43 決闘のゴングが鳴るまで…①
うひゃぁぁ…。
すんげぇ大歓声!
俺たちが入場しただけでここまで…。
こんな経験今までないぞ…。
『おぉぉぉっと!自己紹介がまだだったぁぁ!今回の決闘はこの俺!ウィリアム・ヴィクトリィィィィィ!!…が解説させてもらうぜぇぇぇ!!みんなぁ!!楽しみにしやがれぇぇ!!!』
ウォォォォォ!!!
…やけにテンションたけぇ解説者だなぁ…。
スピーカーから声は聞こえるけど、どこにいんのかわかんねぇ…。
なにもんだよ…ウィリアム・ヴィクトリィィィィィ…。
『さぁぁぁぁ!!!南の門から入場するのは…世界最強のヴァンパイア帝国、その女王!!どんな人間もおしっこちびっちまうらしいぜぇぇぇ!!…ロリバb…じゃねぇぇ!!吸血女王!!フィィィィルッ…メルリァァァァノォォォォ!!!』
ウォォォォォォォォォォォ!!!
…今あいつ…ヤバイこと言いそうだったよな…。
フィールに殺されなきゃいいけど…。
『そしてぇぇぇ!!北の門から入場するのはぁぁぁぁ!!?経歴不明!氏名不明!職歴不明!多分童貞のぉぉぉぉ!!!…えーと………ただのぉぉぉっ…にんげぇぇぇぇん!!!』
ウォォォォォォォォォォォ!!!
ちょっ…おまっ!!?
もうちょい仕事しろ!!
意味不明な紹介しやがって…。
名前ぐらい調べろ!!
このアホッ!!
あとでぼこぼこにしてやる!!
そんなことを思っていると
「おい!人間!!ぜってぇ勝てよ!!俺はぁ全財産かけてんだぞ!!」
「勝ってくれぇぇ!!マジで頼むぅぅ!!」
「俺たちお前を信じてるぞぉぉお!!」
「フィール様を吹っ飛ばせぇぇ!!…あ…今のなしで…」
おいおいおい…てっきり俺の応援なんか無いもんだと思ってたけど…。
なんでここまで…。
でも…闘志が沸き上がるね!!
クリスとメーラの様子をふっ…と見てみると
「…」
「…」
…真剣な眼差し…。
周りの熱気に飲み込まれず、ただ俺を見ている…。
…負けられねぇ…!
必ず…勝つぜ!
『おーし!!!そのまま両者向かい合うまで歩いてくれよおぉぉぉぉ!勝負はまだまだだぜぇ!!』
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ザッザッザッザッ…
地面を踏みながら歩く俺はさながらどこぞの剣闘士…。
土煙でも巻き起こったらカッコいいんだけどなぁ…。
そして、俺の目の先にはチビッ子…もとい吸血女王、フィールが近づいてくる…。
鋭い目付きは変わることなく俺に突き刺さり…心臓をわしづかみされそうだ…。
こぇぇぇぇ…。
10m…5m…3m…とお互いの距離が縮まり…
そして…
ザッ…。
ついに俺の目の前に…。
…ぐっ…!!
震えるな!!
こんなときは大胆に…。
「…ウィリアムのやつ…相変わらず訳のわからん解説をしているようだな…。あとで吹っ飛ばしてやる…。貴様もそう思わんか?」
うぐっ…!
改めてフィールの声を聞くと…心臓止まりそう…。
なんたって俺を殺すつもりだしなぁ…。
「おっ…おぅ!?そっ…そだな!!あっ…あいつはけちょんけちょんにしねぇと…」
「…やけに緊張しているな…」
「うぐぅ!!?」
「ふん!そんな気を張るな…楽に殺してやる!!」
うげぇ…どうしよう…ヤバイかも…。
『んじゃ!!さっそく決闘に入りてぇが…その前にルールを改めて確認するぜ!!よーく聞いてくれよ!!』