79 奥の手
「なっ…!かっ…体が…動かん!貴様!いったい何をした!?」
「へへ…なんとか…うまくいった…。ハメ技っぽいけど…やったぜ…」
本来であれば…『レテルギルス』によってこの地は紅蓮の大地になっていた…。
しかし、俺が一瞬の隙をついて奥の手を…スキルを使用したことで、俺も五体満足でここにいる…。
そのスキルとは…
『拘束スキル』
このスキルを発動したプレイヤーは発動中、攻撃、防御、移動等のあらゆる行動ができなくなる。
使用プレイヤーの体に触れている他プレイヤーも、攻撃、防御、移動等のあらゆる行動ができなくなる。
まさに…騙し討ち…ってやつだな。
このスキルは自分や他のやつを巻き込んで、行動を制限する…というある意味えげつないスキルだ…。
チームで組んでいれば、攻撃メンバーとスキルを使う拘束メンバーに別れて戦うことで、反則スレスレのチームプレイができる。
具体的に言えば、拘束メンバーが相手と一緒にスキルで行動不能となり、攻撃メンバーが叩き込む…みたいな感じだ。
本来であれば、相手の体と接触する状態でないと意味がない…が、俺はすでにフィールの足首をつかんでいる。
条件は充分。
『レテルギルス』を発射する前に、スキルを使用して、攻撃を無効化したわけだ。
ふぅ…アブねぇ…。
すっかりスキルのこと忘れてたわ…。
フィールの涙を見て、冷静になったら思い出した…。
「…なるほど…『拘束スキル』か…。ふざけた真似をしたな…」
体を動かせないことに焦ってはいたのものの、すぐに答えにたどり着いたようだ…。
やっぱ戦い慣れているみてぇだな…。
「しかし…愚策と言わざるをえないな…」
そして…このスキルの弱点にも気がついている…。
俺は間抜けな表情でフィールに尋ねてみた。
「…愚策?」
「考えればわかること…。私の行動を制限したとしても…それはお前も同じ。ただ、いたずらに延命したにすぎない。お前はこのスキルをあとどれ程維持できるのだ?疲労に押し潰され、スキルを解除した瞬間…貴様の負けは確実だろう…」
「…確かにな…。チームで組んでるならまだしも…これはサシ勝負。協力者がいないなら、俺は負けだ…そこは間違っちゃいねぇ…」
「ほぅ…認めるわけか…己の敗北を…」
予想外の反応にフィールは驚くも、やはり落ち着いている。
この勝負は決まったも同然…そう思っていそうだ…。
だがな…。
俺の勝ちは揺るがねぇんだぜ?
「ところでよ…今何時だよ…」
「…何?」
「いや…結構戦ったから…何時か気になってよ…」
俺の言う言葉に疑問を抱くフィールは、怪訝な表情を浮かべる…。
どうやら…俺の言ってる意味がわかんねぇようだな…。
「俺が…なんでここまで粘ったか…今ならわかんだろ?フィール…メルリアーノッ!!」
「…っ!?まっ…さかっ!貴様!」
そして…そのときが訪れる…。
ピンポンパンポーン!
『おはようございます!朝が来ました!今日も太陽の光を浴びて、元気に過ごしましょう!今日もいってらっしゃい!』