58 俺は…
「うっ…うぐぅ…!!」
雷の余波を受けた俺の右足は、完全に動かなくなってしまった…。
手で触ろうとしてもあまりの熱さに触れることさえできない…。
ひどい痛みで『潜入スキル』を解除してしまった俺は格好の標的…。
くそっ…まだなんもしてねぇ…!
「ふむ…どうやら限界のようだな…。人間にしては良くやったと誉めてやろう」
翼を収めたフィールは言葉ではそういいながらも、目は完全に家畜を見るそれだった…。
きっとこのまま殺すつもりなんだろう…。
このまま…諦めるわけには…!
「…不思議だな…なぜそんな目をするのだ?」
「…なん…だと?」
「普通は死に怯えるはずなのだが…お前の目は…まるで死ぬわけにはいかないと言っているようだ…。何か理由でもあるのか?」
「うぐっ!…んなもん…言うわけ…」
「そうだな…ならここで死ね」
チュィィィィィ…ン!
フィールは退屈な話には興味がない…とでも言いたげな様子で、光弾を生成する…。
避ける力のない俺だと、まともに食らってあの世行きか…?
…せっかくこの世界に来たってのに…!
「ちく…しょう…!」
ザリ…ザリ…。
俺は動かない足を引きずりながら、無様に這いずり出した…。
でこぼこの地面を腕の力で動く俺は芋虫のよう…。
周りの観客は一斉に笑い出す。
「ヒャッハッハッハッ!!見ろよ!あいつ!バカじゃねえの?」
「よくもまぁ…フィール様にあんな姿さらしちゃって…」
「あ~…つまんねぇ…」
言いたい放題だな…。
てめぇらはただ楽しんでるだけだろが…。
『おいおいおいおいぃぃぃ…。シラケさせんなよぉぉお…にんげぇぇぇん…。んな試合見たくて実況してんじゃねぇからよぉぉ…』
うるっせぇ!
てめぇはただふざけてるだけだろが…。
この試合が終わったらぶっ飛ばすつもりだったのに…。
一際豪華な観客席…クリスとメーラのいる方を向くと…
「…っ!…」
「…」
目に涙を浮かべながらも必死に耐えているクリスに…絶望的な俺をそれでも信頼しているメーラの姿が…。
クリス…メーラ…こんなバカな俺で…すまねぇ…。
「さて…もう何も言うことはなさそうだな…さよならだ…人間!」
フィールの…処刑宣告…俺は死を覚悟した…。
そうだよな…どこぞの小説サイトみてぇに主人公がバンバン活躍するなんて…あり得ねぇよな…。
チュッ…ン!!
フィールの手から撃たれた光弾はぶれることなく俺に迫ってくる…。
「死ぬなぁぁぁぁ!!ユキィィィィ!!!」
クリスの声もむなしく…禍々しく光る光弾が俺の目の前で広がる…。
そして…