4 そんな約束した覚えはねぇぞ!
「ぐっ!…まさか…ユキに泣き顔を見られるなんて…。一生の不覚だ…」
結局、あれから俺は体調に何の問題もないと説明し、クリスは泣き止んだものの、クリス本人はものすごい羞恥心を抱いたようだ。
…まぁ、あれだけ威厳たっぷりに話す姿から、ここまで泣きつかれる姿を見れば誰だって驚くだろうが…。
「まっ…まぁ気にすんなよ…。別にバカにするとかしねーよ…」
一応フォローはするが、クリスの精神的HPは相当削られたらしい…。
…そんなにショックになることか?
っと…そう言えば一応魔王様なんだよな…。
無礼な言葉には気を付けねぇと…。
そんな俺の緊張した様子に気がついたのか、クリスは弱々しく口を開く。
「…気にするな…。私とお前の仲だ。二人きりの時はいつも通り話してくれ…」
…あり?
てっきり怒られるかと思ったんだけど…。
それに
「私とお前の仲だ」
ってのも気になる…。
…が、とりあえず俺はリラックスして、一番気になることを尋ねてみた。
「…ところでよ…ここにきて大丈夫か?他の奴らも探しだしてんじゃねぇの?」
「いや…そこは大丈夫だ。皆には事前に所用があるということで、抜けているからな」
「あっそ…まぁ、天下の魔王様が俺みたいなやつのところにいるなんて知られたら、めんどくさいもんな…」
俺は何の気なしにそんなことを口にする。
だってそうだろう。
自分ではなにもせずに、こんなベッドの上で寝転んでいるのだから…。
…さっきはMVPとか言っちまったけど…。
と思っていたら
「なっ…何を言う!お前がいなければ間違いなく敗北していたのだぞ!戦の功労者の元に向かうのは当然だろう!!」
…となぜか熱く語りだしてきた。
やけに俺のこと買ってくれるんだな…。
そう言えば俺の立場がまだ今一わかんねぇんだよなぁ…。
軍師とか言われてるけど、それって偉いのか?
三大幹部のメーラは俺のことバカにしてたけど…。
…聞いてみるか。
「なぁ…なんか俺のこと大分誉めてるけど…俺と…クリスの関係ってどうなってるの?」
…言ったあとで後悔した。
どう考えてもこの言い方はまずい。
なぜもう少し考えなかったんだろう…。
「…?何を言っているのだ?」
ほらな!
俺にとってはこの世界は初めてだが、クリスにとっては俺の存在は当たり前なのだ。
いちいち確認するなんて違和感ありまくり…。
…うーん。
どうやって確認しよう…。
俺が悩んでいると
「…ユキ…それよりも、あの約束…覚えているか?」
…?約束?
残念ながら初めてこの世界に来たからさっぱりですわ。
「この戦に勝ったら…私の願いを聞き入れてくれると…」
おい!
ちょっと待て!
話が進みすぎだろ!
俺にはさっぱりだぞ!
「わっ…私の…」
おいおいおい!
その先は言うな!
…まさか!?
奴隷になるのか?
俺は奴隷になっちまうのか?
…それとも執事になるとか?
悪いがそんなもんになる気はねぇぞ!
まっ待て!
それ以上口にするなぁぁ!
「私の…婿になってくれ!」
はぃぃぃ?