは決闘のクレームに対応して大変なのねっ!あちこちの魔物が城に押し寄せてブーブー言ってるのねっ!」
ティナ・リィスティーナ…。
魔王軍三大幹部の一人である彼女は、滅多に表舞台に出ないことで有名な魔物…。
しかし彼女の指示によって多くの苦難を乗り越えたこともあり、魔王軍のブレーンとして現在は活動している…。
愚民様とフィールの決闘の観戦をせず、魔王城でゆっくりしていたはずですが…。
そんなティナがこうして連絡をいれるということは…向こうは相当混乱しているようですね…。
「申し訳ありません…少しこちらでも面倒なことがありまして…すぐに帰ることも難しいかと…」
「…何かあったようなのね?」
「…えぇ…その通りです…」
「…ふぅーん…」
察しのいいティナはそれだけを言うと、何か考えながら沈黙する…。
次に言葉を発したとき、彼女は冷静に…的確な指示を出してきた。
「わかったのね…。こっちのことはティー達に任せるのね。メーラはとにかくほとぼりが覚めるまでゆっくりするのね。1週間ぐらいなら粘れそうなのね…」
「ありがとうございます…助かりました…」
「別にいいのね…グラン地方特製のホワイトチョコレートケーキとブリンストン産メロゥキッスルクッキーを用意してもらうのね!」
…本当にお菓子が好きなようですね…。
まぁ、今回はティナの要望に応えるとして…魔王城のことは任せましょう…。
「わかりました…用意いたしましょう…」
「やったのね!」
嬉しそうにはしゃぐティナ…。
まったく…面白い方です…。
…そう言えば…
「…ティナ…もうひとつ…頼みを聞いていただきたいのですが…」
「…まったく…困ったのねっ!言ってみるのね!」
「ありがとうございます…」
上手くいけば…フィールを動かすことができるかもしれません…。