83 説得
「なぁ…フィール…これでわかったろ?もう今のお前じゃ勝てねぇって…」
これ以上変な言い合いすんのもあれだし…とりあえず説得に入ってみる…。
うまくいきゃいいけど…。
「ぐぅぅぅ!!」
「わりぃけど…お前を殺す気なんてないぜ?殺したってなんもねぇし…」
「おのれ…!何が目的だ!」
「…特になんもねぇよ…強いて言うなら…」
さて…ここからどう語るかだな…。
フィールの心に届く言葉を考えなきゃ…。
「お前の恨み…辛み…使命を…断ち切ってもらうこと…だな」
「なん…だと!?」
「もう理解してんだろ?人間を殺したって…お前は苦しいだけだ…。あの涙を見りゃわかる…」
「わかった風なことを…!!」
「…俺の言ってることが的はずれなら…まぁそれでもいい…。ただな…今のお前を見て…心配するやつは身近にいるんだぜ?」
「なんだと?なぜお前がアリスを知っている!?」
?アリス?
なんかよくわかんねぇな…。
俺が言ってんのはクリスのことなんだけど…。
…ちょっと利用するか…。
「俺にはわかんだよ…。いや…そのアリスってやつだけじゃねぇ…。もっといるんだろ?」
「…」
図星…ってとこか…。
それだけフィールのことが好きなやつがいるんだろな…。
「そいつらに…これ以上無茶する姿を見せんのか?もう…お前だけの問題じゃねぇんだ…。ここいらでやめるのも…」
「なるほどな…お前の言うことも一理ある…」
おっ…?
意外と話が通じたぞ?
フィールも仲間のことが絡むと物わかりがいいな…。
「人間を殺し続ける私の姿を見て…仲間たちは胸を痛めるかもしれん…」
「だっ…だろ?だからよ…ここは…」
「それでも…亡くなった同胞…家族…父上は…裏切られん」
ブシュッ…。
一瞬…俺の目の前には赤い鮮血が飛び散った…。
俺の血じゃない…。
これは…
「今ここで…我らの宿願が果たせぬなら…潔く…散ろう…」
気がつけば…
フィールの首から血が飛び散っていた…。