87 死の淵①
あぁ…どんくらい…たったっけ…。
もう…あたまんなかも…ぐらぐらして…。
なんか…へんなきぶんが…。
「メーラッ!…まだか!?」
くりす…すまねぇ…。
だいぶ…めいわくかけてんのに…。
「まだです…!あと数分…」
めーらも…すっげぇ…あせってる…。
ちくしょう…ふぃーるは…なんとしても…しなせたくねぇのに…。
さきに…おれが…くたばりそうだ…。
「…!?おい!ユキッ!しっかりしろ!こんなところで倒れるな!」
あぁ…たおれるわけには…いかねぇ…けど…。
おれも…かなり…やばい…。
しにたくねぇのに…しなせたくねぇのに…。
ちぃぬかれまくって…なにかんがえりゃいいか…まとまんねぇ…。
ギュッ…!
おれのてから…かんじる…くりすのかんしょく…。
すっげぇ…あたたかい…。
もうすこし…なんとか…ねばれそう…。
「くっ…!メーラッ!フィールの血は…止まったか!?」
「申し訳ありません!あと少しです!」
「頼む!!ユキも…これ以上持たない!」
「最善を尽くします!」
…おれ…がんばれよ…こんなとこで…しんでたら…まじ…かっこわりぃよ…。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
…
『おい!そんな弱気になんなよ!大丈夫か!?』
あれ…?
おまえは…。
『…ったく…。気になって様子を見りゃ…かなりやべぇじゃねぇか!』
あぁ…ちかとうぎじょう…いらいだな…。
『今は挨拶してる場合じゃねぇ!こんなとこで死んだら…俺が許さねぇぞ!』
…でも…だいぶ…ぬかれちまって…。
どうしたら…。
『…かなり弱ってんな…』
しにたくねぇけど…しなせたくねえけど…もう…。
『…わかったよ…ちょっと待ってろ!』
…?
どうした?
『今から俺の魂を分けてやるよ!少しは楽になるぜ!』
え…?
そんなことしたら…おまえ…。
『いいってことよ!どうせ俺は死んでんだ!お前のためなら魂くらい…』
でも…
『…もうこれ以上話す気はねぇぞ!あとはお前が頑張れ!それと…クリスのこと…しっかり守れよ!』
あぁ…ぜってぇ…まもる…!
だから…あんしん…しろ…!
『おっ…元気出たじゃねえか!んじゃ…俺は消えるぜ!アデュー!』
…あぁ…またな…!
『…』
あいつ…けっこういいやつだな…。
なんか…からだも…らくに…なったな…。
よし…もうひとふんばり…!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
…
「…!ユキっ!?大丈夫か!?」
「だから…あんしん…しろ…」
まずい…会話もままならなくなってきた…!
愚民様…!クリス様…!
あと少し…ほんの少し耐えてください!
フィールの傷も…あと数秒でなんとか…。
「メーラッ…!うぐっ…!ユキがっ!」
クリス様も精神的に余裕がなくなってきた…。
私にできることは…もう…
「もう数秒です!耐えてください!」
無慈悲に残り時間を伝えることしか…。
「頼む…!ユキっ!死なないでくれ!」
残り…10秒…!
…9!
…8!
…7!
「…くりす…」
「…!?ユキっ!どうした!?」
…5!
…4!
「おれ…おまえのこと…」
…2!
…1!
「まもる…から…」
…ドサッ…。
「完了です!クリス様!転移魔法を解いてください!」
全てが終わった…。
あの長い時間がやっと…。
私はすぐにクリス様と愚民様の方を向くと…。
「…クリス…様…?」
「メーラァ…うぐっ…」
そこには…
「ユキが…ひぐっ…」
クリス様の手を握ったまま倒れた愚民様がいた…。